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『光る君へ』感想あらすじレビュー第25回「決意」

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『光る君へ』感想あらすじレビュー第25回「決意」
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道長、藤原為時の娘の結婚を知る

まひろは、白居易の新楽府を詠んでいます。

君の門は九重(きゅうちょう)閟(と)ず

君の耳はただ聞こゆ堂上の言

君の眼は見えず、門前の事

君子の門は九重に閉じている

君子の耳には堂上の言葉しか聞こえない

君子の目は、門前で何が起きているのか見ようとしない

この場面から、まひろも政治情勢に不満があることが見えてきます。

そこへ宣孝がやってきて、軽口を叩く。

「越前では忙しそうなのに都では暇そうだ」

たしかに越前編では、史実をまげてまでまひろを政治に関わらせました。都ではそれができない。

ただし、暇とは言っても、まひろとしては白居易の作品から政治批判を探したという気持ちはあるのでしょう。

まひろが反論すると、宣孝は「叱られた」と嬉しそう。

宣孝は、道長に会い、まひろを妻としたと告げたことを明かします。

まひろはムッとして、宣孝に問い詰める。

「なぜそのようなことを告げたのか」

告げておかないと、後から意地悪されたら困る。そう軽く言うと、まひろはムッとしたまま意地悪な言い方だと返します。

「好きだからだ、お前のことが」

「お帰りくださいませ」

「はーい。また叱られてしまった」

こう軽薄に返す宣孝ですが、ここでのまひろはかなり怖い顔でした。

何か考え込むまひろ。

目が泳いでいて、頭の中が回っていることが見て取れます。

そのころ道長は、迎えの車が来ても帰らず仕事に打ち込むと告げていました。

意気消沈した様子で、それからまた「うむ……」と言う。いったい何種類の「うむ」があるのか。何度も瞬きをして、彼なりに考えていることがわかります。

考えた結果はまひろへの結婚祝いでした。

翌日、まひろのもとへ、百舌彦から高級品がいくつも届けられました。

驚くまひろ。

「偉くなったのね」

そうしみじみと百舌彦に声をかけるまひろ。月日が流れたと答える百舌彦。

彼はうやうやしく書状を託します。

まひろがいそいそと開くと、どう見ても道長の字ではない。達筆すぎます。まひろは何か思うところがあるようです。

道長最高の贈り物とは、自分ではない字の書状を渡すことで、まひろを解き放つことだったのか。

まひろは自室へ向かい机で何か書状を書いています。

竜胆の枝を文につけ、乙丸に渡すと、このあとすぐ夜の場面へ。

文の中身が推察できます。思いを吹っ切ったまひろが、夫となる宣孝に送る文である、と。

まひろが待っていると、宣孝が訪れます。

「私は不実な女でございますが、それでもよろしゅうございますか?」

「わしも不実だ。あいこである」

「まことに」

そう二人は語り合い、宣孝はまひろを抱きしめ、横たえます。

まひろの手が宣孝の背を這い上がってゆく……それにしても、すごい着地点です。

年齢差もあり、紫式部は妥協の結婚というイメージが強い。しかもこのドラマでは道長と相思相愛でした。

確かにまひろは不実です。

そんな不実な女と、年上男の結婚を、こうも甘ったるくロマンチックに描く。

このドラマは難しいハードルを次から次へと超えてゆく、そんな際立った様を見せつけました。お見事としか言いようがない。

そしてその翌日、日食が起こり、不吉な予感が漂うのでした。

 


MVP:藤原道長

道長のことはさんざん無能だと書いてきました。

けれども今回、初見で「すまん、きみ、なかなかやるじゃないの!」と思わされてしまい、一晩経って、やはり有能とは言えないのではないか……と思うようになりました。

もしも本当にアイデアマンならば、それこそ「宋の技術者でも呼んで、治水対策ををしよう!」となってもおかしくない。

けれども道長は、帝のお許しを求めて右往左往するばかりです。

それもそのはず、道長が有効な治水工事をしたら歴史の改変になりますからね。

道長は極端な主人公補正もなく、実像にあわせてうまく作り込まれていると思えます。

有能すぎてもそれはそれでおかしい。仕方ありません。

来年の『べらぼう』における田沼意次とも比較してみますと、田沼には斬新なアイデアがあり、実行力もあった。

道長よりも革新的な政治家といえる。ただ、後世のイメージのせいで贈収賄だけしていたように誤解されたりしています。

二人とも後世のイメージにより、実像が歪んだ典型的な人物だと思えますが、それを修正することも大河の役目でありましょう。

道長については、後世のイメージである“野心がギラギラした像”を修正してきていると思えます。

まだ幼い彰子を入内させる道長は、定子を追い詰めるためのギラつき政治家として描かれることが多いものでした。

それがこの作品では、政治を糺すために、むしろ若い頃の理想を裏切ってまでそうする、苦渋の決断になるようです。

若い頃は娘を入内させたくないと語っていた道長。

それが追い詰めに追い詰められて、やむなく“御宝”を手放すことになる。

なかなかよい描き方だと思えます。

 


注目すべき政治劇

一条天皇の時代は、『枕草子』と『源氏物語』の舞台ですので、文学的な注目を浴びます。

本作は少しそこが浅いと思えるかもしれませんが、政治劇重視ではないかと思えてきました。

すると、道長の政治家としての力量とその限界点が見えてきます。

一方でまひろは鋭く、政治センスもあることがわかる。

越前編で、まひろは道長の決断力に不満を感じていた。いずれまひろが道長の政治センスのなさに失望するのではないか。

そんな伏線が撒かれているようにも思えます。

政治劇として、このドラマはよくできています。

『信長の野望』のパラメータのようなものが言動から見えてくるのです。

平安貴族は歌や蹴鞠だけでなく、政治もしていた。そのことも本作からはよく見えてきます。

けれども、根本的に何かが不足していることもわかります。

誰かが、堤の技術を大きく改善しようと言い出さないのはなぜなのか。

戦国時代の後半と比較してみると、その差は明らかでしょう。

各地の戦国大名たちは、戦闘術、そして石垣の積み方はじめ築城術をどんどん改善し、改良し、変えてゆきました。そうしないと生き延びることができない。

競争があればこそ革新は訪れる。

止まっていたら追い抜かれるだけなのです。

これは『べらぼう』の舞台である江戸時代半ば以降の江戸出版界もそうで、浮世絵を見ていくとどんどん色が鮮やかになり、彫りが細かくなり、画題も幅広くなってゆきます。

競争社会であったことがよくわかる。

こうした時代を比較すると、平安時代は止まっているようにすら思えてきます。

実力ではなく家柄重視であり、天皇と誰かの娘が結婚するか、否か。そこだけで歴史が動いてゆく。

これでは停滞もやむなし――そう思えてくるのです。

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文:武者震之助note

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