麒麟がくる感想あらすじ

麒麟がくる第17回 感想あらすじ視聴率「長良川の対決」

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麒麟がくる第17回
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一旦城を離れよ! 再び城を持つ身になれ

光安は続けます。

「城を失うのはつらい。亡き兄上に申し開きができぬ。されど明智が滅びつころは避けねばならぬ」

「これはそなたの父上の声と思うて聞け。一旦城を離れ、逃げよ。逃げて逃げて逃げて生き延び、明智家の主として、再び城を持つ身になってもらいたい。そなたならそれがやれる。許されるなら、この左馬助もそこにくわえてもらいたい」

光安……いい人です。

父の声だと思って聞けと切り出しつつも、左馬助をついていかせることでは、光秀の許可を得るのです。あくまでへりくだっていて、とても優しい。

左馬助も父親に似ているようですので、今後も期待できます。

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演じる間宮祥太朗さんも、そこにいるだけでキラキラするような美男なのに、それを敢えて消しているような。素朴さが前面に出ていて、すごくいいんですよね。

そんな左馬助が頼みます。

「私からもお願いいたします。父の願いをお聞き届けて下さりませ」

「ことここに至ったのは、わしの力のなさが元じゃ。伏して詫びを申す」

やっと叔父の懇願に納得した光秀。

ここで気になることがあります。

「我らは逃げて、皆は、伝吾たちは?」

「他の者も落ち延びるよう命じた。伝吾たちは槍を持つが、元は百姓じゃ。我らを助けよう戦ってくれたが、刀を捨て田畑に戻れば、高政も切り捨てはせぬ」

光秀が感極まって泣きそうなところで、敵が襲って来ていると伝令が報告して来ます。

「早いぞ。十兵衛、左馬介、急げ! 一刻も早く、馬を引け! 十兵衛、ぐずぐずするでない!」

「叔父上は?」

「わしも後から行く。案ずるな、早う行け」

「叔父上!」

「わしはこの城を最後までしかと見届け、跡を追う」

「はっ!」

そう言い別れるわけですが、脚を負傷した光安が生き延びる可能性は、ほぼありません。

永遠の別れでした。

覚悟を決めた顔が光安の写ります。

ほんとうに、この人が、何をしたというのだろう?

ただただ、悲しい。彼の鳥は逃げられても、彼はそうできません。籠から鳥を逃すことには、彼なりの覚悟と慈愛がありました。

 


妻の煕子と母の牧は戸惑うばかり

明智荘で、牧と煕子は籠城の支度をしていました。

そこに光秀が来ると、すぐ城に参るかと聞いてくるわけですが。

「城へは参りませぬ。逃げまする」

光秀の口から出た、叔父上の御命令に牧も煕子も戸惑うばかりです。そこへ伝吾が、村の者が別れを告げたいと連れてくるのでした。

「十兵衛様、大方様、奥方様。今日まで長々とお世話になりました」

伝吾も、村の者も、ついていきたい。助けたい。口惜しい限りではあるものの、お供したくとも、畑や田は持って歩けないと言います。ご一緒にと思うても、できないと謝るのでした。

「かたじけない。そう申してくれるだけで……われら明智こそ、長きにわたり皆に支えてもらい、世話になり、それがこうして出ていくことになろうとは。無念というより他……伝吾! すまぬ! 無念じゃ!」

光秀はそう誤ります。そのうえで、志に感謝をして、立ち返れと命じるのです。

「皆達者でおれよ、また会おう! また会おうぞ! いくぞ!」

光秀はそう別れを告げます。

よい話のようで、奥深いとは思えました。

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人間の力は、先天性の身分ではなく、スキルをどうやって身につけるか。

装備の問題です。

世界史的にみても、この16世紀あたりは面白い。身分制度が崩れていきます。

武器の扱いとか。識字率とか。そういうことから民衆を遠ざけるのは、身分制度と社会秩序の維持のためでして。

同時代のイングランドで、貧しい生まれながらも知識を身につけたトマス・クロムウェルが、周囲から塩対応されまくる『ウルフ・ホール』をご覧ください。アン・ブーリンも、女性版下剋上ではあります。

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幕末に来日した外国人が驚いたのは、日本の識字率の高さでした。

ロシアの農奴制あたりが悪名高い例ですが、字すら読ませず知識を剥奪することが、身分制度社会の安定のための手段であったのです。

実際に、ロシアでは「インテリゲンチャ(知識人)」の登場で革命へ向かっていきましたので。

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本作の斎藤道三松永久秀織田信長あたりは、こういう知識なり力があれば、世界は変わると気づいた人々なのです。

 


父祖伝来の地

母の牧が悲壮な表情で言葉を発します。

「私はここに残りまする!」

今は亡き光秀の父である光綱が、終生大事にしていた父祖伝来の地。今捨てろと言われても、捨てるわけにはいかないと言い切るのです。

そう……災害や何かがあると、そんな土地に住んでいる方がおかしいだのなんだの言われますが、父祖伝来の地は大事です。

美濃にもある「輪中」。川で囲まれた土地で、台風でも来ればすぐさま氾濫して、大変なのことなってしまう。そういう土地に止まって、どうやって暮らすか。知恵を絞った結晶です。

輪中について知った時、こんなところで暮らさなくてもよいのではないかという思いがよぎったものです。そういうことじゃない。土地は持ち歩きできない大事なものなのだから。

「母上!」

「できぬものはできぬ!」

高政勢がこの館を焼き払うと言っても、牧は「ここで死ぬは本望!」と言って聞き入れません。

十兵衛は困り果て「母上が逃げぬなら私も逃げませぬ」と返す。煕子も側を離れるわけにはいかない。常もそばにいると言う。これは全滅しかねません。

そこで藤田伝吾が「大方様、大方様」と説得します。

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高政勢がこの館を焼き払いますぞ!お気持ちは、私も村の者も皆同じ。大事な田や畑、山や川、この先10年でも20年でも皆で守っていこうと思っているのだと。いつの日か、大方様がお戻りになられた時、何も変わらず、この里や村はある。それをまた見ていただくために、今日は旅に出てくださりませ。

そう頼み込むのです。

「どうか……」

「伝吾……」

「義母上様、参りましょう」

「急ぎ支度を」

丁寧な説得でした。

牧の気持ちもわかります。結果的に老いた身の人々が残ろうとします。

人間とは歳月とともに、新しいものを受け入れられなくなる。若い頃聞いた曲、見たアニメ、読んだ漫画の話ばかりをするようになったら、悲しいことに、そういうことなのです。“ロス”だの“ナレ”だの連発するようになると危険。

大河なり、時代劇なりの話をしているのに、いきなり巨大ロボットアニメの話にもっていく人っているじゃないですか。

誰とは言いませんが。特撮、往年の少年漫画、大手掲示板用語を使うことも多い。特定の年代の悪癖だとは思います。

私も人のことをどうこう言えず、やめていこうと意識しております。本物の若い層はついていけないでしょうし、年齢が上であれば、それ相応の知識と教養を根底に置きつつで話を進めたほうがよいのでしょうから。

 

国衆を潰しにかかる……吹っ切れた高政

「エエヤアエエ! エエヤアエエ!」

明智の館にも敵の声が響いてきました。急ぎ支度するよう、皆は言い合います。

「お急ぎください、敵は近うございます。皆行くぞ! 煕子、母上と皆と表へ。私は外を見てくる」

「放てー! 放てー!」

火矢が放たれます。

既に明智城は炎に包まれていました。燃やすということは、逃す気がないということです。

高政は吹っ切りましたね。

真田丸』では、どの大名もハズレ値国衆・真田家を本気で潰そうとはしておりません。徳川は、大失敗をかましますが……。

国衆を潰すよりも、引き込んで統治させる方が効率的ではあるのです。

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それがこうも徹底して明智を潰すとなると、高政のバランスが欠けたことが伝わってきます。

斎藤道三は、己の血を毒にして、我が子に植え付けてから世を去ったようです。

その一方で、光秀と信長には、何かを残してゆきました。

喪失の悲しみを噛み締める余裕もあるのか、ないのか。そんな中で、物語は先へと動き出すのです。

 


MVP:明智光秀

道三もいい。光安も。けれども、今週は光秀が光りました。

主役のイメージがないとか、食われていると言われることもある光秀ですが、今週はまさしく絶品でした。

馬に乗る。甲冑を身につけいて、膝をつく。所作が綺麗にできているのに、目立たない。

これは川口春奈さんが美しく見せようとせずに泣いているところでも感じたところですが、作り物らしい見せ場をする演技を排除しようとしていると思えます。

高政との対峙も素晴らしい。相手を責め立てるわけでも、論破するわけでもない。

ただただ戸惑い、悲しんでいる。まるで寺で学んでいた頃のような、子どもに戻った困惑すら出ているところが眼福でした。

光秀は、鏡のような存在かもしれないと思えました。

相手の心を読み取り、即座にさっと寄り添える一方、残酷な真実も突きつけてくる。

牧が逃げないと決めたら、困りに困って、一緒にいると言ってしまう。伝吾が説得に回るのもそうです。

高政は、光秀が寝返ったと思っているけれども、光秀からすれば変わったのは高政です。

光秀という鏡に、道三が「愚か者、おぞましく醜い」と指摘した自分の像が映っているからこそ、高政は怒り狂ってしまう。

道三は、そんな鏡のような光秀を信頼しました。ケチで嫌いだと言う鏡を、道三は愛したのです。

光秀が信長を討ち果たす理由も見えてきたとは思います。

野心?
黒幕がいる?

心理的な齟齬でしょう。光秀は信長から照射される殺気や悪意を跳ね返し、自分もろとも滅ぼしてしまう。

そういう結末に至ることはわかってきたのだから、本作が完結すること願うばかりです。

 

総評

今日、クレジットを見ていて気づいたのですが。

脚本家の岩本真耶さん。

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脚本に名を連ねているけれど、最低限の情報しか出てこない。あなたは誰でしょう?

「定軍山の戦い」で、夏侯淵が討ち果たされたと知った曹操は、誰かがいると感じました。法正という切れ者がいると知り、そうだろうと思っていたと語ったそうです。

曹操の強がり? それとも本気?

本気と解釈しまして、岩本真耶さんは、まさしくこの法正だろうとは思えます。

池畑俊策さんを過小評価するつもりはまるでないけれども。もっと下の年代ならばわかる、そういう知見が盛り込まれているとは思いました。

世間が変われば、歴史の創作物にも当然その価値観が反映されます。

岩本真耶さんが最低限の情報しか出さない理由も、勝手ながら想像してしまいます。過去の経歴やら学歴ではなく、目の前の自分のやることで判断して欲しいのでは?

こういうご時世で、本作もいろんなニュースが飛び交って入る。ただ、正式な発表がないからには、なんとも言えない、まだ考えている最中です。

万が一、作品そのものが未完成になろうとも、人材と環境さえあればそこまで暗い見通しでもない。長谷川博己さんはじめこの出演者がいて、このスタッフがいる。そのことにまず、一安心すべきだとは思うのです。

道三追悼……やっぱり『孫子』だ!

孫子曰、兵者國之大事、
死生之地、存亡之道、不可不察也。
故經之以五事、校之以計、而索其情。
一曰道、二曰天、三曰地、四曰將、五曰法。

孫子曰く、兵とは国の大事なり。
死生の地、存亡の道、察せざるべからざるなり。
故にこれを経るに五事を以ってし、
これを校(くら)ぶるに計をもってして、その情を索(もと)む。
一に曰く道、二に曰く天、三に曰く地、四に曰く将、五に曰く法なり。

孫子は言う。

戦争とは国家の大事なのだ。

民が生きるか死ぬか、国家が存亡できるかどうか。きちんと考えること。

だからこそ、五つの要素を考えねばならない。

1. 道;政治のこと。民衆が納得できる政治をしているか?

2. 天:気象やタイミングのこと。運命とかそういうことではない。

3. 地:距離や険しさ、地形的な要素。

4. 将:人材力!

5. 法:軍隊の運用や法規が整っているのかどうか。

はい、そんなわけで「計篇」ですよ。やっぱり役立つなぁ!

こうしてみてくると、道三は高政の【道】を破壊し、【将】や【法】も傷つけているとわかります。

【将】は、光秀のことです。

光秀本人の才能以前に、高政は腹を割って話してくれる。耳に痛いことを言ってくれる。そういう諫言をする家臣を失ったことになる。

これは危険です。“馬鹿”を周囲に集めていては、自分まで“馬鹿”になるばかりだ。

【法】は、掛かり太鼓や掛け声も含まれます。

父の時代とは変える――そう張り切ったところで、一度決まったシステムの作り直しは骨が折れるもの。紛れもなくマイナスになることでしょう。

そして最大のものは【道】です。

親殺しという悪名を、納得させることは難しい。

伊達政宗が希有な例外ですね。

独眼竜政宗』でも輝宗が望んで死んでいったような描かれ方をしましたが、同時代は「親を射殺とかねえわ……」と呆れられておりました。

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それを仙台藩が藩祖クリーンアップ作戦を実行。戊辰戦争で東北ごと沈没する明治以降は、東北のプライドとしてますます持ち上げられた。

そういう流れですね。大河『独眼竜政宗』の威光も、ケン・ワタナベがロシアンルーレットをやらかした2018年で、砕け散ったとは思えるのですが……。

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政宗は、もうずんだ餅を食べさせておくことにして、話を戻しますと。

どうしたって、親殺しは重たいものです。

自らの血と命で、高政に傷をつけた道三は、見事というべきか、残酷というべきか。

高政からすれば腹立たしいかもしれませんが、視聴者には有益な教訓を与えてくれたとは思います。

自分だけの努力で獲得していない。血統や、過去の肩書をお守り札にするのは、とても危険だということ。

大河は、大河だからこそ。別格で、期待されていて、すごいものという先入観がある。

そこをあえて崩しているとは思う。すごいことをしている……。

私は10年後に大河があるかどうか、昨年末、不安でしかたなかった。けれども、本作を見ているとそれが拭われる思いはあります。

こんなご時世です。

いろいろ言われるけれども本作は革新的です。

本作については悲観的になろうとしても、なれない。この予感が当たることを願うばかりではなく、確信してはいます。

関連情報を漁れば漁るほど、演じるを通り越して役柄を生きているのだと確信できます。

こうも誠実な作品ならば、過去の大河とは違っても、未来は明るい!

そう断言して、今週の終わりとします。

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◆麒麟がくる全視聴率

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】
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