こちらは4ページ目になります。
1ページ目から読む場合は
【鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第26回「悲しむ前に」】
をクリックお願いします。
お好きな項目に飛べる目次
お好きな項目に飛べる目次
MVP:政子と義時
政子と義時の二人は、これから一段上へ登るわけです。
演じる小池栄子さんと小栗旬さんが先に上り詰めて行ったように思える、圧巻の演技を見せた回でした。
政子が、段々と鎌倉を統べるだけの風格を身につけつつあると思ったら、頼朝に恋をしたばかりの娘時代のように見えることもある。
所作もますます磨きがかかって、裾さばきや袖の扱いが洗練されています。
人は、所作でこれほどまでに美しくなると証明されているようです。
そして声音が素晴らしい。
落ち着いていてしっとりとしていて、柔らかいのに断固としている。あんな口調で語られたら誰が断れるものかと思ってしまう。
小栗旬さんは疲れ、燃え尽きたようで、声が低く囁くように話します。
それでも滑舌がクリアではっきりと聞こえる発音で、澱みが全くない。
涙がこぼれそうで堪えているような苦しみ。ずっと足の裏を炙られているような、そんな痛みがずっと表情に宿っていました。
八重さんにふられたと泣いていたころから随分と遠くへきたものです。
伊豆に戻って米を数えたいと言いますが。
基本的に善良なのかと思わせるようで、いざ戦うとなれば相手の足元をすくう材料を集めているようにも思える。
敢えて悪どく生きるつもりは全くないのに、生きるためにドス黒くなる。そんな未来が見えてきます。
そして単独でも素晴らしいのに、姉と弟が並ぶことで凄みが出てくる。
同時に倒さねばならないという、そんな手強さが出てきます。
この二人を見ている限り間違いない――そう思える力強さがありました。
総評
「もう帰ってもいいですか?」
そう言い出した今回ラストの義時。
これはもう、細川重男先生が解釈する義時像で正解だと思えました。以下の記事です。
◆鎌倉殿と仁義なき「やくざ」たち 義時は「もう帰っていいですか?」(→link)
義時は野心があったわけでもない。
一番幸せだったのは伊豆にいて米の収穫量を木簡で数えて、八重さんに淡い恋心を抱いていたころ。
北条義時が手にしていた「木簡」紙の普及が遅い東国では超重要だった
続きを見る
それなのに、ゴタゴタが起きて巻き込まれていく。
そんな義時像だと細川先生は推察しています。
表に出てくるかどうかはわからないけれども、三谷さんは細川先生の本を読み、影響を受けてているのではないかと思えるほど。
そして細川先生も本作に納得しているということで、そりゃ成功もするとは思えるところです。
今回も圧巻の演技とセリフの良さで、大変面白かったとは思えますが。
しかし、気になるところがなかったわけではありません。
全成擁立が妥当なのか?
時政とりくの全成擁立計画が、なんだか雑だなぁ……と感じたのが今回の欠点だと思えます。
全成は野心もないし、政治力もない。
頼朝が落馬したことをコケにしている御家人が納得するとは到底思えない人選です。
もしも源範頼が存命であればわからなくもないのですが。
あの大江広元ですらすんなりと計画に乗ったことも不可解ではあります。
正統性がないと真っ先に反対しそうに思えます。
頼朝は上洛の際、大姫の入内工作だけでなく、頼家が次の鎌倉殿であるとお披露目根回しする意図もありました。
頼朝喪中であるのに昇進するという工作には、土御門通親の支援もあって通っています。
公家から武家の社会へ 混乱期の朝廷を支えた土御門通親は現実主義の貴族だった
続きを見る
となると、広元は真っ先に「いや、頼家様でしょう」と言いそうなものなのです。
そういう無理のあるプロットであり、欠点は指摘していきたいところです。
ただ、意図はわかります。
女人入眼の大河ドラマ
今回は、女性のリーダーシップや思惑がクローズアップされていました。
中世は世界的にみて、近代以降よりも女性の権利が強かったことが指摘されます。
何度も書いてきましたが、この時代の日本は中国で前例があると「それはありだ」と受け入れます。朝鮮半島もその傾向があります。
政子は前漢・呂后に例えられました。
残忍な呂后に例えるとなると、現代人からすれば悪いようで、当時はそうでもない。
女性が政治を行うことは中国でも前例があるし、ありではないかと思われていたのです。
武則天という大きな前例もあります。
そこを踏まえてか、政治性を出したいのだとは思えました。
結果、りくの夫・時政、実衣の夫・全成の主体性が薄れたようにも思えます。
そしてりくはともかく、実衣の政治的野心をクローズアップするための仕掛けが全成擁立策ではないかと思えるのです。
片方の性の個性を際立たせるために、もう片方の性を歪めてよいものか?
そう思うとすれば、意図は正解でしょう。
ジェンダーについて考えさせるというやり口を、挑発的にしている意図は感じます。
このドラマは何もかもが新しく、挑発的に感じる。ゆえに好き嫌いは分かれて当然ではないでしょうか。むしろ賛美一色になることを警戒したい気持ちもあります。
休みを挟み、いよいよドラマは次の章へ向かいます。
これまで以上に怒涛の流れを見せる中、振り落とされなようについて行きたいと思います。
源頼家は風呂場で急所を斬られて暗殺?二代将軍も粛清される鎌倉幕府の恐ろしさ
続きを見る
※著者の関連noteはこちらから!(→link)
本文に登場する関連記事
鎌倉殿の13人キャラ別人物伝 (◆が13人) | |||
---|---|---|---|
※スマホの場合は左右にスライドを | |||
◆北条義時 | 源頼朝 | 北条政子 | 源義経 |
◆北条時政 | ◆三浦義澄 | ◆大江広元 | ◆梶原景時 |
◆中原親能 | ◆比企能員 | ◆和田義盛 | ◆三善康信 |
◆安達盛長 | ◆八田知家 | ◆足立遠元 | ◆二階堂行政 |
三浦義村 | 畠山重忠 | 大姫 | 土肥実平 |
伊東祐親 | 八重姫 | 亀の前 | 岡崎義実 |
大庭景親 | 武田信義 | りく(牧の方) | 牧氏事件 牧氏の変 |
千葉常胤 | 上総広常 | 北条泰時 | 木曽義仲 |
比企尼 | 大進局 | 山内首藤経俊 | 阿野全成 |
源頼家 | 源実朝 | 源範頼 | 源行家 |
平清盛 | 平宗盛 | 平維盛 | 北条宗時 |
後白河法皇 | 丹後局 | 平知康 | 仁田忠常 |
安徳天皇 | 藤原秀衡 | 藤原泰衡 | 文覚 |
後鳥羽上皇 | 土御門天皇 | 清和源氏 | 桓武平氏 |
富士川の戦い | 一ノ谷の戦い | 壇ノ浦の戦い | 承久の乱 |
※リンク先ないものも順次アップしていきます |
文:武者震之助(note)
絵:小久ヒロ
【参考】
鎌倉殿の13人/公式サイト