慶応3年(1867年)1月。
徳川昭武を先頭に、渋沢栄一もお伴することになった遣欧使節団は、横浜からパリへ向かうことになりました。
日本近海を進みながら、早くも船酔いに悩む一行。
栄一は「異人ども」とわかりやすい言葉で外国人を罵っています。いきなりこの調子では人選ミスにも思えてしまいますが。
上海、サイゴン、セイロンと進み、エジプトのスエズに到着。
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にしても、船上があまりに穏やかではありませんか。
船酔いをするほど揺れているはずなのに、その手の動きは皆無。
船を舞台にした作品はそれなりに見てきましたが、ここまで微動だにしないものは初めて見た気がします。当然、波飛沫もありません。
西洋料理を食べる場面もありました。
「これは甚だ美味!」とは、栄一の自伝準拠の場面なのでしょうが、口に頬張ったまま食べた瞬間褒めるではリアリティに欠ける。
劇中でのテーブルマナーはどういう設定なんですかね。和食でも頬張ったまま話さないでしょう。
パリ万国博覧会の会場を視察
汽車を乗り継ぎ、55日間の旅を終えてパリへ。
わかりやすい説明セリフで、希望峰を回らないスエズ運河の話をする栄一です。
そして明治村ぽい……と言ってはならないグランドホテルに到着。
通訳は保科俊太郎。メルメ・カションもいます。二週間後が、皇帝ナポレオン3世との謁見ですので、大急ぎで準備を整えねばなりません。
ただ……アレクサンダー・シーボルトがいることにメルメ・カションは違和感を覚えています。彼はイギリス側だと困った顔をしています。
それにしても栄一がガンを飛ばすような場面が多すぎやしませんか?
警戒心や鋭さを演出したいのかもしれませんが、ハラハラしてしまいます。
幕府の一行も、薩摩がいることに焦っていました。水戸藩士たちは荒ぶる。まぁ、幕末一の暴力集団ですから、刃傷沙汰に及ばないだけマシかもしれません。
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それにしても、水戸学の徒であった栄一が、かつての同志を説得するなんて皮肉です。
説明セリフで大和男児をアピールする水戸藩士。こういう外国でのあるあるネタって、昭和の懐かしいお笑いセンスだと思えます。
栄一たちはさっそくパリ万国博覧会の会場を視察します。
蒸気機関――最先端の西洋技術――を目の前にして度肝を抜かれる一行。
栄一の驚き方がざっくりしていますが、ある意味、史実準拠です。
彼は文才を駆使してあれやこれやと褒めるような才能はありますし、コミュニケーション能力も高い。ただし、工学系の洞察力はそうでもない。
万国博覧会の説明もざっくりと入りました。
見て回っても言葉が通じないと焦る栄一。エレベーターにもびっくりだ。そしてまた建物のてっぺんで感動して話している。
なぜ栄一は何度も屋上で驚き、説明セリフで話すのか。
これからはがんばってフランス語の勉強をする宣言をしているけど……なぜそれを屋上で叫びながら?
薩摩とモンブランの策略
そして日本のブースへ。
思わず大はしゃぎする一行ですが、すぐに妙なことにも気付いた。
隣の琉球王国では、薩摩の品物が並べられているではないか!
しかも、丸に十字の島津家家紋が、まるで国旗のように堂々と掲げられているではありませんか。
と、ここでモンブラン登場。
なぜ敵対勢力の黒幕がホイホイ出てくるんだろう……という疑問はさておき、幕府側からは田辺太一が出て、薩摩の岩下佐治右衛門に状況の説明を迫ります。
岩下は言う。すべてモンブランがやらかしたこと。モンブランは幕府との交渉失敗で根に持っている逆恨みがある。
田辺は薩摩の旗を外し、出品者を「琉球」から「大君(タイクーン=将軍)」にするよう言います。
しかし、出品者は薩摩のタイクーンにすると強情を張る。
そして五代が黒幕だとペラペラ語るモンブラン。ドヤ顔英語で五代が陰謀を企んでいる場面が入ります。
栄一は「ごだい……?」と曖昧な記憶を探り、妙な顔芸をしています。
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岩下とモンブランを相手に交渉をしていた田辺は、とりあえず表記を【薩摩太守】で変更することで妥協しました。
しかし、それが仇となった。
幕府と薩摩は基本的には同格扱いとして、フランスの新聞に「日本は一つの国ではない連邦国家」とデタラメな情報を掲載されてしまったのです。
これもマスコミ工作ですね。モンブランと薩摩の大勝利です。
しかも、英語の通訳のようで実はイギリス公使館と通じているシーボルトが、外務省宛てに手紙を書いています。
イギリスは薩摩に武器を売り、手を組むつもりですから、探りを入れているのですね。
そんなことすら気づかず、シーボルトを雇用し続ける一行でした。
こうなったら謁見式で気合いを入れるしかない!
外交ってそんなに甘くはない気もしますが、それはさておき、ナポレオン3世の謁見式で、慶喜からの国書を堂々と読み上げる昭武です。
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昭武を演じる板垣李光人さんは眼光鋭く、気持ちも充実している感が伝わってきますね。
しかし、せっかくの彼の好演を邪魔するかのようにVFXの合成が甘いと言うか。
たしかに当時のフランス衣装を再現するだけでも大変だとは思いますが、昭武の衣装も気になります。冠が大きすぎて、小さな顔とのバランスが悪くありませんか。
慶喜はロッシュと話を詰め
そのころ日本では、徳川慶喜がフランスのロッシュとの関係を深めています。
フランスの支援を得て改革を行っているところ。栗本鋤雲辺りが頑張っていることでしょう。なんでもかんでも慶喜の手柄にされている感があって、その辺が気になりますが……。
そして大坂城に外国公使を招き入れます。
慶喜の堂々とした振る舞いに、ハリー・パークスも感心。
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しかし、諸外国の言葉で挨拶した慶喜の前で、堂々と幕府ダメ出しの密談をするパークスに驚いてしまいます。
そのころ島津久光は、かつての参与会議を呼び寄せ、政治権力を取り戻そうとしていました。
それを察知して潰した慶喜。彼のクールさを強調したいのでしょうが、パリで薩摩に負けっぱなしの場面を見たあとなので、写真撮影でお茶を濁されても……。
慶応3年(1867年)とは大政奉還のある年。
いわば幕末の一大転機です。
なぜもっと幕末の差し迫った情勢を描かないのでしょう?
島津久光をコケにして慶喜を持ち上げるような描写がとにかく多い。
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血洗島では、尾高惇忠や尾高平九郎がいて、見なし養子の話が進んでいます。
ここでも背景の合成が浮いていてどうしたものかと……。皆で寄ってたかって説得をするのですが、千代の気合を入れた顔がやっぱり喧嘩を売っているというか、怖いというか。
急遽入れた場面のような気がする、不自然なシーンです。
所作指導も甘いというか、幕末の人はやらないような行儀の悪いセリフと動きでどうしたものかと思ってしまいます。
「ポトフ! メルシー!」
パリでは滞在費がかさみ、栄一は経費削減に努めることになります。
ホテルを出てアパルトマンへ。
これがなかなか上手くいかず「侍は厄介だ」と愚痴をこぼす栄一です。
昭武の家を見つけたものの、通訳の担当が「値切りなんてできない」として交渉を断ったというのです。
武士は金に頓着がないと栄一は愚痴るのですが、小栗忠順と接触していて、この意見はさすがに無いでしょう。五代の才覚だって描かれています。
そこは「侍」でなくて、お仲間・水戸学フレンズの問題ですね。
このドラマの栄一って、やはり思い込みが激しい。
強い意思を見せたいのかもしれませんが、実際には、偏見が強く、過度に感情的で、しかも人の悪口を楽しそうに話すように感じる。
彼は儒教の何をどう学んでいるのでしょう。
異国の地へ出向いたときこそ、ドラマに深みを与えるような、儒教による知性を見せる格好のチャンスではありませんか? しかし……。
「ポトフ! メルシー!」
ポトフを食べ、値切る。不動産の交渉場面が延々と続きます。まぁ、最終的には昭武が気に入って良かったです。
パリの街を見物に出て、アンヴァリッド廃兵院等の名所を見ます。
何を見ても一本調子で驚く栄一が徐々にクドくなってきた。
ダンスパーティの場面もありました。水戸藩士は荒ぶり、栄一はデレデレしています。実際、栄一は史実でもパリのプロ女性と……まぁその話はいいでしょう。
しかし栄一は焦ります。
毎日楽しいけど、幕府から金が届かない……。
ここで上様の話もやっと入り、説明セリフ会話で金が届かないと説明される。
五代が幕府とフランスの同盟を切ったと大久保利通に報告しています。
薩摩ことばの習得度が演者ごとに異なり、かつ、イントネーションが薩摩と標準語で混ざり合っていて、何がなんだかわかりませんが、さておき。
そこへフランスと交渉していた借款600万ドルが潰れたという悲報が届くのでした。
総評
今回のVFXは、どうにも既視感があった。
その正体は何だろう?と思っていたら、そう、これでした。
◆ 初代プレステ?JTB「バーチャル観光」に総ツッコミ なぜこうなったのか、担当者に聞いた(→link)
本作が、コロナとオリンピックの影響により、ギリギリで作っているというのはわかります。
しかし栄一はなぜ何度も高いところに登って叫ぶのでしょうか。ナントカと煙は高いところが好き――そんな言葉がふと思い出されてしまい、これで頭の回転が速いと言われてもピンとこないといいましょうか。
そして今回は、示唆に富む内容でもありました。報道までどこかおかしく、ネットニュースはイケイケのアゲアゲです。
◆『青天を衝け』こう来たか!と唸らせるキャスティングの妙(→link)
ネットメディアの本質は、真実・事実を正確に伝えることよりも、ダイレクトに反映される数字が重要。
上記の記事も、こなれた文章で、褒めることが前提のように見受けられます。
しかし、売上が影響する書籍や雑誌となると話は別です。
書店で歴史関係の書物をざっと見ているのですが、『青天を衝け』がらみのものがどんどん減っている。
『大河なんて毎年そうでしょ?』と思われるかもしれませんが、実はそうでもない。現に、明智光秀がらみの書物は、まだぼちぼち見当たります。
そもそも戦国時代は人気ありますが、『麒麟がくる』の放送決定前にこんな状況は考えられませんでした。
ただし、ネット記事にしても、『青天を衝け』を持ち上げ続けるのは苦しいようで、例えば『現代ビジネス』さんの2021年上半期ベスト記事はこちらでした。
◆豊臣 秀吉「本能寺の変を事前に知っていた」説は、やはり正しかった…! 【2021年上半期ベスト記事】 (→link)
栄一ではなく秀吉。本能寺の変とあらば光秀・信長関連でもありますね。
『100日後に死ぬワニ』というコンテンツがあったではありませんか。
リアルタイムでやっていたときは異常なまでに盛り上がったけれど、今ではむしろネタ扱いの枠。
◆ 映画「100ワニ」、座席予約でいたずら横行 「新宿バルト9」が迷惑行為に注意喚起(→link)
本作がそうならないとも断言できないでしょう。
なお、来週の【大政奉還】は、ドラマの内容をすべて鵜呑みにされないほうが良さそうです。
本作は『徳川慶喜公伝』をベースとして描くかもしれず、そこには多分に慶喜のアリバイとプロパガンダが含まれている。
他の資料や証言と付き合わせて蓋然性があれば問題ありませんが、
「だって『徳川慶喜公』でこうあったから『青天を衝け』の内容は本当なんですよ!」
と主張するのは危うい限りです。
以下の記事にもありますように、徳川昭武と渋沢栄一のヨーロッパ道中は、いくらでも面白い話がある。それなのに全く活かしきれてないような今週の放送は困惑するばかり。
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万博に参加した芸者を、大原麗子さんが演じてヒロインになるなんて、豪華で素晴らしかったなぁ……というのは、はるか昔のまっとうな大河ドラマ『獅子の時代』です。
琉球と蝦夷地
今週は幕府と薩摩の争いがクローズアップ。
しかし、大事な視点が欠けているようでした。
それは勝手に薩摩藩主が王とされている琉球国です。
政治闘争の道具に使われた挙句、乗っ取られるようなことをされている。その残虐さ、踏みつけられる無念さを全く考慮してないところに憤りを感じてしまいます。
どうして琉球は、こんなことをされねばならないのか?
これは薩摩藩の暗部に迫ることでもある。
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そしてこのあと、パリで火花を散らしたような栄一と五代の第2ラウンドも控えています。
今度は蝦夷地改め北海道利権をダシにしてマネーゲームをやらかすんですね。
沖縄にせよ、北海道にせよ。
中央が権力やマネーゲームのコマにして平然としている。あまりにグロテスクかつ恥ずかしい歴史のことを考える必要があるのではないでしょうか。だってもう21世紀ですから。
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経済通ではあるものの……
コロナ時代に気をつけた方がよいことがあります。
他の分野では詳しいけれども、別分野にそうでもない。しかしなまじ知名度がある。
そんな勘違い系インフルエンサーが、コロナのことで何か断言していたらば、疑ってかかりましょう。
歴史は詳しいけど、医療はそうでもないとか。
経済通でも、医療はそうでもないとか。
それなのに断言するアカウントのことです。
なぜ大河でそんなことを?
というと、渋沢栄一はこういう「別分野に口出しをする人物」の典型例だと思えるからです。
ドラマでは技術を見て驚いていますが、渋沢栄一は工業系の技術については疎い。
もっとキッパリいえば、漢籍理解についても専門家ではありませんし、当時の経済以外は通じないと認識した方がよいかと思います。
栄一はなんでもできる超人!
そんな勘違いをさせる書籍や記事もありますので、そこは冷静に捉えていくべきかと思われます。
もしかしたら本作の栄一から学べるのはそこかもしれません。
彼は足尾銅山鉱毒事件に元凶として関わり、工場法を長いこと阻害し、関東大震災の時には天譴論(てんけんろん・大災害は驕り高ぶった人間を罰するためのものとする非科学的な論)を主張していました。
「誰も彼もが自分の意見を尊重すると決めてかかる傲慢さ」は、日本人を不幸にしたのです。
SDGsは渋沢栄一から学べません。
遺訓問題が発生していた
先週の放送で、徳川慶喜と渋沢栄一が共に復唱していた「家康の遺訓」を覚えていらっしゃいますでしょうか。
これがここ数年でもかなり大きな大暴投となりそうで。
◆妙に似合っていたナポレオン三世から贈られた軍服。そして、慶喜と篤太夫が「大権現様のご遺訓を唱和」の厄介な問題【青天を衝け 満喫リポート】(→link)
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こちらの記事のおかげで思い出しました。
該当の部分を引用させていただきます。
A:書棚の奥の奥から昭和57年に刊行された『徳川家康おもしろ ものしり雑学事典』(講談社刊)を引っ張り出してきました。中学生の時に買った本ですね。
この本の中には、遺訓を引用した後に〈よくできている教えだが、実はこの遺訓は家康が書いたものではなく、後世に作られたものだろうといわれ、今日ではその説がまかり通っている〉とあります。その後、尾張徳川家先代ご当主の徳川義宣さんの研究で由来も明らかになりました。
同氏は吉川弘文館の『国史大辞典』の「東照宮御遺訓」の項目を執筆していますが、こうあります。
〈「人の一生は(中略)過ぎたるよりまされり」の一文が徳川家康遺訓として世に知られているが、これは徳川光圀作として伝えられていた『人のいましめ』の教訓文を、幕末期に一部改め、『東照宮御遺訓』と改題して民間に流布せしめ、今日に至ったものである〉。
どこまで水戸が祟るのか……水戸学の始祖であり、いろいろ自己流解釈をしてしまっていた徳川光圀の創作です。
むしろ家康は、あそこで出てきてこう突っ込むべきでした。
「いやあ、感動的な場面に突っ込んで何だけど、私はこんなこと言い残していないんだよね」
そう突っ込まない本作の家康は、やはりおかしい。
大事な言葉だけに、制作サイドも少しだけ確認すれよかったことです。それなのに手抜きとも思われるミス。
それなのに複数の大手メディアがそうとは気づかず肯定的に発信していて、なんだか悲しいことになっています。
例えばこんな感じです。
◆『青天を衝け』“慶喜”草なぎ剛の軍服姿に反響 篤太夫と志を共有 (1)(→link)
“人の一生は重荷を負うて遠き道を行くがごとし。急ぐべからず。不自由を常と思えば不足なし。こころに望みおこらば困窮したる時を思い出すべし。堪忍は無事長久の基、いかりは敵と思え。勝つ事ばかり知りて、負くること知らざれば害その身にいたる。おのれを責めて人を責めるな。及ばざるは過ぎたるよりまされり。”
腹を割って話のできる関係の慶喜と篤太夫が笑顔で遺訓を唱えることは、2人の仲の良さを表すことと同時に、世界が麗しき調和を成すことへの願いを象徴しているように感じられる。異なる思想で対立している日本が調和し、世界も調和する。そんな願いの現れのような……。少なくとも、慶喜と篤太夫は理想を同じくして、ここで完璧に気持ちを共有し、この上ない幸福を味わっているように見える。
◆『青天を衝け』21話。将軍の重荷に苦しむ慶喜。突然はじまる渋沢栄一とのコール&レスポンス(→link)
「人の一生は重荷を負うて遠き道を行くがごとし……」
篤太夫と慶喜が謎のコール&レスポンスを繰り広げていたこの言葉は、家康の遺訓とされている。家康から続く幕府という重荷を背負った慶喜への、篤太夫なりのエールだったのではないだろうか。
ちなみに、篤太夫は後に著書『論語と算盤』の中で、この言葉は論語での教えが基になっていると指摘している。
あの水戸光圀の捏造となれば、そりゃ渋沢栄一にはしっくりくるでしょう。
しかし、なぜこんなことになってしまうのか。
私なりに分析してみました。
あまりに脇が甘いのでは?
SNSや広報担当者が、例えば『麒麟がくる』や『鎌倉殿の13人』くらいのスキルがあれば、途中でストップをかけるはず。
そういう迂闊で傍の甘い投稿が、今年のSNS運用では目立ちます。
なぜか?
答えはNHKさんが自ら発信しておりました。
◆歴史が苦手な私が、コロナ禍で大河ドラマ「青天を衝け」の広報担当になった話。(→link)
SNSの運用をはじめてから、今までずっと感じているのは、フォロワーの方々のありがたさです。ドラマ自体もとても熱心に応援してくださり、その熱量、パワーは本当にすごいと思っています。可能な限り、コメントはすべて読ませていただくようにしていますし、「#青天を衝け」でも頻繁に検索して、どのようなことがつぶやかれているか、参考にさせていただいています。おそらく、皆さんが思われる以上にドラマスタッフはコメントを見ていて、たくさん勇気づけられています。
印象的だったのは「今回初めて、大河ドラマを見てみようと思う」「歴史苦手だけど、見てみようかな」というコメントが多いこと。
実は、私も歴史がめちゃくちゃ苦手なんです。
歴史がめちゃくちゃ苦手とは……。
職員に様々な経験をさせるのは良いことかもしれませんが、なぜわざわざ苦手と称する方に担当させたのか。逆に得意な方はいくらでもいるでしょう。
NHK大河関連ともなれば、国民がそれを信じて拡散する可能性は高く、場合によっては間違った情報を飛び散らせてしまいます。
SNSの運用として、あまりに杜撰ではありませんか。
にしても、なぜここまで脇が甘いのか?
それこそ奇襲をかけられて大敗するような布陣で、見ていてヒヤヒヤさせられる。
空気も変わっていて、幕末史に詳しい層が、距離を置くようになってきた気配を感じます。
水戸天狗党ショックが終わらない
本編でも水戸藩士の態度に困り果てていましたが、なんだか現実とシンクロしているようです。
じわじわと暴かれております。
◆「383名斬首」の幕末の悲劇。天狗党の死は、敦賀でどのように受け止められたのか【青天を衝け 満喫リポート】(→link)
墓石の並びをコの字型から現在の前列8基、後列7基の2列に変更し、石玉垣が増築される。
この修築には、幕末当時に天狗党と関わりのあった前田侯爵家(旧加賀藩主)、松平侯爵家(旧福井藩主)、酒井伯爵家(旧小浜藩主)や旧水戸藩士の香川伯爵家、そして一橋慶喜率いる追討軍に参加していた渋沢栄一(渋沢男爵家)が寄附を行なっている。
こうした慰霊をみても、栄一と天狗党の繋がりは消えていないとわかります。
しかも、栄一の場合は薄井龍之の嘆願を握り潰していた。天狗党生前に何かができたという意味で、より重い意味と責任があります。
劇中では天狗党を見捨てた経緯がロンダリングされ、「攘夷は古い!」と言い放っておりましたが、渋沢栄一は生涯ずっと天狗党にシンパシーを抱いていた水戸学の徒だとわかります。
藤田東湖を「先生」付でよび、もったいぶってその言葉を引用することもしばしばあった。
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表層的なことだけ取り入れて方向変換を図っただけで、根底は何も変わっていません。
そしてこの慰霊が、敦賀であることにご注目ください。
実は水戸や関東では、慰霊を行うにせよ検証にせよ、ハードルがありました。
天狗党が現地の罪なき人を惨殺したため、反発が強かったのです。
親族同士ですら「天狗党を支持するか否か?」で別れ、絶縁になることがしばしばあったほど。
そんな天狗党がらみのニュースって、終焉の地である敦賀周辺からばかり出てきます。
水戸ではまだタブーなのかと思っていたら、こんな記事が。
◆斉昭への思い語る 竹中さんらトークショー 水戸(→link)
これは大丈夫なのでしょうか?
『青天を衝け』は、史実を侮辱するドラマと捉えられても仕方ない描写が多々ある。根拠は……。
・徳川斉昭の死がおかしい
→廁で心臓発作を起こし、暗殺の噂が立つほどの急死をした。それが史実なのに、妻に死ぬ間際チュー死をする捏造をかましました。アドリブにせよ、これにOKを出したのはあまりにひどい。
・そもそも斉昭が元凶
→天狗党と諸生党があそこまで荒れたのは、斉昭の危険な思想が背景にある。これは調べればすぐ突き当たることです。そういうことをすっ飛ばして斉昭顕彰とは?
・天狗党や水戸藩士を軽んじるドラマの空気
→このドラマの周辺には、天狗党や水戸藩士を蔑ろにする空気が漂ってます。ドラマの描き方も問題があった。いつまでもトラブルメーカー扱いをするわ。ファンダムでは露骨にバカにして遊んでいる雰囲気もあるわ。祟られないか不安になってきています。
私は本作の背景となる史実を調べていて、水戸藩のことがしみじみ悲しくなりました。
薩摩、長州、土佐、会津。
こうした地元ならば、こんな史実理解不足を前提にしたイベントなんてないと思います。
史実の検証すらできないほど、水戸は何かが払底したということか……。
竹中直人さんはもしかすると、『風林火山』のGacktさん、『八重の桜』の綾瀬はるかさん、『真田丸』の草刈正雄さんを目指しているのかもしれませんが、厳しいのではないでしょうか……。
歴史ドラマを嫌々ながら作る弊害
今週は解説しようにも中身があまりになさすぎる。
そこで、劇中の幕府よりも危うい大河の存在について考えてみたいです。
◆【青天を衝け】志尊淳が持つ“柔らかな”雰囲気 演出担当語る「幕末の志士とは違う人種」(→link)
朝ドラから再タッグとなった田中氏は「信頼している役者さん」といい「志尊くんが演じる杉浦は、前半戦までの人とは違う柔らかい雰囲気があります。栄一とは個人的な関係を築き、ビジネスではなく親友となっていきます。今までの人とは違う雰囲気が欲しくて、柔らかい感じの志尊くんに演じていただいて、幕末の志士とは違う人種と言いますか。そういう感じを志尊くんもよく理解してくれて、ナチュラルに演じていただきました」と志尊が持つ雰囲気に感謝。
本作スタッフとキャストのコメントを読むたびに、プロとしてやる気もないし、歴史を理解するという気力すらないと諦念が湧いてきます。
このコメントなんて、幕末に生きていた人を小馬鹿にしているんじゃないかとすら思います。
幕末の人をつかめないから、現代人ぽく見える役者に感謝している……ってなんでしょう。
「幕末の志士って、やっぱりこんなに鬼気迫る人たちなのか!」と見ている方が畏怖するようなシーンを描くのが、歴史作品の魅力ではありませんか?
そしてこれですね。
◆草なぎ剛「青天を衝け」夜中2時起床で4秒シーンのロケ「吹き替えで…」文句じゃない(→link)
大河ドラマで乗馬シーンが数秒しか流れないなんてことはむしろ当然。
『麒麟がくる』のラストシーンが典型例でしょう。
あのドラマではそこまで乗馬シーンが多いわけでもない吉田鋼太郎さんが、乗馬レッスンをしていると聞き感銘を受けました。
仮に冗談だとしても、こういうやる気のないと思われても仕方ないコメントを、主演級が出すって士気にも関わる話でしょう。
『麒麟がくる』では、現代の剣道とは異なる古武術指導を受けた役者が、それこそ数秒間の場面をきっちり撮影していました。
しかし本作はそういうスタンスじゃないかもしれない。
本作の出演者には、学生時代に剣道経験のアピールをされる方が複数名います。現在のスポーツ剣道と幕末の真剣勝負では、動きが違うに決まっているのに、それをふまえない殺陣が多い。
「どうせ数秒だしいいっしょ」
そんな空気が蔓延しているから、やる気を感じさせないコメントが記事にされてしまうのかもしれません。
本作の出演者って、初夜アピールをした方といい、うっかり発言も多い。現場は大丈夫でしょうか?
VFXの予算と技術はどこへ消えたのか?
今週はスクリーンショット、予告を見るだけで嫌な予感がしました。
◆【青天を衝け】“パリ編”は成長する篤太夫に注目 グリーンバックの撮影も「楽しんでやってくれた」(→link)
◆ 渋沢栄一、パリへ!「現代のVFX技術で、あたかも当時のパリにいるかのように再現した映像が見どころです」田中健二(演出)【「青天を衝け」インタビュー】(→link)
このドラマは序盤の江戸の景色からして、VFX処理が甘くて気になってはいました。
PS4じゃない、PS3くらいに思えます。
ゲームでなく大河ドラマと比較すると、8年前、つまりは2013年『八重の桜』が幕末大河最高峰だとわかる。
あのドラマはかなりVFXに気合いを入れ、メイキング動画まで公開していたほどです。
NHKの幕末番組で使い回しをされる定番なのも理由があります。
そして、あれから8年を経てなぜ衰えたのか?
2015年、2018年、2019年でも困惑しましたが、今年もやはりどうしたものかと思ってしまう。合成しているとハッキリわかる。
このドラマは全体的に、映像の作りが手抜きをしていると思わされて、本当に悲しくなってくる。
近現代かつ中国、韓国を舞台にしたドラマの予告を置いておきますので、絶望を分かち合っていただきたい。
『君、花海棠の紅にあらず』(中国、2020)
『ミスター・サンシャイン』(韓国、2018、Netflix)
大河ドラマがいまだに東アジア唯一最高の時代劇だと思い込んでいる方もおられますが、今時の若者は韓流、華流時代劇を楽しんでおります。
そんなガイド『戦乱中国の英雄たち-三国志、『キングダム』、宮廷美女の中国時代劇』はお勧めです。
◆ 【書評】佐藤信弥『戦乱中国の英雄たち』(→link)
国際博覧会はオワコン
先週に続き、1980年大河ドラマ『獅子の時代』に注目させてください。
あのドラマが放送されたとき、パリの万国博覧会を見た視聴者は衝撃を受けたことでしょう。
1980年といえば、5年後には「国際科学技術博覧会」、つくば万博を控えていました。
テーマは科学技術。これからきっと伸びていく、そんな日本の科学技術の姿は、ピタリと大河とも重なったのでしょう。
それから時は流れまして……こんなニュースがあります。
◆遅れる万博パビリオン誘致 「各国建設型」は目標の1割(→link)
2025年大阪・関西万博をめぐり、海外からのパビリオン(展示館)誘致が遅れている。
各国が独自に建設する場合、6月末までの申請を求めていたが、手続きした国は目標の1割強にとどまった。
万博の盛り上がりに水を差しかねず、政府は対応を急いでいる。
オリンピックもすっかり嫌われとなり、オワコンだとため息をつかれておりますが、万博もそうなのです。
2025年なんてそこまで時間もないように思えます。
コロナ関係なしに誰が行きたくなるのでしょう?
かつての万博は、若者にとって夢あふれるイベントでした。
しかしこうも娯楽が多種多様化した今、若者が昔のように万博に夢と希望を感じるともさして思えない。
むしろ「若者はオリンピックや万博に感動するんだ!」とワクワクするのは、元若者世代だけではありませんか。
そういうドツボと重なってしまい、洒落にならないほどオワコン感が漂っている。それが『青天を衝け』だと思えてしまう。
本物の若い世代は、VODで海外時代劇をイッキ見しているのではなかろうか? 大河は一週間待たされるわけだし。
そういう懸念が万博推しのせいで強まりました。
『青天を衝け』は、いつまでも自分が若いと勘違いした元若者が喜ぶコンテンツではありませんか?
歴史的に見ても、2021年、万博ほどオワコン感が漂うものもありません。
オリンピックと双璧ですね。
パンデミック拡散も大きな理由です。
WHOも協力しているというアプリ『Plague Inc.‐伝染病株式会社‐』をプレイしました。世界中に伝染病をばらまき、人類滅亡をめざすシミュレーションです。
このアプリでは、オリンピックは感染拡大の大チャンスとして存在します。
繰り返しますが、WHOも協力するほどしっかりしたアプリで、とっくにそう認識されている、と。
のみならず、BLM運動由来、グローバル・ヒストリーによる、歴史の見直しからもよろしくありません。
万国博覧会とは何か?
複数の国が参加し、技術や物産を競い合い、教育や啓蒙を目的とする……表向きはそんなことを言われておりますが、裏を読み取ってこそ歴史の醍醐味はあります。
そこには植民地、帝国主義の影が見える。
19世紀とは、社会進化論(社会ダーウィニズム)の時代でもあります。
ダーウィンの進化論を社会にもあてはめ、適者生存だのなんだの言い出したもので、科学的で説得力があるように思えて悪質なのですが、要するに植民地支配の名目として機能していたのです。
それまでは「奴隷を使役し、世界を支配することは神の意思!」であったものが「適者生存だ、これぞ科学」となった。
そのあたりはややこしいので、各自自習でもお願いしたいところです。
いずれにせよ、そうして現代では否定されたエセ科学と差別が根底にある催しが、この博覧会です。
綺麗事で飾り立て、参加国は収奪した特産物を並べます。
茶:イギリスが茶葉のために、インドと清で何をしたか?
象牙:そのためにアフリカで象を殺す
ダイヤモンド:ブラッドダイヤモンド、紛争ダイヤモンドは今日まで至る問題
こうした欲望を満たすために、現地民を搾取しようと、社会進化論で取り繕う――そんな構造があります。
渋沢栄一が「王様が商売の話をしている!」と感銘を受けたレオポルド2世は、悪辣な代表格です。
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このドラマの解説なり感想で、こういうものがあります。
「渋沢栄一って根っこは商人だから、戦争をしたがる武士とは違うよね」
だとすれば、彼自身、都合にあわせて武士と商人の顔を使い合わせていることも理解していただきたい。
それ以上に、19世紀以降、戦争の主たる原因は経済になりました。
宗教やイデオロギーではない。搾取により大量殺戮が起きる。それが近代史以降の流れです。
アダムスの『国豊論』では、経済のために囲い込みをすることの是非を論じている。世界史の基礎ですね。
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インドの飢饉にせよ、背景には金を儲けたいイギリスの経済がある。
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そうして植民地支配者同士がぶつかりあい、二度の世界大戦へ向かってゆく。
日本だけで見たって戦争の原因に金がある。
つまり、19世紀以降、商人が金のために搾取し、殺す構図が明瞭明確になったのです。
19世紀から20世紀にかけて活躍した国の政商が、平和を愛し、仁徳に溢れる人物だとして顕彰するのは危険でしかありません。
現代だって、金を稼ぎたいからと労働者を搾取し、命まで奪う悪徳経営者はいます。
従業員を過労自殺に追い込んだ会社経営者がニコニコしながら人徳だのなんだの説いてる姿を見てどう思いますか?
彼らが半世紀後、大河ドラマになっていることを想像してみてください……。
そうそう。商業による搾取といえば、ちょうどホットなニュースが出たばかりでしたね。
◆ 仏当局、ユニクロなどを捜査 ウイグル人強制労働問題で(→link)
渋沢栄一の顕彰も笑って済まされないと思うのです。
問「BBCがコルストンをドラマにするか?」
このドラマは歴史学の基礎からして外しており、どうしたものか。
世界でBLM運動が高まる中で、見直しがどんどん進み、商人像は破壊の定番です。
◆ 焦点:コルストン像引き倒し 「奴隷商人」英で議論(→link)
コルストンは渋沢栄一と通じる部分もある。
有能な商人であり、かつチャリティに貢献しました。
地元民にとっては顕彰対象だからこそ、ブリストルで銅像を建てた。
しかし、その商売なりチャリティの原資が非人道的ということで、顕彰されなくなったのです。
BBCがコルストンにイケメンをキャスティングして、奴隷貿易を除外したドラマを作ったら?
そもそも放映まで漕ぎ着けないでしょう。
マスコミから視聴者まで「ふざけるな!」と言って企画時点で終わります。
そういう国際的には話にならんことを本作はしている。
このことを踏まえまして、先へ進みましょう。
批判理論(Critical Theory)に耐え切れるコンテンツか?
最近ニュースで“Critical Race Theory”という単語が頻出します。
歴史や社会を人種観点から見直すこと。
よくこういうことをまとめて「ポリコレ」と言い出す向きがありますが、あの言葉は不正確な上にもう古いんですね。
新しい言葉があります。
アメリカではトランプ前大統領が毛嫌いし制限したものの、バイデン現大統領がその制限を撤廃しています。
歴史も当然影響を受けます。
◆ 米で議論沸騰 「批判的人種理論」とは何か(→link)
アメリカが偉大だのなんだのいうが、奴隷の労働で得た繁栄じゃないか。
そこを無視して栄光だけ白人のものとするのはいかがなものか。
そんな批判があがり、既にコロンブスが「アメリカを発見した英雄」でなくなり、コロンブス・デーは消えました。
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エンタメに政治を持ち込むなというのは、あくまで一部の話。時代劇は真っ先にCRTの影響を受けます。
例えば西部劇『マグニフィセント・セブン』。
リメイク元の『荒野の七人』では全員白人であった7人ですが、この作品では人種比が異なります。むしろ史実に近づけた結果そうなっているのです。
『アナと雪の女王2』では、サーミ族をモデルにしたノーサルドラ族が重要な役割を果たします。
日本でもCRTに耐えられる作品は出てきており、アイヌが重要な役割を果たす『ゴールデンカムイ』と『熱源』が代表格。NHKでも『永遠のニシパ』を放映しています。
で、どうです?
もちろん、お気に召さない人はいるのでしょうけど、こういう要素を入れたからって別につまらなくならないでしょう?
ここでもう一度『獅子の時代』に戻りましょう。
あの作品は、Race(人種)は抜けていますが、批判理論(Critical Theory)に耐えられる設定でした。
明治維新だのなんだのいうけれども、官軍を恨む声は満ちている。多くの命を奪って、我を通した。作中では、会津の男がそう薩摩の男に問いかける。
◆大河ドラマ『獅子の時代』(→amazon)
会津と薩摩をW主人公にすることで、批判理論をクリアしているのです。
小説ですと、司馬遼太郎の明治ものはなかなかクリアするのは難しく、むしろ山田風太郎の方が通る。
大河ドラマは?
ここ10年の幕末明治ものならば『八重の桜』のみがクリア。
あとは全て落第どころか、歴史観が80年ほど後退していないかと不安になるほど。
海外では批判理論をクリアした時代劇はむしろ標準です。
そういうドラマをVODで見ている層が『青天を衝け』を見て評価できるのかどうか。
アイドルドラマとしてイケメン鑑賞に徹するならそうだと言って欲しい。
ともあれ、今どき渋沢栄一を礼賛している危うさには、日本人の多くが気付いてもよいと思います。
お札になった時点で人選ミス。そして、そのミスの尻拭いを受信料でやるような構造です。
できれば故・金子信雄さんが演じた渋沢栄一が見たかったんですよね。
実録極悪明治路線で映画化して欲しかったなぁ。
それでも『鎌倉殿の13人』がある
昨年の『麒麟がくる』で秀吉を熱演した佐々木蔵之介さんが、また快挙を成し遂げようとしています。
◆ 君子無朋(くんしにともなし) ~中国史上最も孤独な「暴君」雍正帝~(→link)
NHK番組で知ったという「清の雍正帝」をテーマに選ぶ時点で、ただごとではないと思いました。
よりにもよってあの人を選ぶのか。と、選んだ時点で歴史への興味関心が高いとわかります。
彼は『麒麟がくる』でも、いろんな本や資料を読み、秀吉ゆかりの場所を巡り、役作りをしていたそうです。
昔のことなんてわからない、そう開き直ることがない、大河俳優らしい誠意。だからこそ、劇中、ああも上手だったのかと納得しました。
そして来年に期待が高まります。
『鎌倉殿の13人』の出演者は皆コメントからして素晴らしい。
中でも、彼が際立っていました。
◆NHK大河「鎌倉殿の13人」に青木崇高、木曽義仲役に「大きな喜び」(→link)
「頼ってきた者を追い出すような真似は出来ぬ。男には、守らねばならぬ道がある」のせりふとともに紹介された。
木曽は芥川龍之介、松尾芭蕉がほれ込んだ人物だったといい、青木は「『木曽義仲』とはとても魅力的な人物であったようです。牛に松明をつけて平家を襲撃した、という知識しかなかった私は自分がとても恥ずかしくなりました」
知識がないことを居直らず、かつ調べて、芥川龍之介や松尾芭蕉が感じた魅力まで語る。
彼は歴史ドラマの意義を理解しているのだと思えます。
本物の木曾義仲は会えるはずもないけれど、彼が放つ魅力を感じた人がいる。そのことを理解し、誠実に引き継いでいこうという気持ちがわかります。
演じることによって、新たな気づきも得られる。
研究者にも、ドラマのことで役者と話していてアイデアを得たと振り返っている方がいます。
そうやって人間同士がぶつかり合うことで火花が散る。
歴史を描くというのは、そういう火花を生み出す作業だと思えるのです。
来年に期待します!
みなさまがんばってください!
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【参考】
青天を衝け/公式サイト


















