元亀四年(1573年)に足利義昭を京都から追放した織田信長。
返す刀で浅井攻めに向かい、高島(滋賀県高島市)に滞在しておりました。
同時期に元亀→天正への改元が行われていたことも前回の記事で報じましたが、
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それだけでなく別の場所では【三好三人衆の岩成友通】との戦いも繰り広げられております。
託されたのは細川藤孝。
明智光秀と共に将軍・足利義昭を奉じ、信長と義昭のもとで二重生活を続けていた藤孝も、さすがにこのときには信長配下として働き、三好三人衆の岩成友通を討ち取る快挙を成し遂げます。
それは一体どんな戦い方だったのか。
岩成友通が立てこもるのは淀城
三好三人衆の一人・岩成友通らが立てこもっていたのは淀城(京都市伏見区)でした。
そこは抜け目ない羽柴秀吉(豊臣秀吉)。
先回りして友通方の武将である番頭大炊頭(ばんがしらおおいのかみ)と諏訪飛騨守(すわひだのかみ)を調略、味方につけて攻略の手はずを整えています。
そして頃合いを見計らい、信長は淀城に近い勝龍寺城(長岡京市)の主・細川藤孝に、岩成友通攻めを命じます。
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程なくして友通が城から打って出てきます。番頭・諏訪両名の計略にかかったのです。
淀城は、三方を川に囲まれた要害の地。本来ならば、籠城戦に持ち込んだほうが城方にとっては有利です。
そんなところから引きずり出すなんて、番頭と諏訪は一体どのような口車を使ったのか?
信長公記には
『二人の計略によって、友通が城から飛び出してきた』
としか書かれていないため、想像する他ありません。
戦場では、敵を罵ったり恫喝したりする【言葉合戦(詞合戦)】があり、相手をおびき出すためにも使われたりしていましたが、もし、この言葉合戦に負けると敵の士気を上げ、味方の戦意を下げるデメリットもあり、わざわざ禁止されるケースもあったと言います。
番頭と諏訪の手口は不明ながら、こうして戦場に引きずり出すのも大切なテクニックの一つでありますね。
一騎打ちで友通の首を獲ったのは……
かくして城から出てきた友通。
飛びかかったのが藤孝の家臣・下津権内(しもつごんない)でした。今回は、いささか読みの難しい武将が続きますね。
権内は、友通に組み付くと、見事に首を挙げました。
乱闘しているうちに二人とも堀に落ち、水中で格闘を演じたといわれていますから、一対一の激闘だったのでしょう。
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友通の首は、高島にいる信長のもとに届けられ、下津権内は信長直々に称賛されました。
そればかりか、信長の羽織を賜ったとか。
文字通り一世一代の名誉です。
ちなみに、三好三人衆のうち他の二人はというと、
【三好三人衆】
・岩成友通(いわなり ともみち )戦死
・三好宗渭(みよし そうい)消息不明(永禄十二年=1569年病没説あり)
・三好長逸(みよし ながゆき)消息不明(天正元年=1573年に討死説他、諸説あり)
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となっており、色々と判然としません。
おそらく、この時点でも他二人の消息がはっきりしていなかったからこそ、信長は友通の首を挙げたことを高く評価したのでしょう。
近畿に覇を唱えた三好勢も残りは義継のみ
これで、近畿に覇を唱えてきた三好勢も、残すは当主・三好義継だけとなりました。
一応、重臣である松永久秀もいますが……彼については別に考えておいたほうがいいでしょう。
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となると、彼らと連携を取っていた石山本願寺の力を削ぐことに成功した――と見ることもできます。
信長にとっては、実に喜ばしい展開です。
こうして各方面の戦況がうまくいったので、8月4日に信長は一旦岐阜へ帰還しました。
もちろん、これでこの年の戦が終わったわけではありません。
わずか4日後に、再び浅井・朝倉攻めの兵を挙げることになります。
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長月 七紀・記
【参考】
国史大辞典
太田 牛一・中川 太古『現代語訳 信長公記 (新人物文庫)』(→amazon)
日本史史料研究会編『信長研究の最前線 (歴史新書y 49)』(→amazon)
谷口克広『織田信長合戦全録―桶狭間から本能寺まで (中公新書)』(→amazon)
谷口克広『信長と消えた家臣たち』(→amazon)
谷口克広『織田信長家臣人名辞典』(→amazon)
峰岸 純夫・片桐 昭彦『戦国武将合戦事典』(→amazon)