全ての御家人に、そんな命が下されました。
あの三浦義村ですら若干困惑しているのですが、北条時政がしれっと「ようわからんが武蔵で兵を整えている」と話を進めます。
鎌倉殿をお守りするため、これより畠山一族を滅ぼす!
もはや義村も、その命令に従うしかありません。
時政は狡猾です。爺様(じさま)こと三浦義明の仇討ちだとして三浦一門をけしかけている。
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義村は三浦一門をあげて討つと返しますが、同じく三浦一族の和田義盛は困惑しきり。これだけ長くいると情が移ってしまう。次郎って奴は見栄えはいいし、頭も切れる。
そう褒めてからこう続けます。
「何ていうか、自分と同じ匂いを感じるんです」
訥々と的外れなことを言う義盛には構わず、先へ進めるよう促す義村。
感情に流される義盛と、感情を一切断ち切って進む義村がそこにはいます。同族、同時代、似たような環境でこうも違うとなると、先天性の個性があるのでしょう。
では、どうやって重忠を鎌倉まで誘い出すか。
まずは息子の重保を由比ヶ浜に呼び寄せる作戦としよう。
義村がそんな提案をします。
そう、実は物騒な「鎌倉の浜」です。
今でこそ湘南リゾートのイメージが強い由比ヶ浜ですが、この浜では結構人骨が発掘されます。
当時から「処刑あり、火葬あり」といった調子で、かなり大量に出てくるんですね。
そもそもビーチリゾートとは、明治以降のヨーロッパから輸入した概念であり、東京からほど近い鎌倉は、この際、心霊現象なんてどうでもええわ、と観光地にされたのです。
今年の湘南は、爽やかなイメージではなく日本版『ゲーム・オブ・スローンズ』こと『鎌倉殿の13人』観光を展開していて、なかなかシュールなことになっていますね。
さて、由比ヶ浜と人骨の関係は、本日の豆知識にでもしていただき、話を戻しまして……。
その場には、重忠と同じく時政の娘婿である稲毛重成もいました。
時政から畠山重保を呼び出す役を命じられ、戸惑っています。
しかし目の前に「武蔵の惣検校職」をチラつかされ……乗り気になってしまう。
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義時の継室・のえは早くも出産へ
かくして戦術は確定しました。
まず稲毛重成が、畠山重忠の子・重保を呼び出し、三浦義村や和田義盛たちと共に待ち伏せをする。ただし、「決して殺してはならぬ!」と時政が釘を刺したように、重保を人質にして重忠を降伏させる。
果たして、そんな簡単にいくのか……。
まだ気が乗らないと義盛が戸惑うだけでなく、三浦義村の弟・三浦胤義も「小四郎殿(義時)に伝えないのか?」と疑問を呈します。
これに対し義村は、教えたところで板挟みになって苦しむだけだと即座に却下。確かにそうかもしれませんが、周囲から冷酷と見られることを気にしない――そんな義村の個性が出ていますね。
しかし、義時には弟の時房が一通り伝えてしまいました。
「どうしてそういうことになる!」
怒りのあまり拳を床に叩きつける義時。
重忠は戦をする気なんてない!
しかし、父上に押し切られたと時房が伝えています。この我慢強い弟も、何かが溜まってきているようです。
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間が悪いのが北条泰時です。義時の継室・のえが実は悪女であることを伝えようとして、怒鳴り返されます。
「今はそれどころではない!」
時房に出直すよう諭され、廊下に出た泰時は彼女とすれ違うのですが……なにやらお腹を抱えて苦しそうな表情をして、うめいています。
のえこと伊賀の方は、このあと程なくして男児(義時四男・政村)を産んだと記録に残されています。
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実はその誕生日が畠山重忠の命日(元久2年6月22日)だったりします。
上総広常と北条泰時の間にはついては「輪廻転生」したような描写もある本作です。では政村と重忠についても何かあるのか? 現時点ではわかりませんが、あれば興味深いかと思います。
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ちょっと気になるのが泰時の性格です。
彼は空気が読めません。
どこかギスギスした雰囲気で、父も叔父もイライラしているとなれば、察することもできるはず。しかし彼はそういうことが苦手です。一言で言えば不器用なのでしょう。
そんな夫の欠点を補うのが初でしょう。
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これまでも義時と泰時の間でクッション的な役割をこなしてきました。
彼女がいないところだけに、泰時もああなってしまったと。
じっと俯くしかできない重忠の妻ちえ
蝉の声が響く中、武蔵の畠山重忠の館では戦支度が整えられています。
愛妻ちえが送り出すのは重忠その人。
「ご無事を」
「行って参る」
優しく微笑み、妻の頬をそっと撫でる重忠。
目には慈愛が宿っています。
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ちえは端正な横顔でじっと俯く。
泣くわけではない。叫ぶこともできない。引き止められない。
でも、これがどういうことか彼女にも理解できているのでしょう。
重忠の妻である彼女は北条時政の娘でもあり、これ以上、残酷なことがあるでしょうか。
視聴者にも、どうしたって哀しい最期を予感させる中、長澤まさみさんのナレーションが始まります。
頼朝死後の熾烈な権力の嵐。
それを制したかに見えた北条が全てを手にしたかに見えた。
しかし、その力に屈しない男がいる――。
武士の鑑、最期の戦いが始まります。
「畠山が謀反をするなら討ち取れ!」
謀反の証拠はないと冷静に返す義時。
実朝は下文を取り下げたいと戸惑っています。あんな卑劣な騙され方を祖父にされて気の毒ですが……それでも義時は、一度取り下げたら威信に傷がつくと認めません。
これは世の真理かどうか?
一度決めたことを撤回することの是非とは面白いものです。義村あたりなら案外あっさり取り下げるかもしれない。
『真田丸』の真田昌幸はホイホイ方針を変えて、「朝令暮改の何が悪い!」と開き直っていましたね。
そうすることで「この表裏比興が!」と言われることをどうでもいいと割り切れた。性格が左右しますね。彼は少数派です。
実衣が、戦になるのか?というと、実朝は幼い頃から世話になった相手を殺したくないと訴えます。
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重保が討ち取られ重忠は二俣川で立ち止まる
そのころ義村と義盛は、鎌倉に畠山重保を呼び寄せていました。
浜に集まる謀反人を討つため――そういう理由で呼び出された重保は、自身が囲まれ、ただならぬ様子に驚きを隠せません。
「悪いな、謀反人たちとはお前らのことだ。手向かいしなければ命は取らぬ」
「謀ったな!」
重保は、窮地であっさり降伏するような武士ではありません。
結果、命を落とします。
鎌倉では、重忠が近づいているという報告が入り、時政が「重保は殺すなといっていただろ!」と慌てています。
しかし義村も、やらなければやられていたと振り返る。
「坂東武者の名に恥じない、立派な最期でござった」
そう感服したように言う義盛。
命より名を惜しむ、そんな坂東武者の誇りがじわじわと広がり、義盛を包み込んでいるようです。義村はそうでもないのか、どうなのか。
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武蔵から鎌倉へ近づいていた重忠は、二俣川の向こうで進軍を止めました。
重保の死を知り、所領に戻るかどうか話し合っている模様。
りく(牧の方)はすぐに兵を差し向けて、討ち取るように急かしてきます。「このまま戻るかもしれない」という意見など全く意に介さず、すぐに兵を出せとせっつきます。
義時が手勢が少ないと返せば、義村も戦ってもしょうがないと続ける。
そして時房がりくの心に踏み込みます。
「義母上、政範を失った無念はお察しします。けれどもだからといって全てを畠山殿に押し付けるのはよくない」
しかし、りくはますます激昂。自分が憎いから肩を持つのか? 政範が死んでいい気味だと思っているのか?と時房に怒りをぶつけています。
そもそも時房は、北条家の中でも立場が強くありません。異母弟である北条政範の下にいるような立ち位置であるからこそ、りくからも手厳しく言われる。
いずれにせよ状況は最悪です。
りくの苛立ち、時政の武蔵への狙い、そうした感情が絡み合って事態はどんどん悪化。
そこへ泰時がやってきて、重忠が鶴ヶ峰に布陣したことを伝えてきました。
鶴ヶ峰と聞いて時政も気を引き締めています。高台で、敵を迎え撃つには格好の場所である。それを聞いた義村も、重忠が戦う気だと悟った。腹を括って死ぬ気だと義盛が続きます。
「だったら望みを叶えてやりましょう!」
と、りくが再び煽ってきます。
しかしそのとき、時政が突然声を荒げました。
「それ以上口を挟むな! 腹を括った兵がどれだけ強いかお前は知らんのだ!」
通常の合戦は、生き抜くことが念頭にあり、仮に敗戦したとしても逃げ道を考えます。逆に、最後の最後まで追い込むと、敵も死ぬ気になって向かってきて味方の被害も大きくなる。
それゆえ“腹を括った兵”は怖いと時政も怒り、義村も、こっちも本腰を入れるしかなさそうだと覚悟しました。
ここで義時が父の前に座ります。
「お願いがございます」
「申してみよ」
「私を大将にしてはいただけないでしょうか?」
悲壮で、怒りを押し殺したかのような表情で、強く時政に迫る義時。
なぜ自ら大将に?
兄の意図をはかりかねるのか、時房は困惑しています。義村が理由を聞くと義時は「戦にはさせぬ」と……。しかし、いざ畠山が仕掛けてきたら強いと義村は一応の注意を促している様子です。
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