てんてんてんてん!
「こんばんは徳川家康です。今日はまず、日本の歴史です」
北大路欣也さんの徳川家康。そんな衝撃的なオープニングから始まりました。
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一瞬、何かのバラエティ番組かと思ってしまいましたが……それは後述するとして、まず今回のあらすじからスッキリまとめてみましょう。
徳川の命は尽きておる
文久4年(元治元年)、渋沢栄一が徳川慶喜を待ち伏せ。
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馬でやってくる慶喜の前に躍り出て、喜作と一緒に名乗り出ます。
「渋沢栄一でございます!」
史実にもあったというこの熱血エピソード、なんと栄一は1キロ走ったそうです。
『西郷どん』でも西郷隆盛が走る姿が印象的でしたっけ。
栄一が発した過激なセリフ。
徳川の命は尽きておる――。
特にお咎めなかったのは、平岡円四郎が今回の栄一を導いた、と慶喜が気づいたからですかね。
そして子役時代の天保15年(1844年)武蔵国へ。
ざっと言いますと、栄一は、優しい父母に育てられた、好奇心旺盛な少年だということだとわかります。
父親は厳しく、母親も優しく叱る。
父・一郎右衛門は徳川家康の言葉や『三字経』も教え、好奇心旺盛な栄一は、疑問をテキパキと口にします。
「なんでだす?」
というセリフは『あさが来た』のヒロインを思い出しました。このドラマは、どういう親子像がお茶の間に求められているかを気にしているのがチラリ……。
かくして、ほのぼの親子劇で始まった血洗島の舞台。主人公一族は、麦や野菜を育て、養蚕業、藍作りをしています。
栄一は、広い畑を朝から晩まで、いとこの喜作と走っている。
人一倍わんぱくで、人一倍おしゃべり。
そんな明快な主人公像が浮かび上がってきますね。
将来の妻となる千代「守ってやんべ!」
水戸藩では、徳川斉昭が軍事教練に取り組んでいました。
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なぜ?
水戸藩沖には外国船がやってきており、危機感を募らせていた。
そして、斉昭の嫡子・七郎麻呂がいかに賢いかも語られます。
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6歳になった栄一は、学問を習っていました。
隣には、姉のなか。渋沢栄一は女子教育にも意見があったと言います。そういう素地を幼少期に見せておくという流れでしょうか。
囚人が牢に入れられるそうです。
牢に入った彼は鞭打ちか打首だと聞かされ、そこでもやっぱり「なんで?」と聞く栄一。優しく、好奇心旺盛設定なんですね。
このあと、麗しい自然の中、子役が健気な初恋アピールに取り組みます。
将来の妻となる千代ですね。
「守ってやんべ!」
とのことで、途中であやしいイケメンが出てきてビックリ。高島秋帆でした。
櫛を拾ってくれた高島秋帆ですが、そこへ無茶苦茶いいタイミングで追っ手が出てきて縛られてしまいます。
「いいお方だ」と千代は語る。
高島秋帆は寛政10年(1798年)生まれですから、劇中では46~47才ぐらいですよね。年齢的にいささか無理があるような……。
栄一の物語は始まったばかり
江戸では、十二代将軍・徳川家慶が出てきました。
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家慶は外国の脅威だけでなく、何か問題があります。嫡子・家祥に子ができないそうです。一橋家でも当主がないまま亡くなることが増えていました。
そこで斉昭の子を一橋家に推挙するそうです。
水戸からでなく、武芸に秀でているから選ばれるのだと阿部正弘が語ります。
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けれども斉昭は表向きは断ります。
簡単に話に乗るほど甘くはないということでしょうか。
栄一は鬼こと囚人に会いに行くと言い出しています。かくして牢内へ。そこにいたのはオランダ語を話す人物でした。
高島秋帆です。
彼は日本は危機にあると語る。オランダ語もできる。無私の日本人的な?
栄一は感銘を受けます。
そして江戸城では?
徳信院のもとへ、七郎麻呂がやってきました。
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14歳で亡くなった我が子に似ていると家慶は語り、徳川慶喜の誕生――。
そして弘化4年(1847年)。
栄一の物語は始まったばかりと語られます。
総評
日曜の夜は、すっきりと明るい思いでいきたい――。
そんな願いを叶えるような大河ドラマと申しましょうか。
幕末ものは低評価が続きましたが、そこは『あさが来た』の脚本家を配して、NHKとしては万全の体制というところでしょうか。
しかし、私にとっては残念でしかない始まり。
よってこの先は厳しい指摘をさせていただきたく、本作『青天を衝け』を愛されている方は、ここでページを閉じてください。
『何か違和感あるドラマだよな……』
そう感じられた方は先へお進みください。
浮き足だった軍隊は根本的な問題がある
こんな言葉があります。
兼ねて聴けば即ち明るく、偏り聴けば即ち蔽(くら)し――。
褒める言葉ばかりだけでなく、そうでない言葉も聞けば全体像がバッチリわかる。
一方で、偏って聞けばわからない。
それはこうも言い換えられる。
必ず勝利する軍勢はわからない。けれども、相手を見てこれは負けるんじゃないかということはある程度察知できる。
馬がやたらと暴れているとか。
兵士の気が緩んでいるとか。
旗の動かし方が悪いとか。
そういう浮き足だった軍隊は、どこか根本的な問題があるから負ける。
そこを攻めよ!
ということです。
このドラマは、旗の動かし方はバラバラ、兵はどこか目が虚ろ、馬は暴れ、陣太鼓は無茶苦茶に鳴っているような気配があります。
そこをまとめましょう。
視聴者を低く見積もっている
広告代理店勤務経験者が「広告は偏差値40に向けて作る」という旨のことを言い、炎上したことがあります。
本作からはそういう意図を感じます。
徳川家康が出てきて「ルーツ」なんて言いながら、ざっくり日本史を語るあたりからその敬拝を感じるのです。
これはもう芯のある大河というより歴史バラエティ路線ということでしょう。
いっそ、中村獅童さんがヒャダインさん作曲で歌って踊ってくれた方がおもしろかった気がしなくもありません。
◆歴史にドキリ(→link)
四面楚歌か、背水の陣か
このオープニングは、なかなか挑発的だとは思います。
2015年と2018年で荒れ狂った薩長推し路線とは真逆の、徳川再評価も感じます。
ただ……水戸藩というのはどうにも危険がある。
薩長はもちろんのこと、会津潘ファンですら怒らせる可能性があるんですね。
何より、水戸藩はヘイトを煽った震源地です。それをクリーンに描けばどんな危険性があるか……。
まぁ、作り手側は「視聴者もそこまで気にしない」「イケメンでなんとかなる」と思っているのかもしれません。
それだけでは誤魔化せないことが、2015年『花燃ゆ』で証明されたはずなんですけどね。
◆大河ドラマで低視聴率だった「ワースト15」、『青天を衝け』は三重苦スタート(→link)
※ワーストランキング
1位『いだてん』
2位『花燃ゆ』
3位『平清盛』
4位『西郷どん』
5位『おんな城主直虎』
発声と演技指導、演出への懸念
私はドラマの関係者・専門家ではありません。
それでも昔の兵法家のように、陣太鼓の打ち鳴らし方から異常を察知する程度の耳は持っていると思います。
そのうえで指摘させていただきますと、本作は発声と演技指導に違和感があるのです。
方言をこなすだけで精一杯で、感情があまり入っていないように思えることがひとつ。
反対に抑揚がつき過ぎていて、おかしいと思えるところもある。たとえば秋帆は牢内で一人、子ども相手にあそこまで抑揚をつけて語るものなのかどうか?
役者のくせ、個性がそのまま出ているのでは?
こう書けばよいことのようで、あまり統一されたプランがないように感じられます。特に子役やエキストラの統一性が取れていない。
もうひとつ、軍事教練でカメラがかなりブレていました。狙ったと言うよりも、ミスのようにも思えました。
要は、本作は何かが噛み合っていないように感じるのです。
やたらと走り回る演出やラブコメ初恋など。
全体的な演出が10年ぐらい前のトレンドを追いかけているのでは?
海外作品と比較すると、その古さに衝撃を受けています。
水戸藩の人間は、果たして責任感が強かったのか?
すごくクリーンアップされた水戸藩の人物像でした。
たしかに『麒麟がくる』の明智光秀だってそうだった、とは言い切れません。
幕末以降は現在の政治体制にも継続している部分がありますし、国境を跨いで状況も複雑ですが、それにしても水戸藩を美化しすぎる方向はどうなのか。
たしかに水戸藩は、領内沖に外国船が来ていて、危機感を募らせてはおりました。
ただし、多かったのは捕鯨船。
むしろ自国の漂流民が多く、それが海禁令のせいで引き取るのも難渋していた。
「せっかく日本人を助けて帰国させようとしたのに、そもそも船が近づけないよ!」
こんな嘆きもありました。
そのあたりをすっ飛ばして、外国船が砲艦外交をいきなりしていたような誘導は、歴史修正という懸念を感じます。
斉昭が嘆いていた――水戸藩が理解されない――という理由にしても、いささかキレイに描かれすぎではありませんか?
徳川慶喜が「そっか、厳しい教育で慶喜は立派になるんだね!」と思えないところが厳しい。
斉昭は大奥で性的暴行を起こして嫌われるわ。
慶喜は江戸引揚の軍艦に妾を連れ込むわ……。
そういう身から出たサビがたいへん多い、それが水戸斉昭なのですが、まるで幕府がついていけないかのように描くあたりに、悪質なものを感じます。
斉昭が悲しそうに「上様に理解されない!」と言っても、自業自得という気がします。
本作では『八重の桜』の慶喜像が最高値のまま更新されない予感がしてきました。
思考回路に漢籍はあるのか?
姉・なかと栄一が並んで学んでいました。
どういうことなのかちょっと理解が難しい。
男女七歳にして席を同じゅうせず――そういう概念はドコへ行ってしまったのでしょうか。
『八重の桜』では、そのへんを扱っていました。いや、同じ脚本家さんの『あさが来た』でも、そうだったと思いますが。
あ、6歳だからセーフか。そういうことか。
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内向型人間特殊枠は理解されない
本作の賢い人物像って、
「本当はそうじゃない人が考えた賢い子」
という印象があります。
例えば『麒麟がくる』の徳川家康、その幼年期・竹千代を思い出してください。
彼は「かわいくない」と土田御前に言われていました。無口で、好奇心旺盛かどうかすらわからない。むっつりといつもいつも何か考えていそう。それが彼の本質です。
ああいう子は、黙って思考回路をぐるぐる回して、結論に到達します。
「内向型」という定義ができるものなのですが、くだけた言い方をすれば
【陰キャ】
ということになりますかね。
そういう熟慮するタイプがいないのです。
疑問があったら自分でできるだけ考えて、まとめたうえで、確認する。
【科学的思考】
【アブダクション】
なんて言われ、海外のフィクションではかなり取り入れられていますね。
典型例が『SHERLOCK』のタイトルロール。『鬼滅の刃』の冨岡義勇も典型例です。
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もちろん大河だって負けてはおらず、2016年『真田丸』、2017年『おんな城主 直虎』、そして2020年『麒麟がくる』でも取り入れていました。
朝ドラでも『半分、青い。』『なつぞら』『スカーレット』『おちょやん』には、明確に陰キャ思考回路回す人物がおりましたね。
特に『麒麟がくる』は、アブダクション野郎がパレード状態ではありました。
光秀が書物整理しながら何か考えていたり。
斎藤 道三が槍を振り回しつつ話を聞いていたり。
光秀は一乗谷の城下町で聞き込みをして、朝倉 義景はまったく戦備えができていないと見抜くシーンもありましたね。
典型的な【アブダクション】使いです。
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しかし、日本のフィクションでは、どうにもそういう描写が理解されないようです。
むしろ
「嘘つき、こんな奴いねえ、こんな子どもいねえ!」
となり、昨年の竹千代も嘘くさいと言われていた。
そして性格が悪い、腹黒い、冷酷、空気読めないとも言われる。どうにもズレるんですね。
そのため、
「明るくハキハキした天才像」
がわかりやすく、正解とされるのでしょう。
陰キャは求められていない。物語が面白くなるだけではなく、何よりリアリティがあると思うんですけどね。
それは素敵なファンタジー、勇者は目的を見出す
いきなり牢屋に乗り込んで、国を救うと覚醒する――。
これもちょっと嘘くさいと思いました。人間の目標設定のリアリティも、近年の研究知見では変わっていく。
『麒麟がくる』では、織田信長は天下を狙っていたわけではなく、最善を尽くしていた結果そうなったと説明されています。そこがリアリティだと思います。
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自転車でも自動車でも、まっすぐ走ることを想像してください。
曲がらないよう、細かにハンドル操作しつつ走りますよね。そういうものです。人間は細かくバランスをとりながら軌道修正して進みます。
第一回から目的を設定される。RPGみたいでわかりやすいようで、実はリアリティが欠如しています。
架空キャラクターが出てくると“ファンタジー”とされますが、わかりやすいヒーロー像描写のほうがファンタジックだと思います。
近年の知見ではそうなりつつあるのです。
守株
このドラマを言い表すのであれば、よい言葉があります。
守株(しゅしゅ)――あるいはアレやね、バースの再来や。
望んでも望んでもバースは来いひん。むしろグリーンウェルが到来すんねん。
イケメン天国ならまちがいなし?
それなら2015年は成功しとったわな。
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いやいや、主役の渋沢栄一は大物で男やし!
それやったら2018年かて成功したはずやん?
『あさが来た』を待っとる?
朝ドラの再来で成功するんやったら、2019年も大ヒットしたはずやんか。
ま、厳しいこと言うてもしゃあない。歴史ファンは大受けしとるやろな。
株にぶつかるウサギさんかておるかもしれんで!
と、猛虎弁はここまでとしまして。
私が本作『青天を衝け』については、当初から悲しい予感を抱いており、そして初回放送によってそれが現実のものとなったことは最初に伝えておきたいと思います。
忖度や空気を読むことは苦手ですが、事前予測は割と得意なんですよ。大河と朝ドラでは、今のところ『いだてん』『わろてんか』以外、的中しました。
まぁ、ドラマの当たり外れの感じ方は人次第なので、とりあえず私の予測的中・不的中はどうでもいいですね。
それよりわかりやすい数字で言えば視聴率でしょうか。
とりあえず、当初の目標は、夏まで二桁維持!
その辺も指標に見ていきましょう。
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【参考】
青天を衝け/公式サイト













