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【平安時代の書道】
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「道長フォント」とは何なのか?
大河ドラマ『光る君へ』の脚本家・大石静さんは、道長の字を下手だと語っております。
Wikipediaでは道長が書道家に分類されていますが、なぜそうなっているのか不明。
失礼でも何でもなく、道長の字はお手本にしてはならない、個性的な悪筆です。
中国を真似するだけでなく、独自性を発揮してこそ【和様】の書ではあります。
しかし、道長は個性の発揮がちょっと派手すぎるというか、おおらかというか、癖が強すぎる。
そんな道長の字は、書道考証の根本知先生は「道長フォント」と呼んでいるとか。
確かに独自のフォントだと思えば、納得できるかもしれません。
根本先生が道長フォントを書き、それを柄本佑さんが上達しきらないうちにOKを出す。
そういう流れで撮影しているそうで、うますぎてもダメだという、さじ加減の難しい状況になっているようです。
プロの書道家が藤原道長の書体を想像して再現するなんて、『光る君へ』は本気の努力がある作品ですね。
道長が筆を扱っている場面も、わざとなのか、自然とそうなるのか、なかなか粗雑。
高い筆だろうが台無しにしてしまう、ルーズな道長の個性が伝わってきて興味深い。
かな書道の美しさを伝えて
『光る君へ』は、【和様】そして【かな書道】の繊細な美を伝えてくる大河ドラマといえます。
作品のロゴも根本知先生の揮毫です。
大河ドラマのロゴは、武士が主人公のものが多いためか、どちらかといえば豪快で読みやすいものでした。書家ではなくデザイナーが手がけることも多い。
それが『光る君へ』では、柔らかく繊細な、当時の世界観に通じる美しい書体に仕上がっています。
デザインとしては横書きが使いやすいですが、縦書きもあって効果的に用いられている。
根本先生はロゴの下書きだけでも800枚以上手がけたそうで。だからでしょうか、完成品からは作品の香りまで伝わってくるような繊細さが感じられます。
そんな根本先生の指導を受け、主演の吉高由里子さんはじめ、出演者は書道を熱心に学んでいるそうです。
役者本人が書いた字もドラマには登場するとか。
★
大河ドラマ『光る君へ』は、日本文学史に残る『源氏物語』の作者・紫式部が主人公です。
脇役には、日本書道史に残る藤原行成が登場。
彼らのスポンサーである藤原道長も、忘れてはいけません。
今日まで残る日本文化とは、どんな時代背景から生まれてきたのか。
そのことを学ぶうえで『光る君へ』は重要な作品となるでしょう。
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【参考文献】
石川九楊『説き語り日本書史』(→amazon)
石川九楊『「書」で解く日本文化』(→紀伊國屋書店)
台東区書道博物館『王羲之と蘭亭序』
他



