藤原道長はわかっていたような顔をしています。
直秀も「潮時だった」と悔しそうに語るのでした。
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燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや
直秀はなおも強気で「若君」と道長に語りかけている武士を挑発します。
「若君がそんなに大事か?」
右大臣に仕える身でヘコヘコいている。悔しくねえのかと問いかけるのです。
往年の少女漫画のような雰囲気もあるというこの作品。
直秀は、池田理代子先生の『ベルサイユのばら』および『栄光のナポレオン エロイカ』に登場するアラン・ド・ソワソンを彷彿とさせます。
ひねくれてやんちゃなようで、胸の奥には身分制度に対する怒りが激っています。
まひろならば「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」(『史記』より/小鳥には雄大な鳥の気概はわからない・小人物には英雄の大志は理解できないという意味)と理解しようとしたかもしれません。
道長は戸惑いつつ、人を殺めていないからには命まで取らずともよいと警備の武士団をなだめます。
それでも感謝するどころか「凛々しいことだな、若君!」と憎まれ口を叩く直秀。
かくして一味は検非違使に引き渡されると、道長はその後、父の枕元でじっと考え込むのでした。
倫子の恋心
左大臣家の姫君サロンでは、猫の小麻呂とともに姫君たちが語り合っています。
呑気な彼女らは、道長が盗賊を捕らえたとはしゃいでいます。
なんでも彼の評判は急上昇中なのだとか。
源倫子もうっとりしながら、その一味は土御門(左大臣邸)に入った者と同じか?と尋ねています。
さすがにそこまでは不明であり、倫子が恋する乙女らしく色々と発想が飛んでいるのでしょう。
私の家に入り込んだ連中を捕まえたってコト? 仇討ち? キャー! と、なってもおかしくないかなと。
まひろだけひきつった顔をしております。
倫子の母・藤原穆子が赤染衛門を廊下で呼び止め、倫子は右大臣家の三郎君をどう思っているのかと聞いています。
赤染衛門がわからないと答えると拗ねる穆子。
「衛門はうちの人にはそういうことを話すのに、私の問いには答えないのね」
困惑する赤染衛門。
その反応から湿っぽいことはないと穆子は悟ったのでしょうか。相手を解放するのでした。
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検非違使 散楽一座を捕える
まひろは乙丸とともに散楽を探しています。
辻にいなければいるはずの場所にもいない。もう直秀は都を出てしまったのか。旅に出てしまったのかとまひろは考えています。
するとそこへ検非違使の連中がドカドカと入ってきて、まひろも盗賊の仲間と判断して連れ去ろうとします。
慌てる乙丸と「散楽が何をしたのか!」と抗議するまひろに対し、検非違使も「黙れ、この盗賊めが!」という剣幕で返してきます。
東三条で何をしたのか、獄でたっぷりと詮議してやる!と凄んでいるのです。
では検非違使とは何なのか?
今でいうところの警察権力に相当する役職であり、重要な職務でした。
時代がくだり、源義経が朝廷から検非違使に任じられています。武士にそういう大盤振る舞いをするから、墓穴をほったのでは?と思えてくる話ですね。
今年の大河ドラマは合戦や戦闘に馴染みのない時代と言われますが、実のところ平安末期の源平合戦から鎌倉幕府初期へ繋がる要素もあり、非常に興味深いものがあります。
『鎌倉殿の13人』と比較しながら見ると、より楽しめるでしょう。
すると藤原道長が獄へやって来ました。
「処分が知りたい」として、東三条では何も盗んでいないし誰かを傷つけてもいないから、早めに縄を解いてもらいたいと告げます。
「何故そのようなお情けを?」
「頼む」
頭を丁寧に下げる道長。それでも相手は「腕の一つもへし折って、二度と罪を犯さないようにするのが仕事だ」とそっけない。
そこで道長はそっと賄賂を渡すと、相手はすぐさま「承知いたしました」と受け取りました。
甘い、法の適用がズブズブやないか! 一体どうなっているのよ!
これまた『鎌倉殿の13人』を思い出すと良いかもしれません。
最終盤では【御成敗式目】を練る北条泰時が輝いて見えたものです。
貴族も法の適用が曖昧で、ましてや坂東武者はまさしく無法。
うまく振る舞えばその立場を享受できるのに、自ら「それではダメだ!」と改革を推し進めた北条泰時は本当に偉い人物だったんですね。
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もう一点、道長もどうにも甘いところがあります。
『鎌倉殿の13人』での坂東武者は互いが背かぬよう証文を書いて飲んでいました。それでも破るとなると吐き出す様が出て来ていました。
倫理崩壊しているような彼らだって証文は怖い。
ましてや京都人にはもっと効くことでしょうから、そういう脅しも必要だったのではないでしょうか。
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