べらぼう感想あらすじレビュー

背景は葛飾応為『吉原格子先之図』/wikipediaより引用

べらぼう感想あらすじ べらぼう

『べらぼう』感想あらすじレビュー第4回『雛形若菜』の甘い罠~唐丸の正体は?

こちらは3ページ目になります。
1ページ目から読む場合は
『べらぼう』感想あらすじレビュー第4回『雛形若菜』の甘い罠
をクリックお願いします。

 


江戸っ子の「推し活」需要を狙え!

「何かねえかなぁ」

そうぼやきつつ重三郎が歩いていくと、平賀源内に出会します。

平賀源内/wikipediaより引用

派手な羽織に刀をさして、見るからに源内先生だと重三郎が声をかける。

「あらそう? ハハハハハハ!」

女形のように動きつつ、笑い飛ばす源内。なんでも本屋に用事があったそうで、二人は両国までやってきます。

力士と大道芸人の屋台が目を惹きます。火吹き芸人までおりますね。

最近の源内は“山”に出張することばかりで、新之助のところに転がり込んでいるのだとか。源内は立て続けに、自身の新作『放屁論』(へっぴりろん)を読んだか?と聞いてきました。

重三郎によると、貸本でも奪い合いで、みな、花咲男の屁っこき芸が見たいと盛り上がっているそうです。

この屁っこき男は実在しているとのことで、重三郎は興味津々。臭いけれども大人気だとかで、源内は少し遠い目になって、町娘を見ています。

路考髷(ろこうまげ)の女でした。

源内最愛の人である2代目・瀬川菊之丞が舞台で結った髪型で、若い娘が真似るようになったのだとか。

どうやら瀬川菊之丞のやることはたちまちトレンド入りをしていたようです。

路考髷。

路考結。

路考茶色の着物。

その流行は他にまだあるようで、呉服屋は大儲けしたそうです。

すると、熊吉と八五郎という娘が、花魁の着ている着物を錦絵で見て、「どこの店の何て柄なの?」と欲しがる光景が重三郎の脳裏に浮かびます。

「どこの店の何て柄なの?」

その言葉を胸の内で繰り返し「これだ!」と帯をポンポンと叩く重三郎。そして去り際にこういうのでした。

「先生、あなた、やっぱ天下一の才です!」

「ハハハハ! まぁねぇ」

こうして別れる二人。重三郎は裾をからげて走ってゆきます。

推し活に励む現代人は『こんなヤバいことをするのは自分たちだけだ』と思っているかもしれませんが、さにあらず。推し活は江戸時代に既にあり、推しと同じものを身につけることは定番でした。

『べらぼう』より時代が降ってからにはなりますが、カラフルな錦絵を団扇に使うことも定番。推しの絵を貼り付けて使っていた。

痛グッズ販売は江戸時代には確立していたんですね。

この後、源内が椅子に腰を下ろしていると、笠を被った武士が隣に腰掛けてきました。なんと田沼意知ではないですか。源内も驚いています。

「この手のことは知る者が少なければ少ないほどよいと、父が申しておりました」

そうして風呂敷の中身を託してゆく意知。何か陰謀のにおいがしますぞ……。

新之助の家に戻った源内は、何かの冊子を分解し、何種類もの墨を用いて細工を始めます。

天下一の才人が、その才を悪いことに使っているようです。

 


ファッションカタログ兼グラビア錦絵を作るぜ!

蔦重重三郎が、忘八たちに策を語っています。

入銀させる相手を呉服屋にしてはどうか?

呉服屋が売り込みたい着物を女郎に着せることにして、吉原はビタ一文も払わねぇ。

広告とクラファンを組み合わせたような戦略を思いついたわけです。

忘八は集まってこのことを話し合います。

大文字屋が錦絵一枚あたりの価格を尋ねてきました。絵師、彫、摺込みで、絵柄一枚あたり1〜2両で200枚刷れる。

と、忘八たちは納得したようで、重三郎が呉服屋の座敷で営業をかけることになります。

どこまで重三郎を酷使すんだよ!

それでも引き受けてしまう素直な重三郎。

蔦屋重三郎/wikipediaより引用

制作チームが同じ『麒麟がくる』の主人公である明智光秀は、主君の酷使に不満を見せておりました。

しかし根っからの陽キャでパリピ、ノリのいい重三郎は引き受けちまうんだよなァ。

宴席営業は基本的に明るくコミュ力を発揮すればいいし、近代到来と経済発展により、外向的な人間がもてはやされる理由がよくわかるってなもんだ。

この重三郎が歌って踊る宴会も面白いですね。

素朴だった『光る君へ』のころと比べて格段にエンタメ度があがっている。鎌倉時代や戦国時代のような殺し合いもない。

重三郎にもてなされる呉服屋たちも実にセンスがよく、典型的なおぼっちゃま顔をしておりますね。

といっても、彼らも商売人です。

元を取れるか算盤を弾いていて、色良い返事はそうそう聞けません。

重三郎は駿河屋に愚痴をこぼします。

大店からすれば三両なんて屁みてえなもんなのになぜ出してくれない!

それを聞かされ、駿河屋は知名度を持ち出します。

名物女郎がいない。江戸で名前の通った者がいない。どこの誰かわかんねぇ女郎が着ても宣伝効果は薄いだろ。江戸のインフルエンサービジネス指南ですな。

納得する重三郎に対し、駿河屋は、おめぇ自身も名前がないと指摘します。いやぁ、痛いところを突くねぇ。

「吉原のケチな摺物屋がまともな錦絵をあげてくるなんて思うか?」

そう言われ、己の甘さを痛感する重三郎でした。

 


西村屋与八が助けに来て、礒田湖龍斎が絵師となる

するとそこへ、提灯を持った西村屋与八が「もし!」と声をかけてきます。

タイミングが良すぎてむしろ怪しいぞ……。

しかし重三郎は貸本屋として西村屋の顔はよく知っていいます。しかも素直な性格なので、その名前にコロッと騙されちまうんですよ。

手代の忠七にも世話になっているとか。こんなドクターマシリト(往年の少年漫画『Dr.スランプ』の悪役)みてぇな悪人ヅラに騙されちまうなんてよ。

西村屋といえば錦絵で有名であり、吉原でも取り扱っていました。なんでも大文字屋で錦絵の話を耳にして、一枚噛みたくてやってきたそうです。

ここで西村屋は、渡りに船とばかりに、親切すぎることを言ってくる。

錦絵の流通ルートをどうするつもりか?と聞いてくるのです。

吉原と呉服屋の店先だと答える重三郎に、西村屋の流通ルートも使ってみてはどうかと言い出しました。

そうすれば他の本屋でも売ることができる。そう笑顔を見せる西村屋……確かに、これならうまくいきそうだ。

実際、西村屋の効果は抜群で、呉服屋たちもザクザクと入銀をしてくれることになりました。

おまけに西村屋のはからいで、美人絵を得意とする礒田湖龍斎を絵師に頼むこともできた。

当時の美人絵は絶大な人気を誇り、平賀源内のご近所さんでもあった鈴木春信の後釜を模索する時代で、礒田湖龍斎で当てればこの売れ筋で手綱を握れます。

礒田湖龍斎
『べらぼう』で鉄拳演じる礒田湖龍斎はどんな絵師?得意ジャンルの「柱絵」とは?

続きを見る

鉄拳さんが演じる礒田湖龍斎が粋な着物を身につけ登場します。

伸びやかな美女の絵を見つめる重三郎に、西村屋は「板元印」を考えてみたらどうかと提案。これだけの錦絵を出せば立派な板元だと褒めちぎるのです。

「そっか……俺、板元か」

そう微笑んでしまう重三郎が辛い。

こういう純真無垢な若者にクリエイターとしての夢を吊り下げて騙す汚いこの世界が憎い。

これはもう、罠にかかった目ですよ!

 

板元になる夢と、堂号と

こうして礒田湖龍斎の下絵が完成。

下絵を渡された唐丸は、これに色や模様がつくのか?とじっと覗き込んでいます。

重三郎は唐丸に店番を頼み、源内の元へ向かいました。

唐丸のことを聞いた源内は、絵でも教えてみたらどうかと言います。なんなら源内も描けるんだとか。

しかしこの源内はどこか挙動不審で、戸口の前に立って新之助の作業を見られないよう、重三郎を阻んでおります。何を企んでいるのですかね。

そして源内が出してきたのが『解体新書』でした。

解体新書/wikipediaより引用

この挿絵担当者に教えたのも自分だと言います。

絵師とは小田野直武のことで、秋田藩士である小野田は源内から西洋画技法である「蘭画」を学び、「秋田蘭画」という画風が成立しました。

浮世絵は、中国画の技法を取り入れていたものの、時代がくだるにつれ、こうした西洋画の技法は浮世絵にも取り入れられるようになります。

得意とした代表が葛飾北斎です。

源内は重三郎に今日来た用件を尋ねると、板元としての名前が欲しいのだとか。

「堂号」と言います。

源内は羽織をばさっと脱ぎ、早速思いついた名前を書きます。

文人名のことでも覚えていきましょう。「堂号」や「室号」というのは、その人が暮らす書斎のこと。この書斎で書いたという意味合いで、隠遁思想も感じさせます。草深い庵の中で芸術を手がけているというイメージです。

んなこと言ってもおめえさん、江戸の街中で手掛けてんじゃねえか。

そう思ってしまいますが、都市文化の発達とともに「市隠」という考え方が東アジアでは生まれておりまして。

都市部に暮らしていても心は隠者。気持ちだけでも隠棲して、俗世と縁を断ち切って文化に溺れるんだよォ! そういう気持ちが大事ですから、堂号をつけるわけです。

さて、重三郎は源内から素晴らしい名前をもらってしまったようですが、果たして?

 


猫の粗相と、唐丸の覚醒

重三郎が駿河屋に戻ると、客足がひっきりなしのようで、休む間もなく、接客しています。

そして何か物音がして、部屋の奥へ行ってみると、かわいい白猫のかぐやが花瓶をひっくり返していました。

「こりゃいけねぇ。え!」

そう元に戻しながら、気づきます。猫が花瓶を倒した敷物の中身は、湖龍斎の下絵であることを……。

「あ、あ、あ、ああああ~!」

絶叫しています。

現代人は猫によりラップトップやキーボードに飲み物をぶちまけられる。テレビ会議に乱入される。

そして江戸時代はこうなる。時代を超越した猫による悲劇を感じさせます。

ちなみに猫道楽浮世絵師・歌川国芳の仕事場には常に5〜6匹は猫がいて、国芳は懐に猫を入れて作画をこなしていたとか。どれだけの作品が猫によって破壊されたことでしょう。

『枕辺深閏梅』下巻口絵における歌川国芳の自画像/wikipedia

そうはいっても、猫は無罪です。花瓶の下に、大事な下絵を置くんじゃない!

「おい……敷物にいいと思ったんだよ」

花瓶の下に下絵を置いた次郎兵衛が語っています。この馬鹿野郎が……。

重三郎が、無の境地で下絵を広げていると、唐丸が「直してもよいか」と尋ねてきました。いったい何のことかと戸惑う重三郎。

唐丸はおずおずと紙と筆を取り出すと、かぐやを抱いた次郎兵衛は「描けるわけない」と言います。

それでも唐丸は止められない。

真剣なまなざしで一本一本を線を描き、気がつけば本物そっくりの絵に仕上げてゆきます。

重三郎は放心状態で、その姿をじっと見るしかない。

それはまさに奇跡、元の絵にしか見えない!と重三郎は驚いています。なんでこんなことができんのか?と次郎兵衛も尋ねてきます。

「え、な、何でだろ?」

どうやら唐丸自身も驚いているようで。

「お前はとんでもねえ絵師になる! 間違いなく、なる! いや、俺が当代一の絵師にしてやる」

「お、お……おいら、絵師になるの?」

重三郎にそう言われ、戸惑う唐丸。無理やり押し付けられたくないか!と重三郎が謝ると、その逆で、唐丸は嬉しいのだと返します。

「おいら、そんなこと言われたの初めてだから」

そうして残りを仕上げてゆく唐丸です。

※続きは【次のページへ】をclick!


次のページへ >



-べらぼう感想あらすじ, べらぼう
-

×