麒麟がくる感想あらすじ

麒麟がくる第15回 感想あらすじ視聴率「道三、わが父に非(あら)ず」

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字を教わりたくて駒につきまとう藤吉郎

さて、駒が買い物に出かけようとすると。門にはあいつがいました。

「お駒ちゃん! これなんと読むのじゃ?」

藤吉郎(豊臣秀吉)です。

徒然草』第112段のようです。

人間の儀式、いづれの事か去り難からぬ。世俗の黙(もだ)しがたきに随ひて、これを必ずとせば、願ひも多く、身も苦しく、心の暇もなく、一生は雑事(ぞうじ)の小節(しょうせつ)にさへられて、むなしく暮れなん。日暮れ塗(みち)遠し。吾が生(しょう)既に蹉駝たり。

内容としては

「空気ばっかり読んでいたら人生終わるぜ! あいつはやばいと言われてもいいんじゃね?」

というような、そういうぶっ飛んでいこうと押してくるようなところですかね。

駒は私ばかりに聞かずに、他の人に聞きなよとつっぱねます。そもそもなんなんだ、ストーカーかというようなことを突っ込むと、毎日ここで療治をしていると知っているらしい。

薬種問屋に向かう駒に、藤吉郎はついてきます。

乱暴者に殴られた自分を救い、字を教えてくれた駒にお礼をしたい、「わしにできることがあればなんでも言うてくれ」と迫ってとくるのです。

駒は「何もありません!」と断るしかない。それでも相手はめげない。

このリア充陽キャが!

秀吉は本作でも屈指のそういう奴ですわ。これも運命だぜとゴリゴリ押してくるところは、紛れもなくそういう奴。不器用な光秀、ぶっとんだ信長とは違う。

モテそうで「キモい……」と鬱陶しがられそうでもある。そこは史実を踏まえているとも思えます。

 


これからは今川ではなく織田だ

薬種問屋に着いた駒は、菊丸に鴨子芹を頼みます。若い店員が増えて、今は命令できるようになったようです。

しかしストーキングしている藤吉郎と菊丸は険悪な雰囲気に……。藤吉郎は、しつこく駒に字を習いたいと言います。寺の隅で二日でもいいって。物売りならそんなこと要らんと菊丸は邪険に取り扱うのですが、藤吉郎は侍を目指すと言い出すのです。

なんでも尾張の織田信長は、どんどん召しかかえてくれるとか。

今までは今川様にするつもりだったけれども、織田様に行くと決めたそうです。だから一緒に行こうとしつこく駒に迫るのでした。

この草履売り!
この薬売り!

そう争う二人をおさめる駒。

藤吉郎は、自分が尾張に行ったら会えぬから、今、字を教わると主張しています。駒と尾張での再会はあるのでしょうけれども。

コミカルでゆるいようで、大事な要素はあります。

仲間の意見を聞いて今川だと決めた物売りの藤吉郎が「これからは織田!」と思うほど、その勢力が伸びていること。

そして藤吉郎は転換が早く、柔軟性があること。

生真面目に「今川様って決めたんだ」と思っていたら、彼の人生はまるで違っていたことでしょう。

転換が早いことも、大事なのです。

そうそう、菊丸は死亡退場と予測します。なるべく早急に消えてもらいたいと思われるようなことを、演じる方がやらかしてしまったことは残念ではあります。時代にそぐわぬ失言は痛い目にあうのだと、教訓を残していただけばと思います。

 


孫四郎と喜平次が斬られた!

稲葉山城に、孫四郎と喜平次の兄弟がやってきています。

光安がすれ違うと、なんでも兄の見舞いに来たのだとか。食い物すら喉を通らぬ、顔を拝してくると向かってゆきます。

光安は、ここで自分も見舞いに行かねばと思っており、怪しさには気づきません。

日野根という家臣から病状を聞き「それはいかんなあ」と素直に信じております。

高政は寝ているようです。

「太刀をこれへ」

そう言われ、従ってしまう孫四郎と喜平次。

「兄上、孫四郎にございます」

ここで突如、戸が固く閉められます。出られぬ状況になったのです。

孫四郎は家臣に切り捨てられました。

「兄上ー! 誰か!」

そう叫ぶ喜平次も、刺殺されてしまいます。

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生々しいリアリズムのある殺陣でした。高政は病床で満足げにしております。

 

「誰がこのような仕打ちを……申すな!」

このあと、泣き声の響く稲葉山城の庭に、槍を手にした道三が急いでやってきます。

槍を投げて、亡骸二体に向き合う。

「これが……孫四郎と喜平次か?」

被せてあった布を取り、我が子二人を確認します。その手に血がつく。

「誰が誰が誰が誰がこのような……誰がこのような仕打ちを……申すな! 分かった。申さずとも分かった。美濃を手に入れた褒美がこれか! わしが全てを譲った我が子が、全てを突き返してきたのじゃ。このように血塗れにして! わしが分けた血が、孫四郎の血が、喜平次の血が、このように、このように……」

我が子の血で顔を赤くして、道三は叫びます。

「高政ッ、わしの手を汚しおったな! 出てきて、この血の臭いを嗅ぐがよい! 高政……ゆるさんぞ!」

絶叫する父の姿でした。

光秀は藤田伝吾から、この恐怖の顛末を聞いています。高政の意を受けた者が孫四郎と喜平次を討ち取り、高政は稲葉良通らを城に集めたのだと。

道三は稲葉山城から出て、大桑城に入るのです。

国を二分する戦へ突入してゆく。

一方、高政は宣言しています。

孫四郎と喜平次を斬ったのは、弟ではない。斎藤道三の子を殺したまでのこと。

そのうえで「わしは源氏の土岐頼芸の子である」と言い切るのです。

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悪しき芽を摘んだだけ。ここから先は皆の力を結集し、揺るぎない国を目指すと宣言するのです。

光秀の苦悩は深まってゆきます。

 


MVP:斎藤高政と斎藤道三

今回は決裂したこの二人です。

二人には、欠落しているものがあると見えてきます。

高政には【自我】がない。

サイコパスだのなんだの呼ばれていた信長よりも、残酷なことをするようになってしまった高政。

彼は父との交流で穴が開いた自分という器に【自我】ではなく【虚像】を満たしました。

彼が本当に土岐頼芸の子であると思っていたかどうか。これは史実をたどれば、可能性は低い。けれどもフィクションであるからには、敢えてそうすることもできるわけでして。

土岐頼芸という偽り、虚像で器を満たしたことが、悲劇だと思えるのです。

偽りで満たしたから、どんな残酷なことをしても平気になっていってしまう。本来の自分とは違う虚ろな何かになってゆくのに、本人すらそれがわからない。

高政の凶悪な行動は、支配欲だけとも思えない。

何かへの復讐にも思えてしまう。いくつもの齟齬があって、彼は血に染まってゆくのです。それを演じきる伊藤英明さんがすごい。

そして斎藤道三ですが、彼は良い意味で人間臭さが出てきました。

隠居したことで見えてきたもの。そしてそもそもの隠居の理由は、彼が自分自身の心と向き合うことを取り戻したからだとは思えるのです。

それまでの道三は【共感】をかなぐりすててきた。

相手に同情を見せようともしないし、相手に求めようとすることもなかった。冷たさが見えてしまう。織田信秀のように、我が子に【共感】を見せることすらできなかったのです。

それが隠居して、やっと取り戻せてきた。

楽しい気持ちをともに味わえるからこそ、光秀や孫四郎とあんなにも楽しく過ごすことができた。そもそもの隠居のきっかけだって、深芳野相手にすら愛という心を見せられない、その罪滅ぼしと自己解放の結果ゆえに見えるのです。

一体お前はどうしたんだクソレビュアー! そう突っ込まれると前置きして。今の斎藤道三は、『アナと雪の女王』のエルサ状態、レリゴーを歌い出したようなものには思えました。

 

美濃を手に入れるため。人の上に立つために、愛も含めて感情をずっと封じ込めて生きてきた。

それを解放して、高政に何もかも譲ったのに、待っていたのが孫四郎と喜平次の死体。

エルサもありのままにいろいろ解き放って、祖国アレンデールをえらい目に追い込むのですが、美濃の道三はもっと悲惨でした……。

人の上に立つために、責任を果たすために、心を封印する。それには人間として何かを犠牲にする、悲しい宿命があるのです。解放できたらできたで、悲惨な境遇に陥りかねないと。

子どもみたいにはしゃいでいたところから、急転直下して血塗れになって怒りを炸裂させる道三。人間の運命として、ここまで悲惨なものもないと思えました。

ただただ、圧倒されます。

道三に続編はない。

彼の呼び声を聞きながら、未知の旅へ向かうこと。それは信長に託されるのでしょう。

 

総評

さて、もう書くことはないと思いたい。いいかげん脳みそしぼりすぎて疲れた。とはいえ、書けるのでそうしますが。

見かけたのです。長谷川博己さんが目立たないとか、なんとか、そういうことを。ですので、クソレビュアーとしては反論をしたい。

そもそも人間に対して「あなたは主役向き」だのなんだのジャッジすることが思いあがりだと思います。

良いではないですか。数年に一度の歌会を「楽しいからいいじゃん!」と推し進める誰かと御伽衆とか。そういう人をリレー形式でドラマにしてもよろしいのです。面白ければよいのです。

何が言いたいかってことですけどね。

本作に関して、光秀の影が薄いという意見もあるようですが。それを言うのであれば『西遊記』の三蔵法師、『水滸伝』の宋江はどうなるのか。ああいう作品は脇役が目立つんだよなあ。

そこまで古典的な話をしても仕方ないので『ゲーム・オブ・スローンズ』でも。

あのドラマのシーズン1エピソード4のタイトルは”Cripples, Bastards, and Broken Things”(障害があるもの、庶子、壊れたもの、日本版タイトル「壊れたものたち」)というものがあります。

小人であるティリオン、歩行困難となったブラン、庶子のジョン。

そうした「普通ではない人たち」に焦点を当てた秀逸なタイトルです。彼らに対して意図的にスポットを当てています。

現代にふさわしい価値観のドラマ作りとは、こういう観点だと思うのです。

それなのにラブコメ『天地人』あたりを持ち出して、

「現代的なドラマ作りとはあれだ」

と指摘されたところで、何を言っているのかということです。

だいたい『天地人』なんてもう10年以上前の作品です。

というわけで、クソレビュアーとしては「明智光秀が主人公に向かない理由」ではなく、どうしてこんな遅れた論調があるのか。そこに突っ込みたいと思います。

蜀犬吠日(しょっけんはいじつ)――日照時間の短い蜀(四川省)の犬は、お日様に吠えてしまうという意味。

人は、認識外のことについて罵倒するか、批判するか、トーンアップしてしまいがち。これはクソレビュアーの私もその通りで、トレンディ業界人の考えるドラマのノリが全くわからないゆえに、酷いことを書いてしまう。反省しています。

反論するとなると人は饒舌になる傾向もありますし、気をつけねばならぬと自戒しております。

認識外のことで間違えることも、そうなのです。

コティングリー妖精事件というものがありまして。シャーロック・ホームズの作者である、高い知性を持つコナン・ドイルが、捏造妖精写真にまんまと騙されたというものです。

ドイルはバカなのか? 間抜けだったのか? これも認識の問題でして。

当時は写真技術がまだまだ新しいもので、かのドイルですら認識不十分ではあったのです。ゆえに、騙されてしまったと。

議論考察の前に、そもそも自分の認識が十分であるかどうか。ここも極めて重要でしょう。

本作は難解で、手強い。認識外のこと、知見を取り入れているから。蜀の犬にならないよう、このご時世にいろいろ調べないといけないと痛感させられます。

でも、それがプラスになると思えばできるわけでして。

本作は難しい。

単純な狂気とか。悪とか。優劣とか。簡単に言い切れないところが難しい。

斎藤道三と斎藤義龍なんて、優劣や知能は明らかだとは思っていました。そういう単純なことでもない。そう痛感させられます。

またそれかよ、というツッコミはわかっていますが、『孫子』「勢篇」です。

乱は治に生じ、怯(きょう)は勇に生じ、弱は彊(強)に生ず。治乱は数なり。勇怯(ゆうきょう)は勢なり。彊弱は形なり。

何を言いたいかと申しますと、「評価なり正しい選択」は水のように変わるということ。

状況が変わったら、自分の前言を撤回して、コロコロ変わると言われようとも、方針や生き方そのものまで変えねばならないということです。

高政は、信長の清須城乗っ取りの時点で方針を変更できたとは思う。

あの義兄はすごい、うつけではないと認め、方針転換できたはずでしょう。

それなのに、父・道三や弟・孫四郎への意地、自分の見通し、世情の噂に固執して、破滅へ向かおうとしています。

この高政が心底怖いと思った。

こういうご時世です。自分の生き方そのものを変えねばならない時は来ている。そうしみじみと思えてしまうこのドラマは、作られるべき使命感があるのでしょう。

制作が途中でストップするかもしれないという、意地の悪い記事もある。

結果、長谷川博己さんが目立たないままになるとか……いや、彼は十分目立っておりますけれども。

確かにこの状況下です。中止はあるかもしれない。

けれども、何年かかってでも本作は完成させるべきだとは思います。それだけの示唆がある作品であるし、そうする価値はある。

来年以降を変えてでも、これは何年かかってでも作り上げていただきたいと願うばかりです。

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