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【『どうする家康』感想あらすじレビュー第27回「安土城の決闘」】
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天下の興亡は匹夫も責め有り
今年の大河ドラマは何が悪いのか。
二週連続こう言います。
天下の興亡は匹夫も責め有り。顧炎武『日知録』
こちらの提灯記事をご覧ください。
見出しの時点で私は顔がひきつりました。
記事中では、以下の赤字部分ですね。
町娘に囲まれながら薪割りをする直政は「私は見た目は華奢だが力はあるのさ。まっ、九郎義経と同じだな」と源義経を引き合いに自身の力を自慢。於愛からは「またおなごをたぶらかして! いい加減にしなされ!」と叱責されたが、「於愛様、誤解です。私がおなごを好きなのではなく、おなごが皆、私を好きなのです」と軽口をたたくのだった。
この「九郎義経と同じ」という発言がツイッター上では話題に。前大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で源義経を演じた俳優、菅田将暉(30)は16年の大河ドラマ「おんな城主直虎」で井伊直政を演じていたためだ。視聴者からは「そういう意味じゃないけど強ち間違ってもない」「菅田くんと李光人くんが繋がる感じエモい」「現・万千代の口から『九郎義経』の名前が出てきたのなにげにアツいよね」「大河民ならピンとくる」「いずれ板垣李光人さんにも義経やって欲しい」「完全に狙ってたでしょ。 井戸の底の武衛な民を喜ばせようとしてたんでしょ」などと反応する声が上がっていた。
義経のことを「華奢だけど力はあるんだよね」とあっさり語っています。
つまりは、脚本家もメディアも、(実在するならば)Twitterの声も、誰も「義経の弓流し」を知らない。
屋島合戦のとき、義経は愛用している弓を流してしまい、危険を承知でそれを拾います。
なぜか?
義経は力が弱い。誰かに弓を拾われたらそのことが知られてしまう。それを恥じて拾いに向かったのです。
この場面は、あまりに有名かつ定番であるせいか、『鎌倉殿の13人』では出てきませんでしたが、義経の腕力が兄たちよりずっと弱いとわかる場面は以下のように用意されていました。
◆義円の弓の腕前が、自分よりも上だとして義経が拗ねる(鎌倉11回)
鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第11回「許されざる嘘」
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◆頼朝の弓を義経が引くとき、非力なために腕が震えている(鎌倉14回)
鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第14回「都の義仲」
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ああいう場面を見ていると、義経はやっぱり腕力に自信がないんだなぁ、そこが劣等感なんだなぁと思えてうれしかった。
弓流しをあえてやらずとも表現できるのが非常に素敵だった。
さすがは三谷さんだ、歴史って楽しいな、という喜びがあった。
それが今年は、義経が腕力自慢をしているという時点で、もう決定的に受けつけない。ふつふつと怒りが湧いてくるレベルです。
個人的な話ですが、私の人生最古の推しは源義経であり、小学生の自分だって、こんなニュースを読んだら「ちがうよ、義経は力が弱いよ!」と怒ったと思います。
おそらく今だって、そういう気持ちの子供もいることでしょう。
歴史の積み重ねを無視して、“井戸の底の武衛な民“だのなんだの、そういう声欲しさにこういうことを書く。それを肯定的に取り上げて提灯記事を書く。何もかもが嘆かわしいとしか言いようがありません。
そしてさらなる疑念も湧いてきます。
彼らは本当に大河を見ているのか?
歴史を楽しんでいるのか?
それとも、大河ファンであると自認する者同士で褒め合い、じゃれあうことを楽しんでいるのか。
今はインスタ映えなんて言葉がありますね。何かを食べ、味わうことではなく、SNSで映えることを重視する。
大河ドラマにそうした層がいても自由ですが、問題は、制作サイドがそうした反応ばかりに目を向けることです。
結果、ドラマが場当たり的なウケ狙いばかりになったら、本末転倒にもほどがある。
となると、今年の大河の低迷は、もはや作り手だけの問題じゃないという気がしてきます。
私は『麒麟がくる』が大好きですし、『鎌倉殿の13人』を大傑作だと思っています。
作品ごとの思い入れは当然ありますが、大河枠ごと好きか?と問われたら、「いいえ、ファンではありません」と答えます。
大河ファンだのクラスタだの、そういう枠組みに囚われることには危険性を覚える。
要するに、私は大河ファンではありません。
豺狼当路
豺狼路に当たれりいずくんぞ孤狸を問わん。『後漢書』「張綱伝」
山犬や狼のような奴らが問題の中枢で権力を握っているのに、どうして小悪人の罪を問うことができる?
そうはいっても、この駄作の責を視聴者が負うのもどうかと思う。
どうしてこんなひどい作品なのか?
幸いにも、狼は姿を見せているようでして。
◆ 「一番いいところを一番素直に届ける」NHK大河「どうする家康」制作統括・磯智明チーフ・プロデューサー (→link)
◆【どうする家康】磯智明プロデューサーが語るドラマ出演者の素顔 シンポジウム記録②(→link)
磯プロデューサーの発言に注目します。
非常に饒舌な方で、ここまで多くを語る裏方さんて、そうそういませんよね。
それに脚本家がふわっとしたことしか語らないのに、磯プロデューサーはプロットの根幹部分のようなことをしばしば明かす。
作品の中に、彼の意識が相当入っているのだろうと思えます。
それにこういうインタビューにしろ、肝心な芯はなく抽象的。
『鎌倉殿の13人』は、多くのスタッフがどこに注力したのか、狙いを含めて語るラジオ番組がありました。私も聞いていました。
複数の証言から見えてきたのは、日本版『ゲーム・オブ・スローンズ』を目指しているということ。
具体的でいいと思うし、実際それを狙ったと思える箇所は多く、成功していたと思います。
ところが不思議なことに、メディアでは三谷さんの過去の作品は引っ張ってくるのに、『ゲーム・オブ・スローンズ』に言及する記事がほとんどありませんでした。
結局、日本のメディアは、海外のことなんて度外視しているのではないか。
去年そう思ったものですが、今や確信に変わりました。それがこの問題です。
◆国連人権理、24日から訪日 ジャニーズ性加害調査も実施(→link)
◆「70年前、ジャニー氏から自室で性被害」俳優の服部吉次さんが証言(→link)
◆ 「その日の夜、ジャニー喜多川氏は5人を次々に襲った」…俳優服部吉次さんらが証言した70年前の性被害(→link)
言語道断で言葉にもなりません。
そう思うと同時に、自分はこの問題を以前から知っていたのかと自問自答しました。
ジャニー喜多川氏の訃報を見ている時、しらけた気持ちだったことは思い出します。
海外のニュースでは性的虐待疑惑をふれているのに、どうして日本はそうでなく、英雄扱いなのか。汚い。そう感じてはいました。
とはいえ、報道される現実はそれをはるかに上回る規模であり、言葉を失うばかりです。
点滴穿石
けれども、大河ドラマは平然と放送されています。
そして放映後、ジャニーズと懇意のメディアとライターにより、じゃんじゃんと提灯記事が量産されます。
まるで巨大な岩のようにすら思えてくる。これは一体どういうことかと。
出演者の一人が「容疑者」となった段階で、『鎌倉殿の13人』は配信されなくなったのに、大河はよりにもよってまたジャニーズ俳優同士が暴力的なBLを繰り広げている。
よりにもよって公共放送が、堂々と看板番組でこんなものを流していたら、何の説得力もない。この家康が愛だの正義だの、よくも言えたものです。
ジャニーズが関わっただけで全てお蔵入りにできないのだとすれば、それはもっともなことだと思います。
『鎌倉殿の13人』のような別の作品も含めて、どうするのかルールを決めて説明すべきでしょう。
それすら怠り、漫然と駄作を流すNHKに倫理はあるのでしょうか?
答えは「あります」。問題は、それが守られているのかどうか。
◆「NHK倫理・行動憲章」「行動指針」(→link)
それにどんなに小さな声だろうと、発していれば岩に穴が開けられるかもしれません。
泰山の霤(あまだれ)は石を穿(うが)つ。『漢書』「枚乗伝」
泰山にふる雨の滴は、石に穴を開ける。
とりあえずここに、意見を送ってみましょう。
◆NHK みなさまの声(→link)
どうする家康全48回の視聴率速報&推移! 過去7年分の大河と比較あり
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【参考】
どうする家康/公式サイト