鎌倉殿の13人感想あらすじ

鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第33回「修善寺」

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鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第33回「修善寺」
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頼家そして善児の死

猿楽の笛が響く中、頼家と泰時が舞台を見ています。

そのころ、鶴丸は猿楽衆の死体を発見。泰時も異変を察知し、舞台へ上がります。

すると善児が化けていた猿楽衆が立ち上がりました。

「あんたは殺すなと言われている」

泰時にそう告げる善児。トウと善児二人がかりでは泰時は敵わず、戦闘不能になります。鶴丸も助けに駆けつけました。

善児が頼家へ向かっていきます。

しかし床に落ちていた「一幡」の札に一瞬気を取られ、刺されてしまう。

「わしはまだ死なん!」

そう刀を構える頼家。

トウが背後から近づき、頼家にとどめを刺しました。

雷鳴が響く中、泰時は頼家の死に気付きました。

「うわあーっ!」

泣き叫ぶ泰時です。

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腹を刺された善児は雨の中にいます。

「しくじった……」

そう悔やんでいますが、確かにその通りでしょう。相手にした人数が多すぎた。一幡に気を取られた。そして……。

背後からトウが刃で貫きました。

「ずっとこの時を待っていた。父の敵!」

善児と向き合い、さらに突き刺すトウ。

「母の……敵……」

そう師匠にとどめを刺し、立ち去る弟子。

修善寺で父母を殺された少女は、修善寺で親の敵を討ちました。

11年という歳月は、少女が刺客になるには十分な時間ですが、恨みを解消させるには短過ぎたのです。

 


MVP:頼家・善児・トウ

選べません。

頼家は結局、最期の最期まで、その浅さを見せてしまったところが気の毒といえばそう。

あんな幼稚な嫌味とか。権威を見せつけるとか。手の内を明かすこととか。

短慮なことをしなければ死なずに済んだだろうに、そういうところが父より遥かに素朴な人だった。

母のように善良で素直ならば、また違ったかもしれません。

頼家は映像化の機会も多く、神経質な貴公子というイメージがあります。そんな従来の像を説得力を持って再構築してきてお見事でした。

そして善児とトウ。

思えば修善寺で、善児が気まぐれから弟子にしたトウ。

親を目の前で殺しておいて、人生をこんなふうにしておいて、敵討ちをされないと思う方が甘いとは思えました。

善児も「へえ」と一言だけで仕事を引き受けつつ、何かが溜まっていたのかもしれない。

一幡でそれを自覚させられて、あとは転落あるのみ。そんな悲しさがありました。

そしてトウの敵討ちは、義時の矛盾も浮かび上がらせました。

兄の敵討ちすらしないとはどういうことなのか?

義時は善児に感情移入してしまったのでしょう。

 


総評

感情移入、愛着――これが大事だと思えた今回。

義時が善児を殺せなかったのは、相手に感情移入したから。

後鳥羽院は「鎌倉なんて田舎者」と馬鹿にしきっているようで、名付け親になった実朝にそれなりの愛着が湧いています。

その実朝は、三善康信が転びながら去っていくところで、気遣う目線を見せていた。

泰時は頼家に感情移入しているからこそ、いてもたまらず、助けに行く。

そういう感情移入がまるでない義村は、頼家に頼まれようがそっけなく突き放す。

それでも彼からすれば「無為の人生を送るのは辛かろうと感情移入してやったぜ」となるのかもしれない。

重忠は舅とその一族に愛着が当然あったものの、武蔵の件をめぐって何か冷たい隙が湧いている。

政子は我が子二人をとてつもなく愛している。

実衣は我が子・頼全を殺した源仲章を、使えるからか受け入れている。感情に蓋をして利害を考えること。彼女ならそれができるのかもしれない。

トウは師匠への恩愛と両親へのそれを秤にかけて、両親を選んだ。弟子がそれができたのは、善児が一幡に感情移入し、隙が生まれてしまったから。

そういうグラデーションがあって、感情を捨て去ることはできない。

運慶は義時の顔にそれを見抜いています。

誰に対しても平等に愛情は持てないし、感情移入もできない。またそんな感情を捨て去ることもできない。

頼家を殺すという極限の状況の中、善児とトウという架空の人物を出して、さらに奥深くしてきました。

トウが善児を殺す機会は、ドラマで描かれていないだけで、他にも結構なチャンスがあったと思います。

それでも感情の蓋をしていたんでしょう。

まだ技芸が未熟な時に感情をむき出しにすれば殺される。修行して一緒に暮らすうちに、相手への恩愛も生じてしまう。

それが修善寺という、親が死んだ場所のせいで蓋が開いたのか。

殺したあとでトウは自分が理解できなくなるかもしれないし、後悔するかもしれない。

この作品や時代がわかりにくいのって、道徳概念や教養の未整備もあると思えます。

鎌倉時代がくだると坂東武者たちも仏典を読み、和歌を詠んで、感情と向き合いながら表現できるようになった。

和田義盛も仏教を学んで賢くなっていますよね。

いろいろ学ぶ過程で、自分の感情はこういうものだと理解できるし、道徳概念も身に付きます。

義時は善児を殺さないわけです。

しかし、敵討ちが根付いていて、殺さないのは恥ずかしいという概念を強固に持っていればああはならないと思えます。

未整備の感情と道徳観が、毎週こちらをどこかに引きずりこんできます。

私事で恐縮ですが、私は伊豆修善寺観光の帰りに買った反射炉ビール義時味がおいしくて、混沌とした思いを味わいました。

なんで、よりにもよって修善寺で義時土産を買っているのか。しかも美味い。ものすごく感情の整理に戸惑います。

修善寺という場所そのものがそうで、今はレトロな温泉街になっていてのどかです。

惨劇を思う気持ちとあの和やかな佇まい。そういうさまざまな感情が入り乱れることこそが、このドラマの楽しみなのかもしれません。

修善寺観光はオススメです。

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三谷さんが脱稿しました

朗報です。

まだ8月末なのに、脱稿したそうです。

◆「鎌倉殿の13人」三谷幸喜氏が脱稿報告「決定稿まではまだなんですけど」4月から「Nキャス」掛け持ち(→link

三谷さんはおもしろおかしく報道されているほど、脚本が遅くないと思っていました。

決定稿にするまで手を入れるから、そのせいでギリギリまでかかるのだろうけれど、プロットの仕上げそのものはそう遅くないだろうと。

これはドラマを見ていればわかります。

今回は頼家の暗殺が、風呂場でなく猿楽の舞台でした。

あの猿楽は手間と時間がかかるため、いきなり決めてできるものとは思えないのです。

本作は作りに時間がかかるような場面が多い。

小道具や衣装も手間暇かけています。時間にある程度余裕がなければできないはず。

ですので、こういういい加減な報道に私は割と苛立っていました。

◆三谷幸喜の『Nキャス』MC就任に大河スタッフが顔面蒼白!脚本が間に合わない!?(→link

三谷さんご本人の怒りは、私どころじゃないでしょうけれど……代わりに憤りをぶつけさせていただきます。

そもそも、そこまで脚本が決定的に遅い人が、三度も大河に起用されるものでしょうか?

近年で脚本が遅れていると判明したのは『青天を衝け』です。脚本家が歴史に馴染みがないか、好きでなかったのだろうと感じました。

大河にはガイドブックがあり、おおまかなプロットが放送前にわかります。

そのプロットから根本的な部分が変わっているとなると、あまりに時代考証がおかしいと判定されたため、その後に修正されたと想像できます。

去年はそういう妙な変更やカットが多かったんですね。

事前にガイドを読んで「これをそのまま放送したらまずいだろう」と思っていると、実際の放送ではカットされて、どうでもいいシーンが追加されていた。

一例として、長州征伐西郷隆盛です。

天狗党を大量処刑したことと比較して、流血を回避した西郷隆盛を褒めるニュアンスのプロットがありました。

しかし、戊辰戦争西南戦争を引き起こした西郷が流血を避けるなんて、まずありえない話。

幕末史の基礎でしょう。

ゆえに、放送時はそうしたニュアンスの誘導はバッサリ消えていました。

小道具、衣装、VFXの処理もおかしかった。

店のインテリアとして「風神雷神図」の屏風があった。

本物のわけがありませんし、偽物にせよ店にあんなものは置かないでしょう。質感からして大型プリンタで印刷して貼り付けたようなのっぺりとしたものでした。

書状や書籍も、きちんと筆で書いたものではなく、印刷したのでは?と思えるものがしばしば見えた。

そういう細部に宿る混乱で、脚本のペースは浮かんできます。

昨年は、ただの手抜きではない、不吉な予兆がいくつもありました。

そういう細部を見ていれば、今年はやはり盤石。

来週以降も期待して待っています。

※著者の関連noteはこちらから!(→link

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文:武者震之助(note
絵:小久ヒロ

【参考】
鎌倉殿の13人/公式サイト

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