藤原忯子

画像はイメージです(源氏物語絵巻/wikipediaより引用)

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藤原忯子~花山天皇に激しく寵愛された"女性像"は源氏物語に反映?

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下心で、娘にセクハラをはたらく

そんな夕顔には4つの娘がいました。

夕顔の乳母の夫が筑紫に赴任することとなり、娘は連れて行かれます。彼女は美しく成長し、「玉鬘」という美女となります。

噂を聞きつけ求婚者が群がるものの、乳母は彼女を自分の孫と偽り、断り続けます。そのほとんどは撃退できたものの、悪質ストーカーじみた大夫監(たゆうのげん)はしつこい。

乳母と玉鬘一行はなんとか上京します。

そこで夕顔の縁者のつてを頼り、光源氏に救われました。

思えば母の死から、長い年月が経過しています。

あのころはまだ若いイケイケボンボンだった光源氏も、イケオジに進化。悪だくらみもパワーアップしており、彼はこう企みます。

玉鬘を自分の娘と偽装する。そのうえ美女となれば、権力と美女という一石二鳥を求めて男どもが群がるだろうと。

「玉鬘の求婚者が湧いてきて絶対盛り上がる!」

って、なんなんでしょうか、その平安リアリティショーじみた発想は。あまりに酷いものがあります。

しかも、玉鬘宛の恋文を勝手に読んで返事を指示するわ。玉鬘の美貌に辛抱たまらず愛撫するわ。

玉鬘は絶望します。

「大夫監よりはギリでマシにせよ、この人、ありえないんだけど……」

そうかと思えば、光源氏は玉鬘の入内を目論むわ。光源氏の子・夕霧もちょっかいを出してくるわ。

玉鬘にとって、この世はまるでセクハラ地獄

そんな玉鬘をめぐる「玉鬘十帖」は、意外な勝者による勝利を迎えます。

血筋は申し分ないものの、色黒で髭があるマッチョ系。すでに妻がいて、しかも彼女は精神に問題を抱えている。

そんな難ありの髭黒が、玉鬘の女房の手引きにより、彼女を強引に妻にしてしまうのです。

意外なダークホースの勝利に、光源氏はじめとする色白貴公子はしてやられてしまったのでした。

髭黒は真面目で堅物でマッチョタイプであり、典型的なイケメン貴公子でもありません。

とはいえ、チャラついたあの連中よりはマシだったのではないか?

そんな問いかけすら感じます。

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愛か? 命か?

光源氏のモデルは、藤原道長はじめ、複数いるとされます。

そこに花山天皇を含めることは、まずないでしょう。

しかし、彼の理想的な部分ではなく、やらかしたところを見ていくと、実はあの花山天皇と近いのではないかと思えてくることも確かなのです。

帝に愛されることは、当時としては最高の幸せのように思えます。

しかし、それは死と隣り合わせでもあります。

何も桐壺更衣のような嫌がらせにあわずとも、妊娠と出産は女性の肉体に多大な負担をかけます。

ましてや藤原忯子のように、まだ若いとなるとより危険性が高まります。

帝の子を産むために入内することが彼女たちの運命ですが、栄光と引き換えに命を落とす可能性とは常に隣り合わせなのです。

そんなリスクがあるのに、愛こそ素晴らしいと惑わせる世界に、紫式部は挑戦状を叩きつけたように思えます。

命を賭けて愛したい――なんて美しく語りはするけれど、それを本気で実現できると思っているの? そう問われているように思えます。

源氏物語』を読んでいると、まるで甘い毒を飲んでしまったような気持ちにすらなるのも、作者の狙い通りなのかもしれません。

『光る君へ』は、『源氏物語』ではなく、その成立背景が描かれます。

史実を見ていくと、悲しみと苦しみを抱えた人々の顔が浮かんでくる。ドラマになることで、血と肉を与えられたその顔は、見る側に生々しい実感をもたらす。

『光る君へ』の忯子を見てから『源氏物語』をめくれば、桐壺更衣の苦しみがより生々しく思えるかもしれません。

それこそが、あのドラマの狙いではないでしょうか。

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文:小檜山青
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【参考文献】
倉本一宏『敗者たちの平安王朝 皇位継承の闇』(→amazon
橋本義彦『平安貴族』(→amazon
大塚ひかり『源氏の男はみんなサイテー』(→amazon

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