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【『光る君へ』感想あらすじレビュー第30回「つながる言の葉」】
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藤原為時の娘は物語を書くのがうまいとか
公卿たちが宴をしております。
この場面で出てくる料理は今の和食とは異なり興味深いものがありますね。
背景にある五色幕もよい。五行説由来ですね。
すると話題は『枕草子』へ。
中関白家の隆盛につながりかねないためか、行成が懸念していると、斉信はききょうにあれほどの才があるならば、手放さねばよかったと惜しんでいます。
斉信が、才知を見抜けなかった迂闊な者のようであり、先程の為時の言葉も打ち消している。
女の才知を買う者もいる、ということです。
藤壺を華やかにして対抗するのはどうかと公任が告げると、帝の倹約思考のもとでは厳しいと行成が首を横に振る。
そのうえで「帝は書物がお好きだから『枕草子』を超える読み物があればよい」とぼやきます。行成が筆写すれば一石二鳥ですね。
しかし、そのような面白い書物を書くものがいるのか――道長がそうぼやくと、公任が、そういえば、と気付いたように話し始めました。
四条宮の学びの会に、評判の物語を書く女がいる。どんな女なのか?というと、藤原為時の娘である。
斉信が「あぁ、あの地味な女か」と相変わらずな扱いをしていますが、プライドの高い公任としては、所詮女子どもの読むものと断りながら「妻も楽しみにしている」と認めているような発言をします。
「ふーん……」
そう言いつつ、全てが噛み合った顔になる道長。
晴明の言っていた女がまひろだったのか!
そう全てがカチリと嵌ったような展開――諸葛亮という臥竜を知った劉備のようですね。
まひろは書きたい 道長は書かせたい
まひろが熱心に何かを書いています。
賢子はおはじきをしたいというものの、「今、忙しい」とつっぱねる。
まひろは夜まで執筆中。一時退席すると、賢子がまひろの原稿に火をつけ、箱に入った書いたものに投げ入れました。
仕方ないとはいえ、こんないい紙に書いた、根本先生の作品が燃えてしまうとはとんでもないことです。
まひろが戻ってくると、慌てて火を消し止めます。
そして賢子を本気で叱りました。
木造建築の日本で火の不始末は洒落になりませんので、やりすぎとは思えない。
とはいえ、まひろは理詰めすぎて逃げ場を与えないので、賢子がかわいそうにもなってくる。
為時がなだめ、泣き出す賢子。
翌朝、為時が賢子を連れて賀茂神社に行くから、好きなだけ書けと告げています。
このあたりの展開も『虎に翼』と重なっていて、母が直面する仕事と育児の両立はどうするのかという課題に思えます。
NHKドラマチームは、時代を超えて直面する困難を取り上げたいように思えます。
ただ、時代の違いはあります。
育児にしてもそうです。昔の日本では、男子の育児は父、女児の育児は母の領分でした。馬琴は嫡男をあまりに厳しく教育しすぎて、なかなか大変なことになっています。
『べらぼう』の主要人物も、育児に失敗する男親が多いものです。
そこは本来、必ずしも女性だけが直面することでもありません。
さて、残されたまひろのもとに藤原道長がやってくるのでした。
MVP:あかね
なんなんでしょう、この、ヒロインが持っていないものを全部載せしたような女は!
実際の和泉式部を踏まえつつ、敢えてまひろがいろいろ突き刺さる造型にしていると思えます。
あかねははっきり言いまして、セクシー全開で相当危険な女性です。
何もかも委ねて、心開いて、愛嬌たっぷり。こんな美女と過ごせるなら人生全部賭けてもいい。捨ててもいい。
そうメロメロにさせてくるものがあります。
これまで出てきたどの女性よりも、ともかく愛くるしい。愛されヒロインとして最上級です。
相当身勝手で空気も読んでいないけれども「あかね様だから仕方ない」と本気で怒る気がでない性格をしているんですね。
一方、まひろは真逆。面倒臭い女です。
理詰めで、納得できなければ乗ってこないし、どこか心を閉ざしていて、ガードが硬い。
なんのかんので道長から「妾にならないか?」と言われたら、えげつない断り方をした。無言ですれ違う塩対応もした。
道長が鷹揚なので途切れていませんが、「あんな女は絶対許さん!」と怒ってしまう人がいても全く不思議ではないでしょう。
まひろは性格ひねくれてますね。しかし、そこが魅力でもあります。そのかわいげのない面倒臭さがいい。
演じる吉高由里子さんははっきりと「ああ、鬱陶しい」「舐め腐りおって」と顔に出すところがまだ素敵ですね。
今回、まひろは本当にめんどくさい――そのことを対照的なあかねが敢えて見せつけてきました。
名前だけが出てきている清少納言も、まひろほどはややこしくない。
そうして各人の個性を出しつつ、そりゃこれだけ皆性格が違うならば、アウトプットの結果も違うだろうと突きつけてきているのが、本作に思えます。
『源氏物語』は、日本では長らく数少ないの長編物語で、他の選択肢が限られておりました。
時代がくだると不動の名作となります。
でも冷静に考えてみると、何かこちらに突きつけてくるような、ややこしさがあります。
他国の古典と比べると、なぜ、日本代表はこんなに面倒なのだろうかと思えることもあります。
それも作者がめんどくせー女だったからだよ!
そうまとめられると、そうかもしれないと腑に落ちるのでした。
和泉式部(光る君へ あかね)は親王や貴族を虜にする“あざとい女”だったの?
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【参考】
光る君へ/公式サイト