光る君へ感想あらすじレビュー

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『光る君へ』感想あらすじレビュー第11回「まどう心」

家族に出迎えられたまひろの父・藤原為時

ぐったりと倒れ込むと、花山天皇の退位と、式部丞(しきぶのじょう)を罷免され、蔵人を解かれたことを告げます。

まひろが退位の理由を尋ねても、為時にも理解はできていない。

19歳で出家した上に、新たな帝はわずか7歳。これからは摂政様こと藤原兼家の思うがままだと嘆くしかありません。

弟の藤原惟規は能天気に、また式部丞になれるかもしれないと言うものの、為時は暗い顔を浮かべるだけ。

もう除目に望みはない。

と、ようやく惟規も事態の深刻さに気づき、どうなるのかと為時に問うと、こう返ってきました。

「父は何もできない……死ぬ気で学問に励め」

絶望した顔をする惟規。姉であるまひろも困惑しています。

藤原惟規
紫式部の弟・藤原惟規は実際どれほど出世できたのか モテる男だったのか?

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帝はなぜ譲位した?

内裏では貴公子たちも困惑しています。

藤原斉信が、帝はまだ19だったと言えば、藤原公任藤原忯子が亡くなって以来気落ちしていたことを指摘します。行成もわけがわかりません。

そもそも、あの夜に何があったのか?

公任は藤原道長が明け方、父の藤原頼忠に何かを知らせにきたことを回想しています。物陰から、いつになく厳しい顔をした道長を見たのだとか。

「やるなあ」とこぼす斉信に、誉めている場合かと返す公任。

と、そこへ道長が「遅れたか」と言いながらやってきました。

藤原行成が写してきた『詩経』を渡すと、続けざまに斉信が帝をどうやって連れ出したか尋ねる。

「聞かない方がいいよ。もう終わったことだ」

道長は、どこかふてぶてしくなりました。

さて、ここで貴公子が揃うと、公任は王維(おうい・盛唐の官僚であり詩人)の新楽府(漢詩の形式)話をしようとしています。

道長の隣にいて、顔つきが変わったと気にしている行成。

彼が書いてきた『詩経』を喜び、良い字だと道長も満足げです。

能書家である行成は、こうした写しをさせられる機会が多かった。人間高級プリンター扱いですね。

かな書道が光る『光る君へ』「三跡」行成が生きた時代

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このころは宋版印刷が始まった頃です。輸入がぼちぼち始まり、上流貴族がようやく手にするようになれた時代ですから、まだまだ筆写が主流。

印刷技術が発達した時代となると、プロの書道家は一文字いくらのような価格設定をし、注文を受けて売り捌くようになります。

しかし、それはまだ先のこと。行成の時代は、何かと理由をつけて書かせようとします。

書籍の筆写や、恋文などなど。筆跡欲しさに行成に恋文を送る人は多かったとか。

なお、写経は本人がやらなければ意味がなく、道長の自筆も残されております。

◆道長自筆写経が国宝に ホケノ山古墳の出土品、法隆寺の仏像は重文へ(→link

 


摂政様の周りを飛ぶ虫

まひろは倫子の元へ向かい、丁寧に頭を下げます。

「どうなさったの」

そう声をかける倫子に、突然の訪問を詫びると、暇だからよいと返され、話を続けるまひろ。

話題は父のことでした。失職してしまった件について、どうにかならないかと訴えます。

父は裏表のない真面目な人で、学識もある。新帝にどうにかできないか?と左大臣に訴えて欲しい。

倫子も強張り、それは難しいと言います。すべては摂政様次第で……だからこそ、左大臣経由で頼みたいとまひろは訴えるのですが、倫子はさらにキッパリと返します。

摂政殿の決断は帝の決断。左大臣が覆すことはできない。

力になれないことを詫びると、まひろは摂政様にお目にかかるしかないと言います。

「おやめなさい。摂政様はあなたがお会いできるような方ではありません」

倫子はそう言い切るのでした。

藤原兼家に「為時の娘が来ている」と告げられます。なんでもお会いするまでは帰らないと裏門に座っているとかで、追い返すべきかと提案されると、兼家は会うことにします。

「ここがあの人の家……」

そう思いながら、邸の中を歩いて行くまひろ。なんとも立派な家ですね。

「面(おもて)をあげよ」

兼家はそう告げると、笑みを浮かべながら「賢いと評判の為時の娘か」と声をかけてきました。

まひろが丁寧に挨拶をし、父の職についての訴えを始めます。

摂政様のために長年尽くしてきた。不器用であっても、不得手な間者を務めてきた。それなのになぜ何もかもが取り上げられねばならないのか。

せめて官職を与えていただけないのかと訴えると、兼家はねちこくこう返します。

「その方が誤解しておるのう。わしのもとを去ったのはそなたの父の方であろう」

それはまひろもわかっています。長い間ご苦労であったと、慰留しなかったこともわかっています。

兼家はそこまでわかっていながらどの面を下げて参ったのかと聞いてきます。

去りたい者は止めない。しかし一度でも背いた者に情けをかけることはない。目が黒いうちは、為時が官職を得ることはないと言い切り、兼家は無情な声で「下がれ」と追い払うのでした。

鎌倉から去った結果、上洛途中で一家ごと討ち果たされた『鎌倉殿の13人』の梶原景時よりは穏当な処置といえましょうか。はたまた一度出奔した本多正信も受け入れる、徳川家康が偉大なのか。

真田丸』の正信をみていると、そうするだけの価値はあると思えましたね。

家康の時代であれば、儒教倫理も普及しています。

娘が父のためを思い訴えるならば美談となり、ああもそっけなく追い払うことはないでしょう。家康時代はそうでなくとも、綱吉や吉宗まで時代が下ればそうなっていると思えます。

そこへ道長が帰ってきます。

父が客人と面会していると聞くと、向こう側の廊下をまひろが歩いている。その姿を追いかける道長。まるで天女を見たような喜びがあります。

しかし、客人は誰か?と尋ねる道長に対し、父の兼家は吐き捨てるよう言います。

「虫ケラが迷い込んだだけじゃ」

道兼は、刀で刺殺した“ちやは”のことを虫ケラだと罵った。このとき道長は、兄に食って掛かっていった。

今回の兼家は、まひろ自身を虫ケラ扱いしている。

しかし、道長は何もできず黙っているだけです。

 


「妾」にするのによい女

まひろを訪ねて、藤原宣孝が家にきていました。

藤原為時は高倉の女のもとへ出かけています。

宣孝は、摂政・兼家に直談判しにいったまひろの度胸を誉めています。すげなく追い返されたと言っても、慰めを一言言うだけの俺よりもずっと肝が据わっていると感心している。

まひろは次のことを考えています。

何かしなければ……働かねば……そう思い詰めていると、宣孝が婿取りを提案。

北の方にこだわらなければよい。博識だし、話も面白いし、器量もそう悪くはない。誰でも喜んで「妻」にするであろう。そうなれば働かなくていいし、為時は好きな書でも読んでいられる。

心当たりはないか?と聞かれ、「無い」と即座に否定するまひろ。彼女は「妾(しょう)」になりたくないと抵抗感を示します。

宣孝だって複数の妾がいて、それぞれ愛していて、文句は言われないんですと。言われても気づいていないだけかもしれませんけどね。

男は、そのくらい度量はあるものだと言い切り、若くて自分のような男はいないか?と言い出します。

そして、勝手に探してみると請け負い、「為時には会えなくてもまひろとはよい話ができた」と言いながら、さっさと帰っていくのでした。

宣孝の提案はとんでもないようで、現実的といえます。

生々しい話になってきました。まひろは当時で結婚適齢期。宣孝が自分の妾にすると言い出さないのは、年齢という好条件があるからとも思えます。これ以上、まひろが年齢を重ねていくと、状況は変わってくるでしょう。

しかし彼女はまだ考えてしまう。道長が長い黒髪を撫でたあの手のことを……。

道長も、弓の鍛錬をしながら、まひろの白く柔らかい肌を思い出してしまいます。そんな状態で弓を引いても、当たるわけがなく、大きく的を外してしまう。

そして父の言葉が心のうちに出てくる。

「虫ケラが迷いこんだだけじゃ」

魅力的な女の肉体と、父の言葉が重なることで、ドス黒いものが見えてきます。自分の力を利用すれば、あのことがもう一度叶うのではないか?

源氏物語』の光源氏も、そんなサイテーなことをよくやらかします。

朧月夜相手には「助けを求めても無駄だよ」と己の権力をひけらかし、ものにしていました。

物語の成立背景を描くことで、生々しくなる世界がある。実におそろしいドラマです。

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それにしても、ここの弓をご覧ください。

『鎌倉殿の13人』の坂東武者仕様よりも弱いとわかるでしょう。それに坂東武者が戦の最中に女の柔肌を思い浮かべていたら、最悪死にます。

女にモヤモヤして弓を外すなんて、とんだ恥をかくわけで、野蛮なようでいながら武芸については真面目。

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道長が甘ったれたボンボンだということでもありますね。

坂東武者は源頼朝の好色ぶりに振り回され、呆れていたものでした。

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