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【承久の乱は宇治川の戦いに注目】
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渡河:防衛の要
ろくな施設もなく、到底、防御には向かない京都。
しかし、天然の要害はありました。
川です。
【承久の乱】では、攻め手の幕府軍が川を渡るために苦労したとされます。
川に入った将兵は防御も攻撃もできなくなってしまうため、基本的な要害とされるのです。
『鎌倉殿の13人』前半戦でも川を挟んだ対陣はありました。
源行家が総大将となった戦い。
源頼朝の半弟であり、阿野全成や源義経とは父母が同じである、義円が参陣しました。
ドラマにおける合戦シーン自体は短かったですが、川で掴まれ、引き摺り込まれるようにして討たれる義円の姿が衝撃的でした。
甲冑をつけたまま川に入り込めば、まず助かりません。そんな危険性がまざまざとわかる場面でした。
水鳥の羽音に驚き、平家軍が戦うことなく撤退したとされる戦い。
『鎌倉殿の13人』では、北条時政と三浦義澄のしょうもない言い争いにより水鳥が羽ばたき、それがキッカケとなって平家軍が崩れるという場面でした。
あれも平家軍が斥候(偵察部隊)を出せる程度の兵法を知っていれば、起こるはずのないミスです。
『鎌倉殿の13人』の【承久の乱】で川に入るシーンがあれば、義円の姿を思い出すとよいかもしれませんね。
入ったら死ぬかもしれない。それでも渡るにはどうするのか?
合戦シーンにおける見せ場のひとつとなるはずです。
宇治川を渡れ!
承久の乱では、京都へなだれ込む幕府軍の前には、宇治川が立ち塞がりました。
非常に重要な一戦。
まずは概要を記しておきますと……。
問題となるのはHowです。一体どのようにして攻めたのか?
泰時自身は陣を張り、翌朝攻めようとしていましたが、三浦泰村と足利義氏が勝手に攻めてしまいます。
宇治橋の上にいた敵は雨あられと矢を撃ちかけてきて、どうしようもありません。橋の上には悪僧(僧侶)がおり、渡ることはできません。
つまり朝廷軍にしてみれば、橋さえ守ればよく、敵の渡河は防衛側に有利。
大雨が降る中、泰時は考えました。
ただでさえ不利な状況なのに、大雨で増水していて、どうすべきか?
泰時は水練に長けた芝田兼義に、泳いで渡れないか探るように命じます。
と、兼義はさっそく土地の翁を捕まえ、浅瀬の位置を聞き終えると、翁を殺しました。
兼義は刀を咥えて川を渡り、渡河スポットを泰時に知らせます。
翌14日、佐々木信綱が馬で中洲まで渡りました。その後に御家人たちも続きますが、流されて溺死する者も多数。
泰時は嫡男の北条時氏を招き寄せ、川を渡るように命じると、我が子のみならず自らも渡河を試みようとします。
しかし総大将になにかあっては一大事ですから、春日貞時が引き留め、これは実現しません。
それでも泰時の子である時氏が川を渡ったのは効果てきめんでした。
中洲で佐々木信綱と合流する様をみて、武士が奮起しないわけがありません。
民家を破壊して筏も作られ、攻め手はついに川を渡るのです。
この戦いは【承久の乱】最大の激戦とされます。
『平家物語』の記述を模した誇張もあるのでは?と指摘されるところですが、ともかく、これで大勢の決着はつきました。あとは敗軍の掃討戦となります。
なぜ宇治川の戦いが激戦となったか?
防衛側が天然の要害を効率的に使えたことが、その最大の要因でしょう。
戦争の仕組みが変わるためには、数十年間を戦い続ける乱世が必要です。
源平合戦こと【治承・寿永の乱】はわずか6年間。その後、奥州や鎌倉で発生した戦いも、短期で決着がついています。
防衛施設が堅固になり、兵法が浸透し、戦術も変わってゆく――それは鎌倉幕府が滅び、南北朝時代の訪れで加速しました。
それだけに戦国時代とは異なる平安末期から鎌倉時代の戦闘が見られる『鎌倉殿の13人』は貴重な機会でした。
今後も、同時代を舞台にした映像作品が作られ続けることを願いたいところです。
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文:小檜山青
※著者の関連noteはこちらから!(→link)
【参考文献】
坂井孝一『承久の乱 真の「武者の世」を告げる大乱』(→amazon)
樋口隆晴/渡辺信吾『図説 武器と甲冑』(→amazon)
近藤好和『騎兵と歩兵の中世史』(→amazon)
齋藤慎一『中世武士の城』(→amazon)
他