鎌倉殿の13人感想あらすじ

鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第22回「義時の生きる道」

2022/06/06

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鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第22回「義時の生きる道」
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MVP:大江広元

今回ほとんど出番のなかった大江広元がなぜ?

あまり目立たないことこそが、この人の恐ろしいところかもしれません。

岡崎義実、比企能員、源行家のように、ペラペラと思う様、策謀を語る人はそう怖くありません。

その点、広元は不気味ですよ。

鎌倉行きの話が出て、貧乏下級貴族が新天地を求めて下向してきたようで、その脳内には復讐計画があった。

坂東武者の手綱をとって上洛し、自分を下に見ていた連中を嘲笑ってやる。

そんな大博打、大胆な策がうまくいきました。

それほどの策士なのに、和田義盛に「一緒に飲み会していいのぉ?」と声をかけられちゃうくらい、人畜無害に見えているところがおそろしい。

策謀の隅っこがチラッと見えるだけでこんなにも怖いのか。

文官が出世することに坂東武者たちはイライラしていますけれども、それって頼朝だけの問題ですか?

そういう方向に誘導している誰かがいるんじゃありませんか?

それがおそらくやこの男、大江広元です。

頼朝が将軍になって、組織していくシステムも広元発案のことも多いわけです。

広元の脳には、日本の新時代が詰まっています。まったくもって実に怖い。

その策謀をチラッと飲み会で口にしただけでも、深淵のような凄みがある。

誰も「あいつが悪いんだ!」と思わない。そこが梶原景時とも違う。

大江広元はよくもこんな危険な綱渡りをできるものだと思いますね。

この作品で恐ろしい人物のリストを作ったら、大江広元は確実に入りますね。

栗原英雄さんがそんな人物を、磨き上げたような美貌と美声で演じるのだから、たまらないものがあります。

 


総評

義時の生きる道とは?

八重のように子供を慈しむ道を行きたい。政所で米を数える地道な道を行きたい。そういう気持ちはわかります。

ずっと人相が悪化していたのに、今週は元に戻ったようにすら思えます。

こんな謙虚でささやかな人物だったのだと改めて思いましたし、金剛はそんな父にも似ているのだと。

これは姉の政子もそう。

ひさびさに昔の装いに戻り、お餅を持ってきたかわいらしさはどうしたことか!

やっぱり政子は素敵だ。それなのに比奈にデレデレする頼朝は度し難い。

とはいえ、比奈もかわいいし。久々のギャグがあって爆笑回だな〜!……と思えたかというと、そうでもない。

随所に不吉なフラグが立ちました。

範頼も、全成も、破滅への道のりがうっすらと見えてきます。

彼ら自身が迂闊というよりも、懲りずに企む坂東武者が悪いとも思えてくる。上総広常の死を教訓にできていないんだなぁ。

上総広常
なぜ上総広常は殺されたのか 頼朝を支えた千葉の大物武士 あまりに不憫なその最期

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善児が怖いと言われますが、私は人間よりも権力のありようが怖いと思いますよ。

比企能員と道の夫妻なんて、権力をとりにいくことを楽しみすぎていて危険です。

しかも彼らは一族の女を駒にするからたちが悪い。比企に関わると滅びるという意味では、源行家に匹敵するほどの死神かもしれない。

義時はまっすぐに生きたい。政子もそうかもしれない。

どっこいそうは行かない。そんな生き方が見えた気がします。

 

アブダクション――仮説形成を使う作劇と思考術

こんな記事があります。

◆ 「鎌倉殿の13人」風雲急 ついに“三谷流”曽我事件!善児も暗躍?ネット興奮「もうミステリードラマ」(→link

曽我事件の解釈は、三谷さん一人で考えているというより、考証の坂井孝一先生あってのものでしょう。

なかなか大事なのが岡崎義実。彼はあまり目立っていなかったと思うのに、急に出てきましたね。

義実の出家の時期と状況が不自然で、何かあったのではないかとつないでいくことで事件が見えてきます。

岡崎義実
頼朝の蜂起に駆けつけた岡崎義実は三浦一族の重鎮~重忠や義盛の大叔父 その生涯

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三谷さんが原作とも呼んでいる『吾妻鏡』は、記録が全部揃っているわけではなく、散逸したものを後世再編纂しています。

ゆえに点と点を繋いで、蓋然性の高いシナリオを読み解く必要がある。

こういう考え方を【アブダクション】【仮説形成】と呼びます。

ミステリでは定番の技法でして、わかりやすいのがシャーロック・ホームズです。

彼はワトソンと初対面の場面で、アフガニスタン帰りだと見抜きました。

・日焼けしているが、手首は白い。地黒ではない

・医療関係者だ

・立ち居振る舞いに軍隊にいたような厳しさがある

・顔つきが険しいぞ

こうした要素を組み合わせていき、当時イギリスの軍医が派遣されている日焼けする場所となると、アフガニスタンだとわかる。

なぜシャーロック・ホームズは19世紀の英国で人気が出た?凄惨な事件が次々に勃発

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このやり方を今回に適用すると……

・御家人に不満が溜まっているじゃねえか

・万寿もそろそろ育ってきたよな

・なんならいっそ蒲殿が鎌倉殿でも構わねえ

・工藤祐経みてえなゴマスリがうまいだけの臆病者が出世ってどういうこと?

十分に不穏な要素が溜まってきていて、そこに景時が善児経由で決定打をつかんだことが見えてきます。

なんだか最近「伏線回収!」という言葉でドラマを評価することが流行しているように思えますが、三谷さんのようなミステリ大好きな作家ならばそれはむしろ当然のこと。

そういう発想のジャンプができるところにフィクションの醍醐味もあるわけです。

歴史劇でも【アブダクション】は定番技法だし、大事です。

『鬼滅の刃』呼吸で学ぶマインドフルネス~現代社会にも応用できる?

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三谷さんはこの思考の積み重ね方がともかく得意で、今までもこなしてきました。

それにそうすることで話を動かせる中世と相性が良いのだと思えます。

ちなみに『孫子』「行軍」には戦場でのこの適用法があります。

杖ついて立っている者は腹が減っている。

水を汲んですぐ飲む者は喉が渇いている。

利が目の前にあるのに進まない者は疲れている。

鳥が集まるところは誰もいない。

夜に叫んでいる者は何かに怯えている。

軍の統率が取れていないのは、将軍の威厳が不足しているのだ。

旗さしものがやたらと動くのは、何かが乱れている。

役人が怒っているのは疲れているから。

馬に米を食べさせ、兵が軍馬の肉を食べ、食事のためにのための器や鍋を壊し、キャンプに戻らないのはもう切羽詰まっているということ。

司令官が腰を低くして兵と話しているなら、士気が落ちている。

やたらと恩賞をはずむのはもう切羽詰まっているから。

やたらと罰するのは疲れ切っているから。

先に暴れておいてあとから復讐を恐れるなら、判断力がもう限界。

贈り物を持ってきて停戦交渉をする。これはもう休みたいから。

敵軍が激しく攻めてきたのになかなか迎撃しないし、撤退もしないなら、観察してみよう。

 


『鎌倉殿の13人』の進む道

【アブダクション】は色々と応用ができます。

視聴率では下落傾向が続く大河ドラマ。

今年は昨年と視聴率でも大差がないように思えます。

が、しかし、作品評価や手応えでは今年が成功枠とNHK側もみなしているということは、さまざまな要素から伝わってきます。

・Twitterでトレンドを獲得する

→これは保留。Twitterのアルゴリズムを理解していれば、ノイジーマイノリティ(声の大きい少数者)が活発化するとトレンドは取りやすいため。

・関連番組が多い

・ネットニュースの本数が多い

・関連書籍も多く出てくる

・関連イベントが多い

・歴史雑誌が、夏になっても関連ネタを取り上げている。昨年は夏にはもう下火になっていた

・ファン層の空気に余裕がある。心底好きか、義務感から好きと言っているのか。その違いはファン層の空気に反映される

書籍にせよ、イベントにせよ、関連番組にせよ。金と人が動くものは、そうできるものではありません。

勝てるとわかっていなければ動かない。そこが動いています。

NHKプラスでの再生数や、みなさまの声といった部分で、熱量が観測できているのでしょう。

こうもネット配信が発達した現在、視聴率だけでの判断は時代遅れになりつつあります。NHKもそこはふまえてNHKプラス再生数を気にしている。そこでよい結果が出ているのでしょう。

NHKは中世大河という賭けに勝った。

ゆえに再来年も『光る君へ』にしたのではないでしょうか。

そしてこのドラマが成功している証拠として、来週日曜、6月12日、伊豆の国市の江間公園で「第1回義時・江間祭り」をあげておきます。

第1回、つまり今年から。江間次郎を演じた芹澤興人さんのトークショーもあります。

◆第1回義時・江間祭り(→link

こういう行事があることが、大河の持つ力でしょう。

2019年に大河にからめたイベントが開催されたとき、参加者が二桁を割っていて、私は色々と不安になりました。

NHKが不安に思わなかったわけもないと思いますが、それも払拭できていることかと思います。よいことです。


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【参考】
鎌倉殿の13人/公式サイト

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武者震之助

2015年の大河ドラマ『花燃ゆ』以来、毎年レビューを担当。大河ドラマにとっての魏徴(ぎちょう)たらんと自認しているが、そう思うのは本人だけである。

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