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【マリー・アントワネット】
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マリーとジョゼフィーヌ どこで差が?
マリー・アントワネットの死から17年後、ナポレオンの皇后であったジョゼフィーヌは離婚を言い渡され、泣き崩れていました。
そのとき娘は母親をこう言って慰めます。
「でもお母様、あなたは前の王妃よりもずっと恵まれていますよ」
確かに離婚後も皇后の位を保つことができ、贅沢も許されたジョゼフィーヌは、マリー・アントワネットよりずっとましな境遇でした。
国民から嫌われたマリー・アントワネットとはちがい、「勝利の女神」として慕われました。
それではジョゼフィーヌはマリー・アントワネットよりすぐれた女性だったのでしょうか?
そんなことはまったくありません。
ジョゼフィーヌは結婚したての数年間には愛人を作って社交界を騒がせ、ナポレオンは「寝取られ男」として笑いものになりました。
派手好き、遊び好きで、浪費癖もマリー・アントワネットにも勝るとも劣りません。
ナポレオンの家族は彼女のことを徹底的に嫌いました。軽薄だから悪いとか、浪費するから悪いというのであれば、このジョゼフィーヌだって素晴らしい皇后とは言いかねる存在でした。
それでも両者の人気は対称的。
ジョゼフィーヌにかわってナポレオンの皇后となったのは、マリー・アントワネットを大叔母にもつマリー=ルイーズ・ドートリッシュです。
彼女は大叔母には似ず節約志向だったのですが、これがまた周囲の不評を買います。
「ジョゼフィーヌ様は気前のよい方で何でも買ってくれたのに、今度の皇后様はけちくさいわね」
出入りの業者にそう言われて嫌われてしまったのです。
こうしてみてくると、贅沢をしすぎたから嫌われたと言われているマリー・アントワネットは一体何なのだろうと思えてきます。
確かに彼女は贅沢をしました。
当時の庶民からすればとんでもない金額を、豪華な衣装や宮殿につぎこみました。
しかし、彼女が贅沢をしようがしまいが、破綻したフランスの国庫は、ルイ14世とルイ15世の浪費のせいで既にどうしようもない状態。
彼女だけが桁外れの浪費をしたわけでも、そのせいでフランス国庫が破綻したわけでもありません。
マリー・アントワネットが贅沢を繰り返した愚かな女として嫌われ、ジョゼフィーヌが勝利の女神として慕われたことには、一体どこに差があったのでしょうか。
ジョゼフィーヌとは? ナポレオンが惚れて愛して別れてやっぱり愛した女
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彼女は炎上体質だったのです
マリー・アントワネットは何故嫌われるのか。
身も蓋もない言い方となりますが、彼女は炎上体質だったのでしょう。
「大衆にとって、なんとなく気に入らない存在」というのは現在もいるものです。
何かを言っただけで叩かれ「またあのお騒がせ女優が炎上!」なんてネットニュースになってしまうような人ですね。
マリー・アントワネットにまったく落ち度がなかったとは言えません。
軽薄で、贅沢好きで、空気が読めないところがあったのは確かでしょう。
しかしそのことによって、投獄されて斬首されるほど悪いことだったとも思えません。
生まれ持った炎上体質と不運が重なったことで、彼女は悪名を残してしまったのです。
そもそも前述の「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」という言葉は、ルソーが著作において「ある高貴な女性の言葉」として記したものです。
それが炎上セレブのマリー・アントワネットが「いかにも言いそう! 言ったら面白い!」という理由で広まっていきました。
炎上やフェイク・ニュースというと、ネットが普及してからと思われていますが、それよりずっと前の時代からあったんですね。
噂と悪意、燃料となる人物がいれば炎上は起こってしまう。
そんな不幸の極みがマリー・アントワネットだと言えるのではないでしょうか。
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文:小檜山青
※著者の関連noteはこちらから!(→link)
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従来の伝記やフィクションとは異なり、最新の歴史研究を反映しています。
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