鎌倉殿の13人感想あらすじ

鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第25回「天が望んだ男」

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鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第25回「天が望んだ男」
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馬上の頼朝、倒れる

安達盛長が森の中で馬を引いています。

高い木がたくさんある森の景色。圧倒的に美しく、非常に日本らしい景色ではありませんか。

海外のドラマ、特に時代劇ともなると、その国らしい風景が出てきます。

壮大な黄河の横に立つ中国ドラマとか。ドーバー海峡の白い崖が見えて、これでイングランドに戻ってきたと人々が言う英国ドラマとか。

では日本らしい場面って何か?

高い木が聳え立つ山道を馬で歩いていく――そんな景色そのものだと思えました。

盛長は、頼朝の馬を引きながら、伊豆ではいろいろあったと振り返ります。

阿野全成の言葉をスッカリ忘れたのでしょうか。過去を振り返ることも気にしなくなったようです。

逆に、盛長が気づいて詫びると、好きなだけ振り返れと返します。

しかし、いざ振り返ろうとすると出てこない。

頼朝はしみじみと、盛長といると心が落ち着くと話しかけます。

家族がおらず、新たな家族を求めていた。黄瀬川で義経と再会して号泣した。

そんな頼朝はここにきて、いつもそばにいた家族以上に家族らしい盛長に気づいたかのようにも思えます。

安達盛長
史実の安達盛長はなぜ疑り深い頼朝に信用された?鎌倉殿の13人野添義弘

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「何よりのお褒めの言葉にございます」

盛長が主君の言葉にじんわりしています。

さらに言葉を続ける頼朝。

「初めて北条の館に来た時……」

と、そこで身体が震え始めると、鳥の声がざわめき、鈴の音が響き、馬から落ちてしまいました。

「鎌倉殿!」

盛長が驚きます。

北条一門の中にいて何かハッとする政子。

それに気づく重忠。

廊下を歩いていて何かを察知する頼家。

義仲への思いから解き放たれたように、義盛と口づけ寸前だった巴。

馬に乗り、野をゆく三浦義村。

ふと上を見上げる大江広元。

何か気配を感じたような梶原景時。

ごろりと寝転がっていた比企能員。

しずしずと歩くりく。

小さな祠に手を合わせている義時。

「佐殿!」

倒れ込んだ頼朝に、鎌倉殿ではなく、そう呼びかけてしまう盛長。

そこには陰謀にまみれた鎌倉殿の顔はなく、あの茶目っ気があった佐殿の顔があり、地面に横たわったままでした。

 

MVP:源頼朝

天命を悟った頼朝。

それは本人より先に、石橋山の戦いで、梶原景時がそうしたようにも思えます。

しかし皮肉にも本人が明確に感じたのは、むしろ天の庇護を失いつつあった【曽我事件】のあとから。

それに抗っていたころ、大姫の死のあたりでは目がぎらつき、邪悪そのものだったのが、今週はスッカリ毒気が抜けていました。

その毒の源泉は何か?というと、やはり京都産のように思えます。

最後の最後になって、りくに京都育ちだと語り掛けられる頼朝。

確かに京都育ちだと感覚としてはわかっているけれども、坂東に来て距離を取ることで、京都の様々な面を理解できるようになったように見える。

頼朝は、京都人としてのアイデンティティではないものを追い求めていたのでしょうか。

伊豆のことを語りだす。佐殿のころ。あれが彼の本質で、最後になってそこまで戻ってきたようにも感じるのです。

野心を募らせ、大姫入内を企んでいた頼朝。

死への恐怖を感じ、何もかもに怯えていた頼朝。

死への恐怖を克服し、穏やかな原点に戻ってきた頼朝。

繊細なグラデーションみたいな感情を、大泉洋さんが表現していて素晴らしいと思えました。

むろん、彼一人の力ではなく、脚本の三谷氏、そしてスタッフのみなさんと共に作り上げていったのでしょう。

頼朝には名場面がたくさんありました。

政子との恋。

黄瀬川での義経との再会。

弟を追い詰める冷酷さ。

義経の首桶を抱いて号泣する姿。

そんな“動”だけではなく“静”もきっちり見せてくる、細やかな頼朝。天が望んだ男でした。

 

総評

天命とは何か?

頼朝はそのことを考え出し、迷走していったようなここ数回。

頼朝は天命は何かを考え続け、天地も大事だけれど、人そのものも尊いというところに落ち着いたように思えました。

人としての自分には為すべき使命があった。

天から望まれて、果たさねばならないことがあった。

でもそれをもう終えたなら、好きな自分に戻ってしまおう。

天からそう離され、地面に落ちたような最期でした。

頼朝の死は落馬とされています。

昔みた子供むけの挿絵か漫画か、その印象が私にはありました。

竿立ちになった馬から派手に振り落とされ、橋の上で頭を激しく打ったイメージです。

馬はなかなか高さがあるので、そういう落ち方をすると危険。特に走行中の落馬は頭蓋骨が砕けることもあるとか。

本作では、そういうイメージを覆す静謐な死だからこそ、天命を拒んでの死という絵になって美しかったと思えます。

そして、天命は残酷だということも伝わってきました。

頼朝を手放して死を選ばせた天命は、次の誰かを選び、すでに掴んでいるのでしょう。

静かに響く鈴の音は、その象徴のようでした。

天地は仁ならず、万物を以って芻狗(すうく)と為す。老子『道徳経』

天地に優しさはない。ありとあらゆるものを、使い捨ての藁の犬細工のように扱う。天地はある意味公平で贔屓をしないのだから、あるがままに生きたらいい。

こういうことを踏まえますと、あの鈴の音を聞くラストの場面がますます恐ろしく見えます。

今週は軽快なコメディタッチのようで、騙し絵のような回でした。

見方を変えれば同じものでも、おぞましくも見え、無害にも見える。そしてその意味では人が最も恐ろしい。

天命を受け取った人物は、もう該当者が見えてきています。

三善康信は「血筋ではなく堯舜のような君主を時間をかけて選ぶべき」とする理想論を語りました。

これは北条泰時に当てはまる要素です。

源氏の血は引いていないけれども、堯舜の再来のような人物とされます。

泰時は、『草燃える』では頼朝の子とも取れる誘導がなされていました。鎌倉幕府の頂点に立つ正当性として、頼朝の血を用いたように思えます。

今年はそれを否定して、血筋より資質あるものに天命が降りてくるように思えます。

 

義時が頼朝を殺したのか?

ふと見かけた考察で興味深いものがありました。

・義時だけ鈴の音を聞いていない

・義時が頼朝を毒殺した

というもので、具体的には「喉が渇いた頼朝に、義時が水筒を渡したとき、毒があった!」というものです。

義時だけが頼朝の死を知っているからこそ動揺しないし、鈴の音も聞こえない。

なるほど、と思わず納得しそうになる推察です。

しかし、冷静になって考えてみると、なかなか成立が難しい推論でもあります。

理由をざっと挙げてみましょう。

・水に毒を入れると高確率でわかってしまう

無味無臭の毒はありがたいことにそうそうありません。

味が濃いもの、泥酔状態といった条件付きでないと、毒は口にした瞬間に吐き出してしまう。

水筒に毒は良い手段とは言えません。

・毒殺は確実性が低い

毒の致死量は標的の体質や体格でによって変わります。

成功率も意外と低いので、確実に仕留めるのであれば善児のような刺殺あたりがオススメです。

・同行者(安達盛長)がいる

同行者がいると、毒を吐かせる可能性が高まります。

確実に仕留めるなら、単独になるときを狙うべき。

・状況的に疑いがかかる

水筒の毒が死因と判明したら、義時まで簡単に辿れてしまい、一気に窮地に陥ります。

・動機がない

そもそも頼朝の死は、義時にとって利益はありません。怨恨もない。

今の義時は腹黒いので、大してメリットもなく、自らの危険性が高まる手段などまず取り掛からないでしょう。

大泉洋さんもどす黒くなっていきましたが、最近のビジュアルイメージで見せる小栗旬さんの顔も黒光りしてきて素敵です。

一方で、坂口健太郎さんの北条泰時は白く輝いている。

頼朝の退場後も、ロスだのなんだのいう暇がないほど盛り上がりそうですね。喜ばしいことです。

源頼朝
史実の源頼朝は一体どんな生涯53年を過ごした?鎌倉殿の13人大泉洋

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文:武者震之助(note
絵:小久ヒロ

【参考】
鎌倉殿の13人/公式サイト

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