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【『どうする家康』感想あらすじレビュー第4回「清須でどうする!」】
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どうする責任転嫁
歴史作品では、主人公などの悪行を誰か別の人物になすりつけ、無理にクリーンなイメージを植え付ける手法があります。
要は責任転嫁ですね。
それを大きく取り違えた、こんなニュースもありました。
上記のメディアは、字数もさほどないままにやたらとページを分割することから、とにかくPVを狙っているタイプだと思うのですが、この記事に関しては冒頭から素っ頓狂な分析がされていると感じます。
以下の部分です。
「妻や子を平気で捨てる」家康の非情なイメージを薄める丁寧なストーリー展開
前述のように、こんなもの斬新な手法でも何でもありません。
例えば『独眼竜政宗』では、伊達政宗が弟・小次郎を殺害したことの言い訳として母の義姫と伯父の最上義光を悪者に仕立て上げました。
こうした捏造は江戸時代からあったものであり、現在では否定説が強いものの、放映当時はそうでなかった説でもあります。
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あるいは豊臣家の失墜もそうでしょう。
かつては北政所(秀吉の正妻)と淀の方(お市の方の娘で秀吉の側室)が対立し、それが足を引っ張ったため豊臣家は滅亡へ向かったとされてきました。
しかし現在は、むしろこの両者は協力しあっていたとされます。
2016年『真田丸』ではそうした見方で描かれており、「女と女のドロドロ!」という古臭い見どころは回避していたものです。
主人公を持ち上げるために周囲を下げる。しかもその相手が女であればさらに効果的。こんなものは手垢がついていて差別的な手段です。
それをわざわざ記事にして細かくページ分割されて解説されたところで、何を言いたいのかわかりません。
そのためにわざわざ『利家とまつ』の主演まで務めた松嶋菜々子さんを呼んだのでしょうか。
こんなことをしているとオファーを断られるようになりますよ。
本作は、大河主演をSSRカードのように揃えていますが、ドラマとソシャゲは別物。主演を揃えれば勝てるものでもないでしょ。
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そしてこの責任転嫁手法は、ドラマの批判者にも及ぶようでして。
どうする“実はイヤなやつ”
なかなか挑戦的な記事がありました。
なんだか歴史“痛”とでも言いたげな、辛辣な語り口でして。
徳川家康の話をしているときに、その程度の名前は誰でも知っててあたり前という口調で「やっぱり酒井忠次ってさ」と言い出す人は、けっこうイヤなヤツです。
遠慮がちに「そのころに酒井忠次っていう人がいたんだけど」と説明してくれたとしても、「それがどうした」としか思いません。
歴史上の人物に詳しいことで、プラスの評価を得られると思ったら大間違い。
尊敬のまなざしを集めるどころか、ちょっとイラっとされたり、「おいおい、無理しなくていいよ」と憐れみのまなざしを向けられたりするのが関の山です。
上記の記事には、根本的な疑問があります。
歴史好きで誰かと話したい――そう思っている方が、この記事の著者のような人物に語りかけるでしょうか?
そもそも「歴史を知っていても役に立たない」とでも言いたげな論旨は非常に危ういと思います。
現在の国際問題や社会問題は、歴史でつながっていることが非常に多い。
ゆえにどこの国だって自国や世界史が学びの場で提供されているのでしょう。
「知っていて得する」というより「最低限知っておかないと危険なこともある」という意味もあるのではないでしょうか。
一例として何度でも蒸し返しますが、『青天を衝け』の描写を信じてレオポルド2世を称えようものなら、相手によっては悲しい結果になりかねません。
コンゴ自由国では手足切断当たり前 レオポルド2世に虐待された住民達
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上記の記事が掲載されているメディアでは、同時に
◆『徳川家康の人間関係学』(→link)
なる連載まであるのに、まったくもって不思議でなりません。
かつてのビジネスマンは司馬遼太郎や山岡荘八の話ぐらいしていましたが、それが無くなってしまうことが人間性の成熟なのでしょうかね。
どうするNHK……
NHKは毎年、大河の関連番組が多く放送されます。
ですので今年は家康に絡んだ番組が増えていますが、一方で、妙な感じがするのは出演者のトーク番組です。
なんだか『鎌倉殿の13人』や『大奥』のものが多いように思えます。
『どうする家康』に対する熱量が薄いというかなんというか、気のせいですかね。
◆『鎌倉殿』公式HPとSNSが2月7日で終了「ロスが未だ癒えてません」「寂しくなります」(→link)
昨年の作品に対し、熱心なファンからロスの声が上がること自体は珍しくないですが、まだ4回の放送が終わったばかりで「今年はダメだが来年は大ヒットだ」なんて言われてしまったら辛いですよね。それが以下の記事です。
◆松本潤『どうする家康』が苦戦も…吉高由里子の来年大河『光る君へ』が大ヒット間違いナシの皮算用(→link)
記事内では
「今年はもう諦めた。来年の大河に期待する」
とか
多くの芸能・ドラマ関係者たちも、「来年の大河の成功は間違いない」と太鼓判
なんて調子で、サラリと強めのダメだしがされてます。
だからなのか。今年はNHK上層部あたりから、役者が「挑戦しているから」「あたたかい目で見守って」とおねがいモードを発動しています。
◆「どうする家康」初回 まさかのBL展開?台詞回しやCG“新しい大河”NHK会長も評価「価値ある挑戦」(→link)
◆『どうする家康』大森南朋、宴会芸シーンは「優しい目でご覧いただきたいです」(→link)
こういうことを言う時、人は往々にして不満や不安を胸のうちに秘めているものです。
でも、それで、お願いされたからって何なのでしょう。
プロならプロの仕事をして「後は自由に評価してくれ!」というのが正しい姿ではありませんか。
どうする「歴戦の腐女子」
萌えますか? 信長と家康のカップリング。
パワハラセクハラ上司は、顔がよくても最悪です。本作の信長はまさにこんな感じで、イケメン同士だろうが全然萌えない――そうお嘆きのあなたに朗報です。
今年は「イケメンの松潤プリンスぶりに女性もメロメロ!」という事前予測があったんですよ。
そのスタンスって、作り手も受け手も20年遅れていませんか?
若手からベテランへと上り詰めつつある――そんな小栗旬さんのように扱えませんか?
顔だけでなく演技力で評価すればいいのに、『花より男子』なんてもう15年前ですよね。
本物の若いイケメンが好きな女性には、韓流や華流時代劇があります。
しかもブロマンスとなると、相手を思い合い、傷つけるようなことはないので、ストレスが溜まりません。
『陳情令』はおすすめです。
“忘羨”こそ最上の幸福! 陳情令と魔道祖師は“知音”の世界だった
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過ちて改めざる是を過ちと謂う
と、今週も色々書いてきましたが、これです。
◆「どうする家康」プロデューサーが語る 戦績55点の家康の「リカバリー力」とは(→link)
リカバリー力を発揮すべきは、家康ではなく、ドラマの作り手自身でしょう。
「どうかポリアンナになって大河を誉めて!」
仮にそんな発注をしたところで、どこまでリカバリーできるのか。
『鎌倉殿の13人』は画期的でした。
海外ドラマを見ているような層も大河に引き込んだ。彼らは今回の性的同意のないセクハラ全開に不快感を募らせているのでは?
とりあえず今回の卑劣なやらかしは、反省が欲しいところです。
家康なんて側室まみれなのだから、そうでないと今後手痛く跳ね返ってきますよ。
いい言葉があります。
過ちて改めざる是を過ちと謂う。「論語」「衛霊公」
ミスをして、それを認めないことこそがミスである。
ミスを認めて改善すればOKと前向きにも受け取れる。
どうか小手先で誤魔化すような、つまらない一手だけは避けて欲しいものです。
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【参考】
どうする家康/公式サイト