こちらは2ページ目になります。
1ページ目から読む場合は
【周明】
をクリックお願いします。
お好きな項目に飛べる目次
お好きな項目に飛べる目次
健康オタクの実資
周明がなぜ『光る君へ』に登場したか?
その役割を考えると、さらに大きな意味があると見えてきます。
平安時代の人だって、
「祈祷ばかりではなく、もっと真っ当な治療法はないだろうか?」
と考えることは当然あります。
劇中でロバート秋山さんが演じる藤原実資は、唐物(中国輸入品)マニア。
現代であれば健康オタクであり、わざわざ太宰府にまで唐人医の処方による薬を求め、手に入らないと歯軋りしている様が、彼の日記『小右記』に残されています。
きっとドラマでも「薬が買えん!」と嘆き、それを盛大に愚痴り、周囲からは「日記に書けばいいでしょ」と言われる様子が描かれるでしょう。
実資は長生きです。90歳という、当時としてはありえないほどの長寿を保ちました。
そんな実資にはお気に入りの女房がいます。
藤原彰子に仕える藤原為時の娘――すなわち紫式部(まひろ)です。
越前に出向いたまひろが、現地で周明と知り合い、医療に関する様々な知識を得たとすれば、健康マニアの実資としてはたまらない逸材となるでしょう。
『光る君へ』で異彩を放つ藤原実資(ロバート秋山)史実ではどんな貴族だった?
続きを見る
紫式部は道長とどんな関係を築いていた?日記から見る素顔と生涯とは
続きを見る
「宋の言葉」を学べる絶好の機会
藤原道隆の息子である藤原隆家は、目を負傷した際、太宰府で【唐人医】の治療を求めました。
もしもこの【唐人医】として周明が出てくるとすれば、松下洸平さんは後半まで出番があってもおかしくありません。
更には、まひろが彼を隆家に紹介すれば、ドラマとしてはおいしい展開となるでしょう。
周明は、まひろに「宋の言葉」を教えるようです。
『光る君へ』の第9回放送では、まひろの父である為時が、自作の漢詩を中国語読みする場面がありました。
発音としては到底通じそうにない、限界を感じさせるものですが、もしもまひろがネイティブから中国語を習えるとすれば、素晴らしいポテンシャルが生まれます。
日本人が【漢詩】を詠む際は、印を踏まねばなりません。
当時の貴族は【韻書】というテキスト頼りで韻を把握していました。
その韻の当てっこゲームとして【韻塞ぎ】があり、『枕草子』や『源氏物語』にも出てきます。
つまり、ききょう(清少納言)も、まひろも、中国語の韻を重視していたということです。
ドラマでは、まひろが中国語学習を経験することにより、ききょうを大きくリードできます。
あの女はやたらと漢籍教養を誇っていたけど、大したことないもんね――そんな『紫式部日記』の記述にも、説得力が生まれてきますよね。
★
第9回を思い返せば、オリジナルキャラクターの直秀が衝撃的な退場を迎え、大いにその死を惜しまれたものでした。
『光る君へ』直秀はなぜ検非違使に殺されたのか?遺体は無事に埋葬されたのか?
続きを見る
『光る君へ』直秀たち窃盗団はなぜ衣服を盗んでいた?平安時代の衣料事情に注目
続きを見る
次のオリジナルキャラクターには、満を持して周明がやって来ます。
直秀が死であるならば、医者である周明は生を司どるのかもしれません。
設定の時点で、まひろに大きな影響を与えると思われる周明――松下洸平さんが演じるこの魅惑的な宋人の登場に期待が膨らみます。
あわせて読みたい関連記事
◆ドラマや平安時代など全ての関連記事はこちら→(光る君へ)
◆以下、名前をクリックすると各人物伝の記事へ飛びます
紫式部 まひろ | 藤原為時 まひろ父 | 藤原惟規 まひろ弟 | 藤原宣孝 まひろ夫 |
藤原道長 兼家三男 | 藤原兼家 道長の父 | 藤原道兼 道長の兄 | 藤原道隆 道長の兄 |
藤原時姫 道長の母 | 藤原寧子 道綱の母 | 藤原道綱 道長の兄 | 高階貴子 道隆の妻 |
藤原詮子 道長の姉 | 一条天皇 66代天皇 | 藤原定子 道隆の娘 | 藤原彰子 道長の娘 |
源倫子 道長の妻 | 源雅信 倫子の父 | 藤原穆子 倫子の母 | 赤染衛門 女流歌人 |
藤原公任 道長の友 | 藤原斉信 道長の友 | 藤原行成 道長の友 | 藤原実資 ロバート |
藤原伊周 道隆嫡男 | 藤原隆家 道隆四男 | 清少納言 ききょう | 清原元輔 |
藤原頼忠 公任の父 | 安倍晴明 陰陽師 | 源明子 道長の妻 | |
円融天皇 64代天皇 | 花山天皇 65代天皇 | 藤原忯子 | 藤原義懐 |
朱仁聡 宋の商人 | 周明 宋の医師 | 三条天皇 67代天皇 | 藤原顕光 兼家の甥 |
藤原頼通 道長嫡男 | 藤原為光 忯子の父 |
◆配役はこちら→光る君へキャスト
◆視聴率はこちらから→光る君へ全視聴率
◆ドラマレビューはこちらから→光る君へ感想
文・小檜山青
※著者の関連noteはこちらから!(→link)
【参考文献】
劉永華『イラストと史料で見る中国の服飾史入門: 古代から近現代まで』(→amazon)
岡本隆司『中国史とつなげて学ぶ日本全史』(→amazon)
小島毅『中国の歴史7 中国思想と宗教の奔流 宋朝 (講談社学術文庫)』(→amazon)
小島毅『子どもたちに語る日中二千年史』(→amazon)
小島毅『義経から一豊へ 大河ドラマを海域にひらく』(→amazon)
他