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【『光る君へ』感想あらすじレビュー第31回「月の下で」】
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帝の愛が最愛の人を殺す物語
まひろが書き上げた物語を読み、道長は困惑していました。
「これではかえって帝のご機嫌を損ねるのではないか」
そう心配していると、まひろは答えます。
「これが私の精一杯です。これで駄目ならこの仕事はここまでです」
強気で言い切りながら、帝へ奉るようダメ押しします。
緊迫した場に、賢子がやってきました。
実の父である道長は年齢を尋ね、何か察知するというわけでもなく、母に似て賢い顔だと愛でている。
まひろが一瞬戸惑う表情をしますが、あの夜の子だと思われるようなこともないでしょう。
そして……道長が恭しく帝に物語を献上しています。
帝のお慰みになるとお持ちしたと捧げると、一応「物語か」と興味は示しています。
後で目を通しておくと言いながら、このようなことならば蔵人に渡しておけばよいと伝えます。
なぜ道長は自ら渡したのか。ふと思いましたが、彼なりの慎重さでしょうか。もしも蔵人が目を通して「これはまずい」となったら、阻まれてしまったかもしれません。
まひろはまだ熱心に執筆しています。
為時が「もう左大臣に出したものではないか?」と問いかけると、手直ししていると止まらないとのこと。
出してもまだ直すのかと問われると、こう返すまひろです。
「はい、物語は生きておりますゆえ」
生き生きとした顔で語るまひろ。
幼いころから変わっていないとも思えます。
考えること。頭を動かすこと。それをかたちにすることが楽しくて、楽しくて、やめられない。そんな本質を感じます。
帝は物語を手にして読み始め、愕然としています。
いづれの御時にか、女御、更衣あまたさぶらひたまひける中に、いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めきたまふありけり――。
いつの時代のことだったか。
帝が寵愛する大勢の妻たちの中に、それほどまで身分が高くはないのに、ひときわ重い寵愛を受ける女性がいた。
宮仕えをするなか、我こそはと思い上がっていた方々は、その方を目障りだとさげすみ、憎んでいたものだった。
帝は怯えたように、物語を閉じてしまいます。
MVP:まひろ
『源氏物語』を書き出すところで、まひろが目立たないわけがない。
このドラマらしいめんどくさい陰キャ全開で創作に迫ってきました。
惟規がズバリ言いましたが、まひろはめんどくさくて鬱陶しくて、性格がひねくれています。
大胆でもあり、いきなり道長に紙を大量請求してきました。
ここでドラマオリジナルの設定が生きてきます。
まひろと道長の逢瀬はドラマのオリジナルで、トンデモ展開ともされています。
それを活用し、どこまでも厚かましくて大胆で、欲しいものは何がなんでも取りに行く、不敵なヒロインに仕上げてきました。
さらには歴史の謎にも迫ってきた。
『源氏物語』の執筆動機。
執筆された順番。
諸説あります。
あまりに面白いから、帝は読みたくて彰子のもとに通うようになった。
そう語られるものの、考えてみれば、冒頭の「桐壺」からして帝へのあてつけのようにも思えなくもありません。
帝の重すぎる愛は、桐壺更衣を殺してしまう。
桐壺更衣が生きることを願いながら短い命を終えるところは、帝が殺したようにも思えます。
あてつけか!
そう怒る可能性もあったのではないか? と思えてきます。
『源氏物語』は不敬ではないかという論争は、古来よりしばしば起こってきたもの。
権力者のラブロマンスをこんなに挑発的に描いてよいのか。
そう困惑する人はどの時代にもいたものです。
ではなぜ、紫式部はそんな大胆なことをしたのだろう?
その大胆不敵でめんどくさい作者像を、このドラマは描き続けてきたように思えます。
ドラマでききょうは定子の影を描きたくないと語った。
まひろはその影を黒曜石の破片のように凝固させて、切り付けるような冒頭を書き上げてきた。
実に見事ではないですか。
「キーボード武士」の時代
大河ではありませんが、こんなニュースがありました。
◆NHK内部が激変し、劇的にドラマが面白くなった「最大の理由」…前会長時代は月に20人以上のペースで職員が辞めていった(→link)
確かに会長はじめ、人事がドラマを左右することはあります。
こういうことを言い出すと、陰謀論者扱いを受けるものですが、NHKについていえば皆さんちょっとナイーブ過ぎやしませんか?
この記事で取り上げている『虎に翼』は素晴らしいけれども、ガス抜きにされていないか、目くらましになっていないか。そこへの猜疑心は抱いていても良いのではないかと思います。
これは構造的な問題です。
NHKの予算は、国会審議を経て決まります。
◆なぜ、国会でNHKの予算を審議するのか(→link)
人事にせよ、放送法があるからには、政治と無縁ではいられません。
◆国との関係について知りたい(→link)
このような特殊な状況で、国や政治と無縁であると思うほうがナイーブなのではありませんか。
とはいえ、視聴者の方を見ず、政治のことばかり気にかけていては、見る価値がないと思われかねないジレンマが生じます。
客を無視してモノを作ってばかりでは「強制サブスク」呼ばわりもやむを得ません。
『虎に翼』は日頃NHKを見ない層にも届いているそうです。
NHKがジレンマ解消を全く無視しているわけではないという証左でしょう。
ただ、この記事には特徴がありまして。
NHKの悪いドラマとして朝ドラの『ちむどんどん』があげられています。
この作品は「袋叩きにしてもいい定番朝ドラ」枠です。この前は『半分、青い。』でした。
作品の好き嫌いは人それぞれであり、どうでもよいとは思います。
しかし、『半分、青い。』はヒロインがシングルマザーで、片耳失聴であること。
『ちむどんどん』は沖縄出身であること。
こういう点までしつこくあげつらい、叩いていて、差別とさして変わらないのではないか、いじめっこ心理ではないかと私は危ぶんでおりました。
石をぶつけていい枠なら、いくらでも何してもいい?
果たしてそういうものでしょうか?
それこそNHKの胡散臭いドラマということならばむしろ大河でしょう。
2010年代は大荒れでした。
2012年『平清盛』の「王家」論争で荒れ、2013年『八重の桜』では不可解なことが起きております。
2015年、2018年はさらにおかしい。
2019年はあの東京五輪、2021年は新札プロパガンダ、そして2023年はジャニーズタイアップ。
本来の目的を見失っているのではないかと思ったものです。
沖縄本土復帰50周年朝ドラよりも、ここであげたあやしい大河を取り上げてみてはいかがでしょう。
朝ドラがテーマな記事であるならば、特定の京阪神企業とベッタリ癒着した2017年、2018年下半期があります。
2020年上半期『エール』で大きくとりあげた作曲家なぞ、戦後「戦争犯罪人論争」まで起こっております。
朝ドラで褒めてよい枠なのかどうか、検討が必要ではないでしょうか?
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しかし、そうならないのは何故なのか?
2019年大河と2020年上半期朝ドラは東京五輪プロパガンダです。
このイベントはマスメディア全体で持ち上げようという機運があり、そういう枠だったからではないかと私は推察します。
みんなで盛り上げよう、和を乱すんじゃない!というわけです。
なぜこんな話をするか。それはX(旧Twitter)に懸念があるのです。
◆イギリス各地の暴動あおった「キーボード戦士」に実刑判決、死傷事件めぐる偽情報を投稿(→link)
以下の部分に注目です。
カタリナ・ショリン・ナイト裁判長は、「あなたはほかの人がやっていることに巻き込まれたのではなく、その行為を扇動していた」と被告に語った。
そして、「あなたのような『キーボード戦士』が火に油を注いだ」のだと付け加えた。
ナイト裁判長は、自分の行為は悪い冗談だったとする被告の主張を受け入れず、「どこにユーモアがあるというんですか、オロークさん?」と尋ねた。
「キーボード戦士」という呼び方が痛烈で、しびれました。
大河ドラマで言えば「キーボード武士」が発生しやすく、かつ、それに惑わされぬことが肝要に思えるのです。
キーボード武士の特徴を挙げるとこうなります。
・女性脚本家、女性人物を叩き、ミソジニーを発揮する
・何かと「大河は合戦がないと!」と言い出す
・大手アカウントの大河評価と己を一致させることで、安寧を図ろうとする
・敵認定した相手はともかく執拗に叩く
こうなってくると、ドラマ鑑賞や歴史が好きなのか、それとも群れて旗印を掲げ、雄叫びを上げつつ、何かを追い詰めることが楽しいのか、理解しかねます。
今日もどこかでバーチャル法螺貝を鳴らすキーボード武士団。
「おお、なんたる強者か!」と味方につけば頼もしく、敵に回せばおそろしくなるやもしれませぬが、立ち止まったほうが良いやもしれませぬぞ。
というのも、いわばエコーチェンバーで強気になった烏合の衆かもしれないわけでして。
ネットニュースはPV重視のため、キーボード戦士や武士を狙った記事が生まれます。
そしてますますエコーは鳴り響き、当事者たちは過ちに気づきにくくなります。
かつてインターネットは正解を探す場所とされました。
しかし今はもう、真実だけでなく妄想を膨らませるための餌も引っかかるから、そうともいえません。
今後「キーボード戦士」の処断次第では何か動きはあることでしょう。
大河チームはとうに気づいて、ネット評価を冷静に見ているのではないかと私は推察しています。
とはいえキーボード武士当事者はどうなのでしょうね。
うっかりキーボード武士を愛するドラマを批判してしまうと、『衛府の七忍』の世界観で薩摩ぼっけもんをおちょくってしまったような事態に陥りかねません。
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こればかりはどうしようもありませんな。
それがし「誤チェスト」は間に合っておりますゆえご容赦を。
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【参考】
光る君へ/公式サイト