鎌倉殿の13人感想あらすじ

鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第6回「悪い知らせ」

2022/02/14

比企尼が書状を読み、感無量になっています。

佐殿の挙兵を信じていたのですが、緊迫の嫁姑争いが発生。

嫁の道としては、こんな危ないギャンブルに家を巻き込みたくない。

嫌そうな顔して、義母がこっそり源頼朝を助けていたことに気づいていたと言います。

しかし、姑の比企尼は嫁の嫌味に気遣わずに前のめりで、間に挟まれた比企能員は迷うばかり。

結局、母には勝てません。早く戦の支度をしろ!と言いつける母に折れ、大声で家中の者に準備を命じます。

比企能員
比企能員はなぜ丸腰で北条に討たれた?頼朝を支えてきた比企一族の惨劇

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そんなタイミングで、最悪の報告が届きました。

石橋山で頼朝が大敗したのです。

こうした反応は何も比企家だけではなく、関東のあちこちで起きていたでしょう。

そして女性が家の行く末に口を挟むこともありました。

 


洞窟の頼朝と目が合う景時

雷雨が降りしきる中、山内首藤経俊らが山中の頼朝を探しています。

山内首藤経俊
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経俊と離れた梶原景時が、洞窟の中に潜む頼朝一行を見つけました。

雷鳴が鳴り響き、目が合う頼朝と景時。

この光景は前田青邨筆『洞窟の頼朝』という絵画が有名で、私も昔その絵を見たときに、なんて格好いいのかと胸がときめいたものです。

しかし、その思い出を上書きするような場面です。

眉毛をつぶし、猫が鼠を見つけたような梶原景時が圧倒的で、頼朝のなんと頼りないことか。

他の連中も捜索に来て穴を見つけますが、雨の中、引き返してゆきます。

九死に一生を得る頼朝。じっと楽しむように見つめる景時。

景時は「隠れるところはどこにもござらぬ」と嘘の報告をし、一行を助けると、頼朝は土肥実平に名前を聞きます。

梶原景時――。

梶原景時
なぜ梶原景時は鎌倉御家人たちに嫌われたのか|頭脳派武士の無惨な最期

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「覚えておこう」

そして、ほっと一息つくのでした。

 


「武田信義である」

頼朝の軍勢は壊滅しました。

援軍を求め、甲斐を目指す北条時政と北条義時。兄の北条宗時がこの世にいないことを、父子はまだ知りません。

それにしても敵が大勢うろうろしている中、甲斐まで向かわされるのだからたまったものではありません。

甲斐源氏の長である武田信義の陣にたどり着き、面会を果たします。

「武田信義である」

居丈高な相手に、頼朝の舅と名乗る時政。

しかし相手は見下すかのような尊大な態度です。手を組みたい、力を貸していただきたいという二人に、条件をつけました。

真の源氏の棟梁は信義であると認めること。

頼朝は名乗っているだけ、というのが武田信義の認識です。

武田は血筋では相手にならないと頼朝もバカにしていましたが、どっちもどっちでしょう。

武田信義
武田信義(信玄の先祖)は頼朝に息子を殺されながら甲斐武田氏を守り抜く

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「かしこまりました」

そんな事情を無視して即答する父。慌てて嗜めようとする義時。佐殿はわしが説き伏せると言っていますが、時政を真似てこう毒づきたくもなる。

おめえ、先週、大庭景親を挑発するつもりが挑発されて大敗の原因になったじゃねーか!

案の定、無理だと義時はアッサリ断言しました。

頼朝が自身で兵を率いて平家討伐をすることを義時はわかっています。なぜ時政はそこがわからんのかなぁ。

信義はそんな時政を見抜いたのか、馬の前に人参をぶら下げてきます。頼朝に力を貸す気はないが、北条には味方するってよ。家人になるならという条件付きで。

案の定、浮かれる時政です。

北条時政
なぜ北条時政は権力欲と牧の方に溺れてしまった?最後は子供達に見限られ

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こうした、忠義とはほど遠い姿勢がドライだのなんだの言われますが、私は「原始的」と呼びたい。

原始時代、我々の先祖は「お前ら、俺に味方したらこの果物やるぜ」と言ってくる相手に「運が向いてきたな!」とついていったんですよ。そういうことだ!

そんなバナナを見た猿状態の時政は、後白河法皇の【院宣】を噂通り持っているという噂は本当かと信義に問われます。

噂だと誤魔化そうとする義時に対し、あっさり認める時政です。

父子だけになると、おにぎりを食べながら時政はウキウキしています。

運が見えてきたってよ。佐殿は先が見えたし、手を切るのはいいかもしれない。政子は不憫だが、またいい縁もある。

義時が佐殿を見捨てるのかと唖然としていると、北条のためだと開き直っております。

それ以外に北条が生き残る術があったら言うてみ。そうあっけらかんとしている時政を前に義時は落ち込むばかりで、目から光が消えていく……。

思えば熱血過ぎたけど、宗時は綺麗な目をしていましたね。

さて、頼朝一行は――。

 

頼朝に自害の作法を押し付ける実平

頼朝は洞窟で読経し、土肥実平は木の実を食べています。

やっぱりこいつらも原始的では?

実平は、なぜか楽しそうに自害の作法を語り出します。

「そういう話はしたくない!」

何を考えているんだ、実平よ。空気を全くよまず、自害の作法は「鎧を脱いで松葉を敷いて……」と具体的に語り出す。

そこへ安達盛長がやってきて、もう箱根権現を頼るしかないと悲壮な表情です。

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疑り深い頼朝に信用された忠臣・安達盛長|鎌倉幕府ではどんな役割?

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距離は北西へ25里。

時代によって差はありますが、1里4キロほどと考えるとこれは辛い。敵がウヨウヨしている中を100キロですから、死んでしまいますって!

一方、時政と義時親子はそんな「敵兵の中を走り回れ!」クエストを堪能しています。ゲームにされたら、ストレス溜まるだろうなぁ。

そして父子と敵兵の間で戦闘開始です。

殺陣が相当高度ですね。

本作は弓矢を用いていますが、弦が跳ねて当たると痛い。森の中の殺陣だと木にあたりかねません。

しかも走りながら刀を振り回している。まだ武術の型が荒削りなので、本当に危険です。

それを高度な撮影技術で、森の緑も実に美しく描かれていますね。

戦闘内容も戦国時代との差異も感じさせないといけないのですから、これは相当に骨が折れたことでしょう。

追手らしき兵を無事に討ち取った時政は、倒れた敵の竹筒を取り、水をごくごく飲んでいます。そして我が子に「戦はもういい」と言い出す。

おい、武士の本分はどうした!

と、思ったら心が折れたようです。

伊豆山大権現に向かい、りくを連れ出し、みんなでどこかでひっそりと暮らしたいってさ。

義時は抵抗します。

院宣はともかく、佐殿は放っておけないと。どうせもう殺されていると悲観的な父に対し、兄上が戻ってくると義時は返す。

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兄上が生きている限り、必ず道は拓けると言い切っていますが、その兄はもうこの世にいません。

しかし、弟には大きな責任感を残していきました。

 


野心なき時政と義時

伊豆山大権現で北条政子が、りく(牧の方)に「父のどこがよかったのか?」とぶっきらぼうに尋ねています。

しかしりくは、政子こそ佐殿のどこが好きかと聞き返す。

「あの方はいつか必ず何かを成し遂げる方……そういう人だとピンときたから」

艶っぽい声でそう語る政子。

小池栄子さんの魅力なんて誰もがもう語り尽くしていますが、私からも付け加えさせてください。

ぞんざいな時と、この頼朝がらみでうっとりしたときの声。どこか甘く酔いしれたような声音になって素敵です。これは惚れますね。

りくは「私と同じだ」と政子に返します。そして私の番だと言い、亡き母上はどんな方であったかと聞いてきます。

おとなしい人だった。そう語り出すと、実衣も話を始めます。

母上を忘れないとは思っていたけど、近頃顔を思い出せない。大好きだったし優しかった。でも、どんどん忘れていく。

政子も同意します。どんどん、忘れてしまう……。

りくは「随分といい加減な人たち!」と呆れたようで、何か見出しています。

母が父に文句を言うことはなかった。言われるがままだった。つまりは正反対である。そう聞かされ、りくはこう返します。

「私と?」

政子はここでこう認めます。

だけど、りく殿と一緒になられてから、父上は変わられた。なんだか楽しそう。本当は色々言って欲しかったのかもしれない。

りくは完全に何かを吹っ切ったような宣言をする。

「戦が終わったら、もっともっと焚き付けてやります!」

おおっ! りく、政子、実衣という三者の生き方が見えてきましたね。

この3人には共通点があります。

3人とも“悪女”と呼ばれる。『鎌倉殿の13人』は悪女率が高いのです。

でも、彼女たちの弁護をさせてください。

こうやって誰かが焚き付けないと自分らしさを出せない男もいるから、悪女になってしまう。女だけで自己実現しようにも認められず、男の力を使わないとならないから、そうなるのです。

打算でなく、愛情だけで結びつけたいのならば、女性の権利を認めた方が手っ取り早い。

いい子は天国に行けるけど、悪い女はどこにでも行ける――メイ・ウェストという女優の言葉を彼女らに送ります。

実は、時政にも、義時にも、野心はありません。

伊豆山大権現に義時がやってきて「一緒にどこかで暮らそうや」と告げたとき、時政はそれでよいでしょうが、りくは不満でしょう。

りく(牧の方)
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この場面で、時政とりくという二人の野心が対照的に描かれました。

義時だって、平家の統治にそこまで不満はないような姿勢だった。

それが政子が頼朝と結ばれて、兄・宗時が何かに取り憑かれて――そんな何かを吸い取って、彼は変わりつつあるのです。

 

休戦協定を結んだ両軍だが

時政と義時は、浜辺で船を見つけました。

そこにいたのは三浦義村です。

「平六ー!」

義時が声を掛けると、義村は頼朝救出作戦に取り組んでいました。

山中にいるから探し出したいけれども、大庭の兵がいてなかなか見つからない。

こんな雑な状況でよくやっていけるわ……と思ったら、義村も内心イヤだったようで、時政と義時を発見して好都合と考えた模様です。

義村って極端なめんどくさがり屋というか。やっても無駄だと思った労力は極力避ける傾向があるんですね。

前回の放送で酒匂川の濁流に行く手を阻まれていたとき、露骨にかったるそうな態度で「父上がよろしければ」を連発していました。

あのときの義村は、父を正しいとは思っていない。しかし、父を翻意するよう説得することがひたすらめんどくさい。

失敗した時「父上が言ったんだ、俺のせいじゃない」と逃げられるし、親には逆らえないとアリバイになるし、色々面倒ですっ飛ばしているだけであって、従順でもなんでもないでしょう。

三浦義村イメージイラスト
殺伐とした鎌倉を生き延びた三浦義村|義時の従兄弟は冷徹に一族を率いた

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義村は、義時とこれまでのことを話し合います。

三浦は三浦で大変だったそうで、石橋山の敗走を聞いて引き返したところ、畠山重忠とでくわしたのです。

重忠が裏切ったのか!と言いつつも、次郎(重忠)の父上は平家と繋がりが深いから……と理解を示し合う二人。

ここ、大事ですよね。

相手の事情も想像できるだけの知性が二人にはある。だからこそ成立する会話です。

そして、その遭遇戦の回想へ。

馬上で出会した畠山と三浦の両軍勢。重忠は、三浦義澄にこう言います。

「戦をするのは本意ではありませぬ。坂東武者同士で争うのは無益です」

「わしも同じじゃ」

「会わなかったことにいたしましょう」

「あいわかった」

万事うまくいくはずだった。

苦々しくそう振り返る義村。彼はそのとき、和田義盛の存在に気付きました。

弓を持った義盛に対し、休戦が決定したばかりの義村は慌てて「おーい!」と手を振ります。

しかし、それを制止ではなく、「かかれ!」と勘違いした和田義盛。

「(矢を)放てー!」

「おおー!」

なし崩し的に戦闘が始まり、重忠は馬上で叫びます。

「謀られた!」

悔恨の表情を馬上で浮かべる重忠――そんなシーンを思い出しながら、義村は義時に対して「あれじゃ騙し討ちだ」と苦々しい顔をしています。

あれ? いま義村は「義盛を早く片付けたい」と思ったんじゃないかな?

義時は不安げな表情で義村に尋ねます。

「次郎(重忠)は死んだのか」

「知らん」

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鎌倉武士たちの憧れだった畠山重忠|時政と牧の方にハメられ悲劇の最期

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合戦は大変です。

軍勢をきれいに並べて「さぁ、戦いだ!」なんて展開ばかりではなく、戦いが始まるまで、敵がどこにいるかもわからない。

将にしてみれば、無用な戦いで自軍の損耗は避けたいものです。

その点、義澄と重忠の判断は順当なものでしょうが、とにかく和田義盛のようなタイプは止まりません。

こんなアホな顛末を見たら、戦国武将も『三国志』のみなさんも「ありえない! ストレス溜まる! 洒落になってない!」と大いに嘆くことでしょう。

『三国志』の時代には既に、突出する猛将タイプは叱られました。軍令違反はダメ!という認識があった。

張飛や呂布のように猪突猛進の印象があるかもしれませんが、いくらなんでもここまで酷くありません。和田義盛と比べると、むしろ呂布はインテリに見える。

※呂布は中国本国よりも日本で知略が低く見られているという事情もありますが

要するに、攻撃の合図とか、規律とか、その辺の重要性は理解されていて、和田義盛があまりに原始的なのです。ノリと勢いで合戦しないで……。

と、和田義盛のことを考えるだけで脳が溶けそうになりますので、次のシーンへ。

義時と義村は、安房を目指すことにします。安西景益が味方してくれるとのことで、三浦義澄も向かっているそうです。

そこで船に乗ろうとすると、時政が先に乗っていて、さっそく何かを食べている。

坂東武者さん……食べ物を見つけたからって、即座に食べ過ぎではありませんか? 土肥実平も木の実を食べていたし、空腹なのはわかるけれども。

義村がそれは佐殿の船だと止めようとすると、時政がまたギャーギャー言い出します。

「聞かないでくれ」

そうボソリと言う義時は、頼朝を連れてくると請け負います。

 

八重の全てを失った絶望

夜、伊豆大権現で政子は目を覚まします。

翌日、りくが八重を政子たちのところまで連れてきました。

よくここがわかったとりくが感心していると、身を隠すならば必ずここだと思っていた八重が答えます。

思えば仙鶴丸を出家させたと言われたのもここですし、目星はついたのでしょう。

八重は熱っぽく、石橋山で敗れた頼朝は生きていると言い出します。なぜそれを存じているのかと聞かれると、昨日の明け方、夢枕に立ったとのこと。

佐殿は「わしは生きている、案ずることはない」と言ったとか。少しやつれているけれどもお達者であったと八重はうれしそうに語ります。

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鎌倉殿の13人で頼朝と義時の妻だった八重はどんな女性?そもそも実在する?

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政子の目がギラギラしてくる。そしてこうだ。

「不思議なこともあるものだわ! 佐殿は昨夜、私のところにも立ってこられました!」

少しやつれているけれども、お達者のご様子だったと同じことを言う。そしてそっちは明け方、こちらは夜中としょうもないマウンティング。

すかさず、りくが

①政子
②八重

と念を押しています。

一応、知らせてくれたことに礼を言いつつ、あとは佐殿が無事に戻るのを待つことを祈ると言い、話し合いは終わります。

その様子を実衣が覗き見していましたが、とにかく政子はお怒りだ。

なんであんな女の夢枕に立つ!

もはや正妻の余裕は無いようで、実衣が、政子のところにも来たでしょ、とフォローをしても、実際は来てないから悔しいのだと明かされます。やっぱり。八重と同じことを言ってましたもんね。

たかが夢と言われようと放っておけない政子は桶を蹴り飛ばし、水を豪快にこぼします。そして実衣が悲鳴をあげるのでした。

いやぁ~、政子の激怒はまだまだこれからですよ。

彼女は暴力も躊躇しません。来週は頼朝の愛妾・亀の前も出るから、今後も期待ですね。

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なぜ亀の前は政子に襲撃されたのか?後妻打ちを喰らった頼朝の浮気相手

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哀しいのは八重です。

家に帰ろうとした彼女は子どもたちが遊ぶ姿を見かけます。そこには頼朝と政子の娘・大姫もいました。

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頼朝と政子の娘・大姫|婚約相手を父に殺され 結婚前に夭折してしまう

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八重が思い出すのは、当然、千鶴丸のことです。

ここにいるはずだと僧侶の文陽房覚淵(もんようぼう かくえん)に聞いても、相手は「何かの間違いでは」と返すばかり。

八重も必死で、そんなことでは引き下がれません。

夫が戦に出て、ようやく家を抜け出せた。千鶴丸に一目会わせて欲しい。離れたところから見るだけでも構わない。

そう食い下がる彼女に、覚淵は言います。

「こちらへ」

五輪塔墓があり、合掌する覚淵。ここへ来たときは既に骸(むくろ)なっていた。川で溺れたのだと。

八重は呆然として言います。

「立派なお墓……」

伊東殿たっての願いだと聞かされ、八重は墓石に触れて号泣します。彼女は全て気づいた。千鶴丸が死んでいること。殺したのが父であること。何もかもが砕け散りました。

頼朝の血を引く子を殺した伊東。その家の娘である八重。もうどこにも、彼女の救いはないのかもしれません。

全てを失った絶望。新垣結衣さんのこんな姿を見ることになるとは……また新たな姿を見せています。

 

大庭陣営に宗時の首

頼朝を探すため、義時が山中を歩いていると、突如、背後から喉元に刃が突きつけられました。

土肥実平です。

目が綺麗で愛嬌があるけど、人殺しには慣れていますね。かわいい猛獣みたい。

土肥実平
初戦で敗北の頼朝を支えた土肥実平|西国守護を任される程にまで信頼され

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その実平が状況を説明します。

箱根に向かうも、敵がうようよしていて引き返し、無駄足になったとか。頼朝は不貞腐れて寝ています。

こんな絶望的な状況で、義時は「援軍は無理だ」と言わねばなりません。武田のことは忘れろとボソリ……。

この援軍要請は無駄足に終わったため、他のフィクションではあまり扱われません。そもそも武田信義がほとんど扱われません。

八嶋智人さんはいい役を演じたものです。当時の武者らしく粗暴なのに、『ベルサイユのばら』に出てくるポリニャック夫人みたいな腹立たしい傲慢さがありましたよね。面白かった!

まぁ、そんな武田は忘れまして、岩浦から船を出すと告げます。距離は東へ25里で、そこから安房に向かう。

また25里かい!と嘆く頼朝はさておき、兄の宗時が相変わらず戻ってこないと聞かされ、義時は不安げです。

宗時の首は、大庭景親の陣にありました。

手を合わせているのは、伊東祐清。今年の大河は生首率が高くなりますが、父の伊東祐親は頼朝の首がないことを残念がっています。

そして許せんのは三浦!と言い切ります。ギリギリまで味方と思わせて裏切った。

かくして畠山重忠に、本拠地の衣笠を攻めさせることになりました。

中川大志さんがすんなりと膝をついておりますが、甲冑を着てこういう仕草をできるところが素晴らしいと思います。馬上で抜剣する難しい動作もこなしていました。

彼は大河出演歴はあるとはいえ、ほとんどスタジオ撮影だったとか。それなのに、あぁもうまく演じるなんて驚くばかりです。

畠山重忠が馬上で刀を抜く場面は番宣でも使われていました。

理由はわかる。実に絵になります。あの動画を見た時、私は頭が一瞬麻痺したような不思議な気持ちになりました。

まるで彼は絵から抜け出てきたようで、大昔に見た本の挿絵が動いているような気持ちに。

子ども向けの本には綺麗なイラストがつくのは、今に始まったことではありません。

源平合戦が題材の児童書には、カラーで武者の美麗な絵が入りました。

「伊藤彦造 →link
「高畠華宵 →link
「石原豪人 →link

あたりで画像検索(link先)をすれば、雰囲気がわかるでしょう。中川さんの畠山重忠を見ていると、そういうクラシカルな源平の挿絵を思い出してしまうのです。

それだけ立派ではまり役ということでしょう。

配役の時点で勝ち戦――本作には、そう思える方が大勢いますが、中川大志さんもその一人です。

 

小舟で約60kmの海路という地獄絵図

義村が義時たちを待っていると、ワラワラと山の斜面から坂東武者が降りてきます。

怖っ!

困惑する義村はもう逃げるしかないと言い、慌てて船を出します。

中川大志さんも見事ですが、山本耕史さんも絵のように素晴らしい点では同じです。戸惑う顔から、サッと状況判断して退くところまで、かっちり決まっています。

ただし、彼の場合は山本タカトさんの怖い桃太郎こと『桃太郎鬼ヶ島討伐図』です。何かこう不穏なものがあって、そこがいいんですね。

※怖い桃太郎:『トリビアの泉』で使われたゲス桃太郎といった形容もされる絵のこと。美形だけどゲスな桃太郎像です(画像検索→link)。

義時が頼朝を連れて来るも、一足遅れました。

船がない!

そう慌てていると、土肥実平が真鶴まで行くと土肥の船が使えると言います。少し戻れば目と鼻の先だってよ。

「ならどうして最初からそこへ行かないのだ! もう無理じゃ、歩けん!」

そう嘆くというか駄々をこねる頼朝を、実平は「さぁさぁ参りましょう!」と促します。

ここまで空気を読めないからこそ、実平はよいのかもしれません。どんだけタフなんだか。

それにしても、初回では優雅で教養に溢れ、そりゃ政子も惚れると思えた頼朝がこうも無様になるとは。

所詮京都のボンボンなのかと呆れてしまい……いや、危ない、それは坂東武者の思考回路ですよ。これだけ色々あったら、そりゃ参りますよね。

このあと海上を漂うように進んでゆく小舟。頼朝は、舟に入る海水を汲み出し、その桶の中に後白河法皇の幻を見て慌てています。

「佐殿! あまり一点を見つめない方がよろしいかと!」

思わず心配する盛長ですが、さすがにこの状況は絶望的でしょう。東京湾フェリーがある時代に生まれてよかった!

現代の真鶴町と鋸南町の直線距離が約63km/GoogleMapより

かくしてボロボロになりつつ、やっと安房の浜辺にたどり着く御一行。

なんだかわからなくなってきましたねえ。なんで頼朝一行は生き延びたんですかねえ。運がいいんですねえ。

 

孫が祖父を攻め殺す世界

必死の思いで頼朝一行が安西景益の館へ向かうと、北条時政が出迎えます。

「佐殿が生きておられると信じておりました!」

時政を嘘つきが!と思いますでしょうか。どうなんでしょう。少なくとも、こう言った瞬間には心底信じていたのかもしれない。

ただ彼は思うことがコロコロと変わり、それを口に出す癖があるのではないでしょうか。

素敵な笑顔の景益が、頼朝を出迎えてくれます。このドラマの坂東武者は笑顔が似合います。

ノーテンキ……と言うと身も蓋もありませんが、実際そうですよね。

いま衣笠では平家方と戦の真っ最中ですし、時政も

「みんな聞いてくれ。誰か三郎を見た奴はおらんか?」

と不安そうではありますが、そうかと思ったら酒を飲み始める。その前にすべきことがある気がするのですが……。

岡崎義実もなんだか素朴な老人ぶりをチラッと見せているんですけどね。彼の嫡男・佐奈田与一義忠は石橋山で討死を遂げています。先週の紀行で解説されておりました。

三浦義澄が、時政に無事で何よりと声をかけてきます。

なんでも三浦一党は、義澄の父である三浦義明が時間稼ぎをしている間に落ち延びたとか。

この義明、驚きの享年89で(諸説あり)。

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孫の重忠に攻められ討死した三浦義明|超長寿な坂東武士の生き様とは

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だんだん脳みそが溶けそうになってきましたよ。

なんでこの人ら、身内が死んでも割と元気そうなんですか?

和田義盛はギャーギャーと「次郎の奴許せねえ!」と怒っているし。

この衣笠も壮絶で、三浦義明にとって和田義盛も畠山重忠も孫です。高校生くらいの孫が、89歳の祖父を攻め殺す、恐ろしい話なんだってば。

※つまり三浦義村・和田義盛・畠山重忠は従兄弟の関係になりますね

ここで義村は義時と二人になると、ズバリと聞いてきます。

「教えてくれ小四郎。佐殿はまだ戦を続けるおつもりか? どうなんだ?」

ずっとそばにいたのだからわかるだろうと聞いてくる義村。

そして和田義盛はまたなんか猛り狂っています。

「佐殿は関係ねえ! 坂東武者が決める! 大庭も伊東も畠山も許せねえ! とことん戦うしかねえ!」

『鬼滅の刃』の伊之助は、あくまで彼一人が獣だからいいのであって、現実世界では獣の呼吸の使い手がいると困る。そう痛感させてくれる、それが義盛です。精神衛生を悪化させますね。

義村は苛立ちながらさらに義時に言います。

「この戦、勝ち目はないぜ」

「そう思うか?」

大庭にも伊東にも頭を下げるしかねえ。頼朝を差し出すんだよ、それしか手はない。

そしてこう来ました。

「言っておくが、俺は頼朝と心中する気はねえ。早いところ見切りをつけた方がいいって」

義村の大叔父であり、三浦義明の弟である岡崎美実を思い出しましょう。

彼は頼朝に「お前だけが頼りだぞ!」と言われて籠絡されました。義村は違う。頼朝ファンクラブに入るつもりは毛頭ないのです。

でも聡明な義村にも、まだ読めていないことはある。

目の前にいる義時だって、実は頼朝ファンクラブ会員でもない。もっと別の動機あればこそ頼朝を庇っている。

そのことを互いに確認するときが待ち遠しくなってきました。

義時は変わっています。その本心を誰にも明かすことができないでいる。もどかしさと慎重さが入り混じった顔になっています。

小栗旬さんがどう変わるのか、毎週楽しみでなりません。

 

「お前が北条を引っ張っていくんだ」

仁田忠常が義時の元へやって来ました。

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頼朝古参の御家人だった仁田忠常|笑うに笑えない勘違いで迎えた切ない最期

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伊豆から北条へ戻ったものの、どこもかしこも伊東の兵でいっぱいで、身を隠すために北条館へ行った。そこでこれを見つけた。

宗時が探しに戻った御本尊こと観音像です。

愕然としてその像を見つめる義時。

時政は義澄と、しんみりと話しています。

話題は親族のこと。宗時が戻らない時政と、父・義明を亡くした義澄です。

「親父殿は無念だったな」と気遣われると、義澄は自分自身に言い聞かせるようにこう言います。

「戦で死んだんだ。本望、本望!」

「だな」

「お互い乗り越えていこうや」

「一緒にすんじゃねえ。三郎は戻ってくるって言ってんじゃねえか」

そう時政が力強く言うところへ、義時が像を手にして近づいてきます。

仁田殿が届けてくれたと語る義時。

ここからは父と子だけの対話になります。

「兄上はこれを取りに館へ戻られました。これが館に残っていたということは……」

「三郎のばか! これからだってのに何やってんだか。小四郎……わしより先に逝くんじゃねえぞ。これからはお前が北条を引っ張っていくんだ」

「私にはできません!」

「三郎がやりかけていたことをお前が引き継ぐんだよ」

そう言うと、時政は「風に当たってくるわ」と言い残します。

北条時政
なぜ北条時政は権力欲と牧の方に溺れてしまった?最後は子供達に見限られ

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義時の胸にはあまりに重たい兄の声が響いています。

「坂東武者の世を作る! そしてそのてっぺんに北条が立つ!」

すすり泣く義時。

あんな大きな兄を失い、あまりに大きな宿命を託されて、一体どうしろというのでしょうか。こんなに気の毒でよいものかどうか。

義時は頼朝に兄の一件を報告。手を合わせている頼朝に、こう言います。

「お急ぎください。皆広間で待っています」

しかし頼朝はこうだ。

「戦はもうやらん。どうせまた負ける」

「負けませぬ」

頼朝はうんざりした口調でこう振り返ります。

「いつ見つかるかわからん中、飯も食わずずっと息を殺していた。あんな思いはもうたくさんじゃ」

しかし義時はそれを許さない。

「風向きは変わりました」

義時も変わりました。

かつては知恵者の三浦義村の意見を確認していた。その義村が勝てないから見捨てようと言っても、聞かなくなった。

代わりに亡き兄の声を聞いているからこそ、彼自身の知恵で引き留めにかかります。

佐殿は生き延びた。佐殿は天に守られている。そのことはどんな大義名分よりも人の心を突き動かす。

そんな言葉がスラスラと出て来る義時が怖くなってきましたよ。あなたは、その頼朝の運ごと使うんでしょう? そう言いたくなります。

そして義時は、犠牲に手を合わせてしまう頼朝の責任感につけこみます。

このままでは石橋山で佐殿を助けて命を落としたものが救われない。平家の横暴に耐えてきた者たちの思いが今一つになろうとして、佐殿をお守りする。

そして必ず平家の一味を坂東から追い出す。そう語ります。

義時は聡明ではあるけれども、こうも弁が立つのは姉の政子であったはず。義時がメキメキと力をつけています。

「私は諦めてはおりませぬ!」

そう言う相手に気圧されつつ、頼朝はこう皮肉っぽく返します。

「戯言を。お前たちだけで何ができる。この戦を率いるのはこのわしじゃ。武田でも他の誰でもない」

「広間で待っております」

こんなところまで義時は姉に似てきた。

政子は相手の選択だと思わせつつ、自分の思うように誘導することができます。

小骨が多いからアジが嫌いだと言っていた頼朝に、敢えて小骨を抜いたアジを出した。アジそのものでなく小骨が嫌なだけなのだと誘導して、相手の好みすら変えた。

そういう技を義時も覚えつつあります。

頼朝はこう言いました。

「三郎のことはすまなかった。わしがあんなことを頼んだばかりに……」

「兄は戦うために生まれてきた男です。どこかに匿われているのかもしれません」

悲しみと、それを吹っ切った顔を見せる義時。

彼は目標を設定されると、そこへ走り出します。

兄から坂東武者の世を作れと託され、父からは兄のやり残したことを引き継ぎ、北条を引っ張れと言われた。その目的に向かい、悲しみをこらえて走り出します。

 

不気味な上総広常

頼朝が甲冑を身につけ、広間に来ます。

「お主たちの顔を見ると何やら勇気が湧いてくる! 形成はどうなっておるか聞かせてくれ」

頼朝にはどうやら人の心を転がす天性の才能があるようです。広間の坂東武者たちが酔いしれる様が伝わってきます。

大庭勢と武田勢が睨み合っている。千葉常胤と上総広常にも書状を送ったとか。

必ずや味方になると自信満々ですが、頼朝は思わず口にしてしまう。

「相変わらず絵に描いた餅だな……」

義時が咳払いをし、頼朝は反省します。

するとまた和田義盛が何か言い出した。

「佐殿、お願い申し上げます!」

この戦で一番活躍するのは俺だから、勝利にぜってー貢献するから! もしも大願成就したあかつきにはそれがしを侍大将にしてちょうだい!

なんなんだよ、子どもか! そう突っ込みたくなりますが、義盛なのでもう仕方ない。

周囲も「何も手柄を立てていないのに褒美をねだっている」と笑い出します。

しかし頼朝は「バカなの?」とは言わない。侍別当にすると約束します。

「ありがたき幸せ!」

大願成就とか。ありがたき、とか。そういうセリフだけでも「義盛くん、難しい言葉を言えたね、がんばったね!」と褒めたくなる程度には、私も慣れて来ました。

しかしこの後、千葉と上総の説得に和田義盛を指名するのは、どうなんでしょう。その辺の木でも切らせておけばいいのに。しかも義時がお供に行かされるそうです。

嫌すぎる……。こんな役目を自分に課されたら泣きますよ。もう無理。嫌な予感しかしない。

ともあれ、ここでひとまず締めます。

「戦はまだまだ始まったばかりじゃ!」

「おー!」

ここで後白河法皇の幻もご機嫌です。

さて、その上総広常は――。

鎧を脱ぎつつ、こう吐き捨てています。

「平家の犬どもめ、口ほどにもない」

そして頼朝からの書状が来ていると差し出されても、ぐしゃりと握り潰します。

広常は知っています。頼朝の運命も、自分の肩にかかっていることを。

上総広常
なぜ上総広常は殺されたのか 頼朝を支えた千葉の大物武士が不憫な最期

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MVP:上総広常・梶原景時・北条義時

誰が源頼朝のキングメーカーになれるか選手権ですね。

キングメーカーというのは王に就く人間を決める者のことで、シェイクスピア作品でおなじみの第16代ウォリック伯リチャード・ネヴィルがそう呼ばれています。

上総広常は己の強大な軍事力で、そうできると信じている。歴史でいえば、献帝を推戴することで権力を得た曹操が典型例です。

ただし、広常は曹操ほどの策士になれるかどうか?

結論から言うと、なれません。

梶原景時のあの顔は、ネズミを見つけた猫のようでした。

景時は「鎌倉本体の武士」と呼ばれました。

畠山重忠が「坂東武士の鑑」と呼ばれたのとは、どうも違うものを感じます。

景時は極めて賢かった。

讒言をして嫌われたとされますが、君主自身の決定に不満があると、往々にしてその側近が「讒言して決断を歪めた!」とされがちです。

嫉妬やそうした歪んだ感情を引き起こすのでしょう。

そういう人物って、敵からすればその側近を打ち破ればいいと狙いを定められるものです。

私が思うに、梶原景時は劉備にとっての諸葛亮みたいなものではないかと思います。

劉備は諸葛亮を迎える前後ではまるで違う。国家建設という具体的なビジョンは、諸葛亮抜きでは建設できない。

梶原景時も、彼を陣営に加えることで何かが大きく変わる。そんな頭脳があったのではないかと。

景時は自分の才知を生かせる場所を見つけたから、猫のように笑ったのです。

彼の知能を持ってすれば、全ての戦場は狩り場になる。

しかし景時は、諸葛亮ほどの人徳や自己正当化できる才知はなかった。ゆえに破滅します。

この二人の強大な軍事力と、明晰な頭脳に対し、まだ若い義時は誠心誠意をこめた語り口で頼朝を導いています。

義時は難しい。

この時期は頼朝のために駆けずり回っているだけで、本当にろくでもない役割を振られている印象すら受けるのです。

そんな、誠意しかない、真心だけでいる男が、最終勝利者になる。

これは恐ろしいことで、こんな面白い事例があったと世界史に向けてでも堂々と発信できる、かなり凄いことではないでしょうか。

誠意にあふれていて、信頼できそうな義時を、疑うことはできますか?

無理でしょう。人智を超えた罠かもしれない。

義時は自分でも無自覚のうちに、謀略を巡らせている。やり口は卑劣だろうと、大目標が仁のためならばよろしい。

そんなひねりにひねった展開が待ち受けているようです。

 

大河ゆかりの地を自転車で回ろう

今周は安西景益役で猪野学さんが出ました。

これまた登場人物一覧が、おもしろ顔グラシリーズ(※『信長の野望』『三国志』シリーズで顔グラが面白い武将のこと・二階堂盛義が代表)のような良い笑顔です。

彼は「坂バカ」、ヒルクライムが大好きなサイクリストとしても有名で『チャリダー!』のレギュラーも務めております。

大河コラボ企画では山本耕史さんとゆかりの地を自転車でめぐり、番組で大河出演を発表したのでした。

◆チャリダー★快汗!サイクルクリニック(→link

どうやら今年の大河は自転車を推していくそうで、一風変わった企画もあります。

それが伊豆半島サイクルラリーです。

◆伊豆半島サイクルラリー【2022年1月15日〜3月15日】(→link

38.5キロと90キロという、なかなか気合の入ったコース。25里にうんざりする頼朝気分を味わえますね。

大河でこんな坂東武者になりきる企画をするなんて驚きました。

キツイといっても、馬ではなく自転車に乗るわけだし。大庭、伊東、畠山の敵が襲ってくるわけでもないし。参加してみてはいかがでしょうか。

今年の大河コラボは個性的で実に興味深い。みなさんもチェックしていきましょう!

 

ナレ死もねえ! ロスもねえ! それが坂東武者だ!

まず突っ込んでおきます。

北条宗時の死についてナレーションがあったことを「ナレ死」とするネットニュースがありましたが、修正されたようです。

本来のナレ死の定義はこうだったはずです。

【最期の瞬間がなく、ナレーションで死んだとされること】

宗時は、刺される場面があったため「ナレ死」には該当しませんね。

そして「まさかの……」「ロス」というニュースも多くあります。

しかし、坂東武者に心がなりきった俺からすればロスはありえねえ! これから死屍累々なのに、たかがこの程度の死でショックを受けてたら身がもたねえ。

だいたいあの登場人物一覧がとんでもねえことになるのよ! 自治体コラボがコレだからな。

◆【タウンニュース横須賀版】三浦一族カレンダー 出陣から滅亡 月めくり 市HPから無料入手(→link

日にちをめくっていくと滅亡するのかー!

はい、なりきりはやめまして。とにかく坂東武者はこういう価値観です。

「平氏の連中は弱っちくていけねえ。あいつら身内が死んだくれえでメソメソしてやがらぁ。俺らはロスなんて言ってる暇はないぜーッ!」

「和歌ぁ? んな意味のねーもんなんでしやがんだぁ?」

人の死を悼んで文章を書くようなことはまずしないでしょう。そういう心理にならねば今後辛いと思います。

坂東武者って『北斗の拳』のモヒカンとか、『マッドマックス 怒りのデスロード』のウォーボーイズとか、『衛府の七忍』のぼっけもんみたいだな……と感じたとすれば、あながち間違いではないと思います。

ロスと言っている今はマシかもしれない。

感覚が中世になったら、ある意味この作品は完成します。

「感覚が中世って何?」

そう疑念を抱かれた方に、こちらを見ていただきたい。

 

『ゲーム・オブ・スローンズ』とコラボしたビールメーカーの広告です。

これをファンはネタにして爆笑しました。

ドラマ本編ではそれこそロスを味わっていたのに、人が惨殺されるコラボ広告では笑ってしまう。むしろ惨殺でウケる〜〜となってしまうことこそがおそろしいのです。

吾妻鏡』には、「アイツの死に方無様でマジウケる〜」とケタケタ笑う坂東武者さんの会話が記録されていまして。宗時お兄ちゃんが死んだ頃は真面目だったよね、うちら……と、こうなったらある意味完成します。

それがいいのか悪いのか。ロスというよりも、読経がおすすめですね、心も落ち着くし。

 

総評

サブタイトルからして、肉親の訃報というおそろしい事態がもたらされると予測できた回でした。

墓石を前に泣く八重。

絞り出すように、自分より先に逝くなと義時に言う時政。

兄の死を乗り越えるべく奮闘する義時。

そこには悲しみがありました……と言いたいようで、どうでしょうか。

岡崎美実は兄と我が子を亡くしている。三浦義澄は父を亡くしている。三浦義村は祖父を亡くしている。

最もまともそうな畠山重忠が、祖父・三浦義明を討ち取っている。

その割に、悲壮感が薄いとは思いませんか?

なんのかんので安西景益の用意する酒を飲んでいるしな!

彼らを見ていて、ふと考えるのが動物の感情です。

動物は、喜怒哀楽のうち“哀”が薄い。

なぜかというと、“哀”を味わい落ち込んでいると、個体の生存率が下がるから。他の感情は生き抜く上でむしろあった方がいい。

しかし“哀”だけは別。気持ちが沈んで弱くなったら、隙が生じます。

このドラマの坂東武者とは、喜怒哀楽のうち、“哀”以外はむしろ濃厚に思えます。和田義盛なんてその典型でしょう。

むろん、ふざけているのではなく、これは意図的に人間の進化段階として描いているのかもしれない。

“哀”という感情は高度で、かつ宗教や道徳で規定されます。

たとえば儒教では、服喪中はストイックなまでの節制を求められます。

酒はダメ、肉も禁止、薬も飲むな。

服喪期間が長すぎて「やりすぎじゃないか」という批判が定期的に入ります。

正史『三国志』著者の陳寿は儒教の規定する服喪期間に薬を飲んだだけで酷い目にあっています。

そんな儒教規範がまだ、この時代の坂東にはなかったんだな――と痛感させられます。

大河と儒教規範って、それこそ小島毅先生がノリノリで取り上げてもいいと思うのです。ここ数年、なかなか面白いことになっています。

2020『麒麟がくる』:朱子学規範を貫く明智光秀

2021『青天を衝け』:どこか歪んだ日本型陽明学と、水戸学を選んだ渋沢栄一や明治政府の人々

2022『鎌倉殿の13人』:儒教規範がまだ浸透していない坂東武者は、いかにして道徳を身につけるか?

2021年の陽明学は正直食い足りないと思いますが、他は充実しています。

今年の大河が抜群に面白いのは、人類の進化過程の一時期を切り取っていると思えるところでして。

このドラマを見て「わかりみー!」と言える人はむしろ信頼できない。はっきり言って、中世以前の日本人はアナーキーで理解できないんですよ。

人類普遍的なものってなんだろう? そう思ってしまう。

坂東武者たちは源頼朝にメロメロ。彼の口説きテクにやられてます。

幕府というものを立ち上げた時代は、キャラ萌えが重要でした。

『青天を衝け』でも出てきた徳川慶喜を考えてみましょう。

彼は幕臣からすら「あいつってゲスでサイテー」と罵倒されています。人間的にはどうかと思う。

でも幕臣にせよ会津藩士にせよ、慶喜の血筋と立場を守ろうとしました。

慶喜なんて鎌倉の坂東武者なら即座に殺しかねないほど下劣な一面がありますが、武士の認識が変わったからこそ、死にもせず駿河で趣味に生きる余生を過ごせた。

キャラ萌えと感情よりも、権威と忠誠が上になったんですね。

そういう人類の進化を感じさせるから、今年の大河はいい。

登場人物一覧は底抜けに明るい笑顔か、殺気だった顔が多い。

ああ、きっと自分の先祖もこの時代はこういう顔だったんだな。それでがんばって生きていたんだなって、下手に現代人の共感を求めるよりいいなと思えます。

人類が何であるかとか、歴史学を学ぶ意味とか、そういうことを教えてくれていると思えるのです。

今年の大河は、ともかく推せます。


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【参考】
鎌倉殿の13人/公式サイト

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武者震之助

2015年の大河ドラマ『花燃ゆ』以来、毎年レビューを担当。大河ドラマにとっての魏徴(ぎちょう)たらんと自認しているが、そう思うのは本人だけである。

-鎌倉殿の13人感想あらすじ

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