鎌倉殿の13人感想あらすじ

鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第31回「諦めの悪い男」

2022/08/15

二代目鎌倉殿の源頼家が病に倒れました。

かろうじて息はあるものの、頼朝と同じ病状。

阿野全成の祟りではないか?とざわついております。

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新しく登場した医者は佐々木秀義の孫だそうで、祖父と孫を俳優・康すおん(かんすおん)さんが二役で演じます。なんなんだこのセンスは……。

その医者が、望みはある、汗はかいている、生きようとする証だ、吉兆だとは言いますが……頼朝の時と同じではないですか!

比企能員が「頼朝と同じ場所にいてはいけない」と移そうとすると、北条時政がここでカットイン。

瀕死の頼家をめぐって比企と北条が火花を散らしています。

義時が、そんな二人を見て苛立ちが頂点に達したのでしょう。その場にいる大江広元のもとに預けると言い出します。

驚きながら、先年妻に先立たれて何かと行き届かないとしながらも、義時の願いを引き受ける広元です。

広元は武士でなく「文士」扱いであり、中立の立場として扱われています。

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ただし、本人には自らの確たる意志があり、どちらの派閥にも操られたりはしていません。

 


比企と北条の鍔迫り合いが激化していく

オープニングテーマに続き、ナレーション。

初代よりはるかに若くして、二代目は倒れた。

御家人同士の対立もまた遥かに大きい。

鎌倉に戦の匂いが漂い始めている――。

長澤まさみさんの落ち着いた声で、不吉な世界へグイッと引き込まれ、母である北条政子が、丈夫な体に生んでやれなかったと悔やんでいます。

と、頼家の乳母であり、比企能員の妻である道は、昔からお体が弱かったと嘆く。

乳母と生母の二人が自分のせいだと言い合いながら、政子は道を労っています。

しかし、ことの本質はそこではないのでは?

かつて万寿(頼家)の儀式をダシにして御家人たちが謀反計画を起こした挙句、その始末として上総広常が始末されました。そこを踏まえると、頼家はそもそも始まりから呪われている気もします。

そして上総広常の生まれ変わりが北条泰時というほのめかしもあるわけで……不吉な予感はどんどん強くなっていく。

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能員は一幡を鎌倉殿にする手続きを進めようとして三善康信にかけあい、朝廷に伝えようとしています。抱いていた一幡に遊びに行くよう促すと、ぬけぬけと義時の前でこう言います。

鎌倉殿(頼家)は百に一つも助からない――。

ここで源氏の血を引く者リストが図で解説されます。

系統は二つあり、頼朝の子と、全成の子。

全成には頼全と時元という男児がいました。

一方、頼朝には三名いて、一幡、善哉という孫、頼家の弟として千幡が表示されます。他にもいる頼家の男子は、ドラマでは省略されていますね。

問題は、それぞれの子の後ろにいる乳母夫でしょう。

◆一幡には比企

◆千幡には北条

◆善哉には三浦

乳母夫とは、本来、子供の生存率を上げるためのシステムだったのに、弊害のほうが大きくなってしまっている。

義時が出ていく能員を呼び止め、思い通りにはさせぬと釘を刺します。そのうえで鎌倉殿が元に戻ることを祈っていると。

さぁ、本音はどうでしょうか。

 


頼朝の遺言書を義村が偽造

北条義時の前に、三浦義村と和田義盛が座っています。

そこで善哉の乳母夫である義村が、書状をそっと差し出した。

頼家とつつじの子が男児であれば、これを源氏の棟梁とする。乳母夫は三浦義村――。

走り書きだけど、頼朝が書き残したってよ。

すかさず和田義盛が「いいのがあるじゃねえか!」と浮かれ、これで比企もぐうの音も出ないってハシャいでますが……。

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義時は冷静です。

「お前が書いたんだな」

「そうだ。何枚でもあるぜ」

「勘弁してくれ!」

義時は絶望しつつ紙を破ります。

当たり前ですね。むしろ、義村の頭を引っ叩かずに耐えている義時がえらい。

にしても、なぜ義時は義村の嘘を見抜けたのか。三谷さんらしいミステリぽい展開ともいえますね。

何もかもがあまりにうまくできすぎているとなると、かえって怪しいということです。

美人で、仕事もできて、薄給でも文句を言わない。残業も、休日出勤もしてくれるし、おまけに露出の高い服装で出社してくる……そんなモバイルアプリじみた押しかけ秘書が実在するかどうか?

機密情報を全部盗まれるなんてことがあるかもしれない。有能で美味しい存在には警戒が必要ですね。

それでも悪びれず、比企の天下にしたくねえ、善哉しかねえと言い張るのが義村。

比企をぶっ潰す!と盛り上がり、反対する義時に対しては「そんなに三浦に力を持たせたくないのか」とウダウダ言い始めました。

では、どう対処するのか?

義盛にせっつかれ、「それを考えている!」とキレる義時。

大変なことになってきました。

 

比企の手で実衣の息子が殺され

八田知家が火葬準備をしており、クヌギに松を混ぜると言い出しました。

材木を集めると立ち上がる知家に、義時は八田殿は比企に近いと声をかけます。実際、全成に手を下したのも彼でした。

「もしもこの先……」

「鎌倉が比企と北条で割れているのは俺でもわかる。でもな、俺はどっちの側でもない。俺は俺だ」

キッパリと、そう言い切る知家。

一番うまい身の処し方かもしれません。こんなシンプルな説明で風格を見せる市原隼人さんが今日も素敵だ。

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北条時房があわてて京都からの知らせを届けてきます。

京都で修行中であった全成の子・頼全が源仲章によって首を刎ねられたとのこと。

この源仲章は在京都御家人かつ後鳥羽院の側近という特殊な人物です。

気品ある美貌でありながら悪どい顔をする。美しいけれど毒がある。まるでトリカブトの花の精のような、生田斗真さんの新境地が見られました。

いずれにせよ全成の息子が討たれ、ハッキリしたことがあります。

「比企が我らに刃を向けてきた……」

北条の者たちが集結します。

「許せねえ!」

時政は激怒。鎌倉殿の命令だというが、比企の仕業だと息巻いています。

りくが「実衣は知っているのか?」と尋ねると、政子は身を隠すように伝えていました。

しかし、そこへやってきたのが子連れの実衣。

この子たちは自分のそばにいさせて渡さない!とキッパリ言い切るのです。

気持ちはわかると言いながら、引き渡しを求める政子と、やっぱり断る実衣。

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実衣の妹ちえが子供子たちを引き取ろうとして、その夫・畠山重忠が「比企には決して渡さない」と重ねて説得すると、ようやく折れ、かつ彼女の本領発揮ときました。

「すぐにでも比企を攻め滅ぼしてください。首を刎ねて大きい順に並べるの」

重忠が戦支度を整えるとかえって大きなことになると躊躇しています。

重忠は常に犠牲を最小限に抑える思考があります。義時も苦い口調で、鎌倉を火の海にはしたくないと付け加えます。

さて、そんな義時の手は?

 


りくが義時に念押し

まずは一幡(頼家の長男)を止める。

担ぎ出すのは善哉(二男)か? いや、千幡(頼家の弟)にする。

そうまとめたのは、千幡なら元服も近く、御家人たちも納得するという見通しがあります。

それが叶わなかった時のために兵を集めるよう、重忠と時政に出陣の準備を命じる義時。

これにはりくも同意であり、実衣も全成の遺志だと納得していて、何気ないけど重要な描写になっています。

大河ファンに揶揄されがちな、女性人物のセリフとして、次のような言い回しがあります。

「いくさは嫌でございまするぅ〜」

どの大河で、誰が言ったのか――そういう詳細はどうでもよく、ともかく戦を避けるためヒロインが薄っぺらいセリフを使うことを指摘したものです。

女の子は平和が好きでしょ、ゆるいでしょ、といったニュアンスですね。

あるいは女性の脚本家だったり、女が主人公だと「スイーツ大河」とされるスラングもあります。

そうした状況を踏まえて実衣の言動を見ると真逆。

夫と我が子を理不尽に殺された恨みを晴らすため、仇討ちした敵の首をどうやって並べるかまで指示する。スイーツどころかかなりのビターです。

彼女は幼少期から冷静で皮肉っぽく、きついことを言う性質でした。先天的な個性として残虐さがあり、なんなら畠山重忠の方が慈愛を持っている。

近年でも『八重の桜』や『おんな城主 直虎』は、むしろシリアスな残虐描写が多かった。

ただし、実際に戦争を体験した世代が「戦は嫌だ」というセリフを入れるのであれば、薄っぺらいどころか自身の経験を反映させたとも見なせるでしょう。

そして、実衣と同じく、かわいい女性の枠から大きくはみ出した女性がもう一人いますね。

りく(牧の方)です。

りく(牧の方)
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義時を呼び止めると、比企を滅ぼした後のことを聞いてきます。苛立っている義時に、幼い千幡では政ができないと言い、誰がやるのか?と問う……というより、念押ししてきます。

北条の惣領は我が夫だ、と。

義時が正直なところを伺うと前置きしつつ、尋ねます。

「義母上は、父上に政(まつりごと)が務まるとお考えでしょうか?」

もちろん。そう言い切りながら、夫の器を信じていると断言するりく。そのうえで汚れ仕事を義時に押し付けます。

邪悪ですね。

頼朝にせよ、義時にせよ、自分が拳を振り下ろした結果、血が飛ぶところから目を逸らすことはありません。

ところが、りくはそうではない。

こういう想像力の欠落した策士には、目の前に首でも置きたくなります。

己のしでかすことが一体何を巻き起こしているのか、目の当たりにした方がよいでしょう。

 

一幡には関東 千幡には関西 という折衷案だが

己が動けば血の海になる。どうすればよいのか。義時が何か書面を見つめています。

そして比企能員にこう提案しました。

鎌倉殿の役目を二つに分けるのはどうか?

一幡には「関東二十八カ国」と千幡には「関西三十八カ国」。要は列島の御家人支配域を東西で分けるということですね。

能員は悪どい笑みを浮かべつつ、書面を破って投げ捨てます。

そして能員がその場を去っていくと、大江広元が義時に対して「比企殿が受け入れるわけがない、最初からわかっていたであろう?」と語りかけます。

やれることはやった。拒んだのは向こうだ。

そう強調する義時。なるほど、アリバイ作りですね。

息子の泰時も黙っていられなくなったのでしょう。父に「わかっていたのか?」と問いかけると、質問には答えず「これで大義名分がたった」と無表情のまま返す義時。

「比企を滅ぼす……」

泰時は唖然としています。まさか父が、こんな顔をするなんて……。

しかし、この泰時の絶望こそが希望でもあります。父の汚いやり方を学ぼうと目を輝かせていたら、何の救いもありませんから。

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8月末日――容態の戻らぬ頼家が、意識のないまま床の上で出家させられました。

政子と義時は比企一族をどうするのか話し合っています。

しみじみと頼朝の正しさを噛み締めている義時。敵を寄せ付けず、常に先に仕掛けた。それがあの方の教えであった。

政子は一つだけお願いがあると言います。

一幡の助命です。頼朝の血を引くものを殺めてはならないと願うと、義時は、仏門に入ってもらうと妥協案を提示します。

政子はそんな弟を信じていないのでしょう。

「誓いなさい」

「誓います」

そう言い合いますが……ある意味、頼朝が殺戮のたがを外した結果がこれです。たとえば頼朝が、源氏の血だからと木曽義高を助命していれば、その後の結果は大きく違ったかもしれない。

頼朝の死後、さらにゲームのルールは変わりました。

たとえ出家していようとも、阿野全成とその息子・頼全は殺された。

徹底せねば、いつまた驚異となるかわからない。

そして義時は、政子に誓約した直後、戦になったら真っ先に一幡様を殺せと泰時に命じます。

「生きていれば、必ず災いの種になる。母親ともども……頼朝様ならそうされていた」

頼朝の教えを受けた愛弟子が、その頼朝の血を引く幼子を殺す。何をどう間違ったらこうなるのでしょうか?

歴史で言えば、司馬懿が曹操のやり方をトレースして、王朝簒奪する過程を思い出します。

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見る者の精神を破壊する大河です。

 

比奈に比企を偵察させる

比企の館に比奈が戻って来ました。

義時の頼みを受けてのこと。

善哉とつつじは大事に思われていないようで、一幡が遊びたいというから善哉だけ来ているようです。これなら善哉とつつじを巻き込まずに始末できそうですね。

比奈が善哉をどうするのかと聞くと、八幡宮で出家させるのだとか。

ここで比奈は失礼すると立ち上がり、扉の向こうを立ち聞きをしています。

そこにいたのは、三浦義村に誘いをかける能員でした。

能員は、北条には先がないと言っています。つまり、両者ともに殲滅する気だと言質が取れたようなもの。こうなったら先手をとる方が勝ちます。

泰時が暗い顔をして考え込んでいると、比奈がやってきます。義時が御所にいると聞くと、急いで書状を届けて欲しいとのこと。

この比奈もいつもと同じマイペースなようで、重大な情報を伝えようとします。

泰時がこう聞きます。

「父上は変わられましたか?」

「変わられたと思うのですか? 人は変わるもの。それでいいではないですか」

「……忘れてください。行って参ります」

「いってらっしゃい」

見送る比奈の顔には、さみしさが滲んでいる。彼女の愛した純朴な小四郎はもういない。同じ顔と声をしたあの人は、何か別のものになってしまったのかもしれない。

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義時がベタ惚れだった姫の前(比奈)北条と比企の争いで引き裂かれ

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比企に手を伸ばされ、あの男、つまり義村はどう出るか?

悩む義時に、泰時は比奈を利用したのかと尋ねます。

義母上の気持ちを利用して、比企を裏切るようなことをさせて、どうして平気でいられるのか!

そう問いかけ、父上がわからないと畳み掛ける。

「父上はどうかされております! そこまでして、北条の世を作りたいのですか?」

「当たり前だ!」

我が子にそう返すものの、義時は本当にそう思っているのでしょうか。なんだか己に言い聞かせているようにも見える。

深く嘆息する義時は全く楽しそうではない。いや、こんな状況でもどこか楽しそうな三浦義村がおかしいだけですね。

 

最後の交渉を父に託す義時の狙いとは

義時はまだすべきことがあります。

父の北条時政と向き合い、念押しします。

千幡様はまだ幼い。鎌倉を率いるのは北条ということになる。率直にそう切り出すと……。

「その覚悟があるかってこったろ」

「はい」

「あるよ。なんだよ」

「軽いのです!」

おう、軽いぜ――そんな孫の運動会に行くか聞かれたおじいちゃんみたいなノリで答えられてもな。で、りくから聞いているってよ。

「あれは誰よりもわしのことをわかっておる。そのりくがいうのだからなんとかなるよ」

ならねーよ! そう全力で突っ込みたい。自分の頭で考えてくれってば。

しかし、わしには大事に思っているものが3つあるとかで。

1 伊豆の土地

2 りく

3 息子たち 娘たち

息子と娘で4つでないか……と突っ込まれると、一つで数えると言い出す時政。

これは微笑ましいようで、覚えておいた方がいい場面かもしれません。

我が子より、先にりくが来ている。

両者を天秤にかけたらどうなってしまうのか?

そんな疑問も湧いてきますが、ともあれ、その3つを守るのが天命だと言い出します。

それなのに全成を死に追いやってしまい、実衣を辛い目に遭わせちまったと猛反省。もうこんな真似はしねえと言います。このセリフ、嫌な伏線にしか思えませんが……。

鎌倉のてっぺんに立って、北条の世を作ってみせると豪語します。

頼朝様みてえに細かい目配りはできねえから、義時の力も借りたいってよ。

「もちろんでございます」

義時は嘘をつくのがうまくなった。

内心、父を見限ったのかもしれない。そんな猿山の大将みたいな理念表明して何がしたいのか。

この渾身の宣言で、時政には人の上に立つ資格はないとハッキリしました。

「まずは比企討伐じゃ!」

「その前に……」

義時は、もう一度だけ比企能員と話してみようと思っているとか。

「おめえも諦めの悪い男だな」

「最後の機会です」

しかしそれを時政が引き受けると言い出します。お前じゃ埒があかねえ。向こうが承知すれば御の字。そう引き受けてくれるのですが……。

義時は本当に嘘をつくのがうまくなった。

時政にまっとうな交渉ができるわけがないのに、「一応」のアリバイとして父を使うのでしょう。

義時は本当に決裂を避けたいのか?

それともわざと決裂させたいのか?

自分でもわかっていないような不気味さがあります。

盟友の義村はこの点、感情もゲームもコントロールしていると思えるのですが、義時は何かに流されているようなところもあり……それが普通の人なのかもしれません。

 

能員と時政のしょーもない口撃

かくして比企能員のところへ時政がやって来ました。

能員は後悔を口にします。

それは頼朝の挙兵時のことで、比企は日和見をして参加しなかった。己がいたら石橋山でも勝っていたかもしれないと言い、そうすれば北条より上につけたかもしれないと語ります。お陰で随分遠回りしたのだと。

「よう踏み切ったな」

「わしは源頼朝という男を信じておった。この婿はいずれでかいことを成し遂げる」

「たいしたものだ」

「なあ、ここらで手を打たんか? 小四郎の考えた案を受け入れてくれ」

「断る」

「もう御家人同士の戦はたくさんだ」

「それはこちらも同じ。しかしあれはいかん」

「頼む!」

「泣き落としが通じるはずもなかろう。ならばこうしよう。九州は千幡。その他は一幡様」

そう挑発されて交渉決裂。これ以上話すことはなさそうだと言います。

しかし、時政もタダでは済まない。

「ひとついいことを教えてやろう。悔やむことなんざ何ひとつねえぞ。あの時お前がいたところで、頼朝様は負けておったわ!」

なんともしょうもない話ですわ。

ただ、これは時政が正しいとは思えます。

圧倒的な兵力の差は、比企の参戦程度でどうにかなったわけもないでしょう。

あの戦いにおいて、頼朝にとって一番の恩人は、石橋山の中で頼朝をわざと見逃した梶原景時でしょう。

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その景時を積極的に追い払った二人がこんなくだらないことを言い合っている。

本当にどうしようもない。

能員だけでなく、時政も器が小さく、しょうもない人物だとわかります。

ともかく義時が延ばした最後の手を能員は振り払いました。

 

坂東武者は勝つために何でもするんだ

建仁3年(1203年)9月2日――時政が和議を申し込んできたと能員が妻子に告げています。

怖気付かずに乗り込むぞ!と意気揚々とした表情の能員。妻の道と子の時員も心配しています。

仲立ちとして尼御台も来るからと能員は安心しています。

ではせめて甲冑を着ていくべきだと道が願うと、軍勢を引き連れていくとそれだけで戦になってしまうと、能員はニヤリとしています。

「太刀も持たぬ者を討ったら末代までの恥。肝の据わったところを見せてやる」

そう不敵にいうと、愛妻を抱き寄せ優しく撫でる夫。

そこに愛はあります。何か別のものはないけれど。なんだか佐藤二朗さんも堀内敬子さんも、魅力的ではあるのです。

しかし能員は何か忘れているようだ。梶原景時ならこうはならないでしょう。

源義経がゲームのルールを変えました。

義経は壇ノ浦で、船の漕ぎ手を殺した。卑劣だろうと、結果を残せばよい。

能員が北条の館に出向くと、仁田忠常に案内されます。

そして時政の待つ部屋に入っていくと、そこにいたのは甲冑をつけた時政でした。

「何のつもりじゃ」

慌てて帰ろうにも、忠常に止められ、退去できない能員。

「見てわからんか、丸腰じゃ」

「そのようだな」

鷹揚に答える時政。

「お前も坂東武者の端くれならば、わしを斬ればどうなるか……」

「お前さんは坂東生まれじゃねえからかわらないんだろうがな。坂東武者ってのはな、勝つためにはなんでもするんだ。名前に傷がつくくれえ屁でもねえさ」

「ん〜……ふ〜……わしの身に何かあれば三浦も立つ!」

能員が啖呵を切ると、開けた扉に向こうにいたのは三浦義村でした。

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殺伐とした鎌倉を生き延びた三浦義村|義時の従兄弟は冷徹に一族を率いた

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「三浦をみくびってもらっても困るな。北条とは二代にわたって刎頸(ふんけい)の交わりよ」

出典は『史記』。お互い、相手になら首を刎ねられてもよいという意味です。

同じ意味で漢籍由来なら、「断金の交わり」、「水魚の交わり」、「管鮑の交わり」もあるのに、なんだか不吉なことを言って来ましたね。

 

「あぃたぁー! 切りおった、切りおった」

周囲を北条の甲冑武者に囲まれ、徐々に血の気が引いていく能員。

義時が無情にも死刑宣告をします。

「比企能員、謀反の罪で討つ!」

これを合図に忠常が切り付けると、能員は叫びます。

「あぃたぁー! 切りおった、切りおった、切りおったー、ああー、いったー! いったー!」

逃げる能員。追う北条。

ふと義村が気づき、能員の着物をひん剥くと、中に甲冑を着込んでいました。

その思い切りの悪さが命運を分けたと時政が言います。

北条は挙兵に加わり、比企は二の足を踏んだ。確かにこの勝敗はそこにあると思える。

「我が比企の一門を、取るに足らぬ伊豆のものと一緒にするな! 守るものが、守るものが違ったのよ!」

「がたがたほざくな!」

北条の悪名は永劫残るぞ――そんな能員の言葉を静かに聞く義時。

そして忠常にとどめをさされ、絶命する能員。

仁田忠常イメージイラスト
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その様子を見届けた義時は、仏に祈りを捧げる政子に報告。

政子は合掌しつつ、頷きます。

「これより館に攻め入ります」

政子は義時の思いをどこまで知っているのでしょうか。

彼女はますます美しくなりました。このうなずくところなんて白鷺のような気品があります。尼僧姿がこれまた神々しい。

しかも、目が澄んでいる。義時のようにやつれてぼろぼろにならないし、時政のように濁ってきてもいない。小池栄子さんの演技が今週も素晴らしい。

比奈は自邸で遊ぶ子供たちを見ながら、どこか何かが抜けたような顔です。

堀田真由さんのこんな顔を見るなんてつらい……。

義盛と重忠もこの場にました。義盛は乗り気がしねえとぼやいています。

重忠が「なぜ?」と問うと、義盛は「平家の戦とは違う、仲間だ」と。

「力ある者だけが残る、それだけのこと。我らは食らいついてゆくほかござらん」

良識的な人物も割り切るしかありません。

 

頼家が息を吹き返した!?

能員を討ち取った北条が、比企の邸宅へ攻め込みました。

道は兵を整え迎え撃てと命じ、比企尼が「北条め!」と憎しみを吐き出します。

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道が荒い息をつきながら、せつに告げます。

「北条にしてやられた……愚かな母を許しておくれ。裏手でおばば様が待っています。逃げ延びるのです! 早く行きなさい、早く!」

せつは我が子一幡を抱いて逃げようとします。

と、そこへ泰時が立ち塞がりました。

せつが懐剣を握りしめ抵抗しようとすると、善児の弟子であるトウが素早く刺殺。

一幡は侍女に抱き抱えられているものの、そこへ善児が近づき、泰時に目をやります。生殺与奪を握った泰時の判断はわかりません。

泰時の迷いと悲しみだけが希望です。

義時と時房は全てが終わったと報告します。そしてすぐに千幡を鎌倉殿にする手筈をととのえると。

一幡が無事なのか?と政子が念押しすると、義時は生きているとわかれば担ぎ上げようとする者が現れるから、行方知らずにしておくと言います。

「これでよかったのですね」

「よかったかどうかはわかりません……しかし、これしか道はありませんでした」

義時がそういうと、政子は黙り込んでいます。

一人歩み去る義時の脳裏に、兄の姿が浮かんできました。

「おれはこの坂東を俺たちだけのものにしたいんだ。坂東武者の世をつくる。そしてそのてっぺんに北条が立つ!」

目をぎらつかせ歩いていく義時。果たして、宗時はこんな顔になる弟を望んでいたのかどうか。

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政子のもとに時政が来て、比企能員を一族郎党全て討ち取ったと報告します。

ご苦労だと労われていると、”残念ながら“一幡様は行方知らず、千幡を鎌倉殿にして北条を後見にするとのこと。

広元がテキパキと一日も早く元服してもらうと告げます。

つまり、広元はこの一連の流血に異議を唱えない。

と、そこへ足立遠元が駆け込んできます。なんでも鎌倉殿が回復したと。

駆けつけた政子や御家人たちに、一幡とせつに会いたいと告げる頼家。医者もさぞやお喜びになるでしょうと告げています。

そして己の頭に触れ、剃髪していることに気づく……。

彼は知りません。妻も、子も、二度と会えないことに。

思えば全成と実衣も、能員と道だって、幸せでした。最期まで愛する人がそばにいた。

しかし頼家は、やっと信じあい、愛が芽生え始めたせつを気づかぬ間に失っているのでした。

 

MVP:能員と道

悪いカップルというのはいます。

ボニーとクライドとか。古典だったらマクベスとその夫人とか。

そういう毒々しい二人のようで、本人はそんなつもりはまるでなかったし、そんなものは北条に毒されているだけだと反論されるとは思います。別にそこまで悪くもないような。

むしろ凡人だったと思えます。凡人がいかにして悪に堕ちてゆくか。そこをじっくり体現していた。

能員は自分の記憶を改竄しているように思えます。

当初、頼朝に協力的にあったのは比企尼だけで、この夫妻は全くやる気がなかった。消極的だった。

そこを思い切りのよさが紙一重だけだったようなことを言い募る。

そうやって己を過大評価し、偽ることで、能員は肥大してゆきました。

中身はないのに、自分は偉いと勘違いした。自己研鑽もしない。謙虚さもない。

ただ一族の女を使って権力に取り入っただけなのに、自分は偉いのだと思い込んだ。

外戚であることには、謙虚さが大事なのにそうしなかった。

自業自得と言えばそうなのだけれども、チャーミングで生々しくて、今の時代にも通じる巨大な教訓を残したと思える。

そんな素敵な二人でした。

 

伯楽と千里の名馬

能員は器が小さい。しかし、時政も同程度。そうハッキリわかった回でした。

今更ながら、頼朝とそれを見抜いた梶原景時の偉大さがわかる。

世に伯楽有りて、然(しか)る後に千里の馬有り。

世界に伯楽(馬の目利き名人)がいてこそ、千里の名馬がいるのだ。

韓愈『雑説』

時政は確かに頼朝の挙兵について行ったけれども、それは婿だからでした。

頼朝こそ器が大きいと見抜き、真っ先についていったのは娘。

ドラマではそこまでしっかりやらなかったけれども、時政は別の男に政子を嫁がせようとしたくらいで、頼朝という名馬を見抜いた「伯楽」は政子なのです。

梶原景時もそうでしょう。

彼は石橋山の後、頼朝こそ天に選ばれたお方だと見抜いて付いてきました。彼にも見抜く目があります。

では二人は何を見抜いたか?

頼朝は自分が天から与えられた使命があると実感していました。

自分には為すべきことがあると認識していた。

ここは後白河院よりもしっかりしている。「遊びをせんとや生まれけむ」を政治にまで適用するようでは失格です。

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これはオカルト感覚というわけでもなく、東洋の君主像ともいえます。

天と地の間に人がいる。その人を治め、よりよい生活を送らせるために、天は君主を選びます。

つまり、人の生活を向上させない君主は天の命に背いているわけだから、天罰を当てられて当然であると。

そういう価値観があるから、天災が起きると中国の天子は「罪己詔(ざいきしょう・己を罪する詔)」を出したのです。

天は直接民を罰するわけではありません。

ゆえに君主たるもの、まず第一に、民衆の生活向上を考えねばなりません。

これができているか?

能員は駄目です。

時政も駄目。

自分の妻子をかわいがることが天命と宣言するのは、全くもって君主の器ではない。

時政はいずれ、伯楽である娘から見捨てられることでしょう。りくは自分を伯楽だと誤解しているだけです。

 

公私混同をしない

中国史からの鎌倉時代考察を続けさせてください。

当時の日本がお手本にしていたので、お許しを。

『三国志』でおなじみの曹操は、【宛城の戦い】で嫡男・曹昂と甥、そして護衛を務めていた典韋を失いました。

この戦いを悼む時、我が子と甥の時は冷静なのに、典韋のこととなると号泣してしまう。

なぜか?

これは将としての態度の問題でもあります。

我が子よりも家臣を気遣うことこそ、将に求められる要素でした。

「ああ、この人は、我が子よりも部下を重んじるんだな。すげーな」

要は、公私混同をしないアピールですね。

人間は自分の家族が大事だ。我が子がかわいいのは当たり前である。

北条時政ならば「そうに決まってんだろ!」と首をブンブンさせて頷くことでしょう。

しかし、それでよいのでしょうか?

プライベートなら、いくらでも我が子をかわいがってよい。好きにしてください。

しかし公の場で家族を依怙贔屓すると規律が大いに乱れてしまいます。

以前、評判が悪い政治家のことを、その友人がかばう意見を読みました。

あの人は友人には気さくでとても善良で、なんでもしてくれる、と。

いや、そういった私的な一面などどうでもいい。

為政者ならば天意を受け、民のためのことを心がける。家族かわいさは二の次が東洋の君主像です。

 

こんなことでは麒麟は来ない!

『麒麟がくる』の光秀なら、きっとそう言うでしょう。

あの光秀のことを毎週繰り返している気がしますが、ならば何が天意にかなう政なのか?

光秀は劇中で家康に説明していました。

民衆が豊かに暮らせるには、どういう制度にすべきか。目をキラキラさせながら語っていたものです。

鎌倉時代はヤクザの抗争のようだと語られる。

しかし、日本の中世に絶望しないでください。

同時代、たとえばイギリスのプランタジネット朝も相当ヤクザで無茶苦茶です。

映画や舞台の『冬のライオン』はそんなヤクザホームドラマを体現しています。

この時代となると、世界史規模で比較的精密な治世倫理ができているのが南宋でしょうか。

そんな宋で形成された朱子学を吸収したからこそ、光秀みたいな人物は治世のビジョンが明瞭になったのです。

学び模索することで人間は洗練されてゆくものでしょう。

 

総評

今週は歴史を学ぶ原点をまたも教えてくれる――そんな熱い回でした。

能員が殺される場面が生々しい。

あがいて、つかまって、ジタバタしながら刺殺される。みっともなく生にしがみつく生々しさがあった。

そして攻められる比企邸。

キッと死の前に気高さを見せる道。

裏切りに怒る比企尼

刺されて死にゆく中、目を開いているせつ。

全部生々しい。トラウマになりそうなほど、死を見せてくると思えました。

でも、日曜夜8時に一年かけて、そんな歴史劇をやるんです。

その意義を問い直したい。

こんなニュースがありました。

◆大河「鎌倉殿の13人」浮上のカギは小栗旬の変貌にあり どこまで“ダークサイド”に落ちる?(→link

視聴率の低下を指摘されていますが、伸び悩むのは自然なことではないでしょうか。

定番である戦国幕末ものでもなく。

近年、特に2019年の大下落が回復できないのか、2020代は大河枠そのものが低迷。

毎週殺し合っているので、見る人を選ぶ。

そんな状況です。

ただ、NHK側もNHKプラスの視聴回数なども新基準で考えているようであり、視聴率をことさら気にする方がもはや古い。

そんな価値がこのドラマにはあると思います。

歴史作品は、教育的なようでいて、ものすごく反道徳的なことがバンバン起こる楽しさがありますよね。

何かあったら一族皆殺しなんて、目の前の現実ではまずない。いや、あってたまるか。

歴史からいちいち教訓を見出す必要性もないと思うのです。

今年は「こんな血生臭いことに嫌気がさしたから、泰時が頑張ったんだな」ぐらいで良いのでは?

歴史はおもしろい――そこから無理に「歴史人物から学ぶビジネス」なんて呪詛祈祷じみた何かを見出そうとするからおかしなことになる。

単純に面白い、それが原点でしょう。

そんな童心にまで返すような仕掛けがあって、今年の大河は秀逸と感じます。

今回なんて笑えばいいのか、恐れればいいのか、悲しめばいいのか、怒ればいいのか、わからない。

感情がぐちゃぐちゃに混ざって、終わってみれば、ただただ楽しいもんをみたとわかる。

そういう歴史を学ぶ楽しさ、理屈抜きでおもしろいとなることが実は大事なんじゃねえの?と問いかけてくる今週もまた、素晴らしかった。

今週みたいに血生臭い回を楽しんだというと、人としてどうかと思われそうだけれども、実際面白いんだから仕方ないですね。

もう降参です。


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【参考】
鎌倉殿の13人/公式サイト

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武者震之助

2015年の大河ドラマ『花燃ゆ』以来、毎年レビューを担当。大河ドラマにとっての魏徴(ぎちょう)たらんと自認しているが、そう思うのは本人だけである。

-鎌倉殿の13人感想あらすじ

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