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『光る君へ』感想あらすじレビュー第27回「宿縁の命」不実な女まひろを宣孝は許すのか?

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『光る君へ』感想あらすじレビュー第27回「宿縁の命」
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「一帝二后」という策謀

その日は、入内から間もない彰子の女御としての盛大なお披露目でした。

道長が持たせた屏風を背にして帝が座ると、道長がうやうやしく御礼を述べ、帝の言葉に従って彰子は顔を上げます。

「そなたのような幼き姫に、このような年寄りですまぬ。楽しく暮らしてくれれば朕もうれしい」

「はい」

公卿たちは目を泳がせ、機知にあふれる応対をできぬ女御に失望したような空気が流れています。

道長は晴明に、女御宣下の日に巫女が生まれた不運をこぼします。

我が運が傾いているのではないかと嘆くと、傾いてなんかない、何のさわりもないと断言する晴明です。

それでも気弱な道長は体調不良を訴えます。

すると晴明が策を授けます。

女御を中宮にする――という驚きの人事でした。

扇の上に白い石を置きながら、晴明は説明します。

太皇太后昌子が亡くなった。

皇后の遵子を皇太后とすれば、今度は皇后の座が空くのでそこに中宮定子を入れる。

そして彰子を中宮にして、皆をひれ伏せさせよというのです。

「一人の帝に二人の后などありえん!」

即座に否定する道長に対し、やってしまえばよいと焚き付ける晴明。

道長は反発していますが、そもそも国家安寧のために彰子様を入内させたのではないか?と晴明は引かない。

中宮にすれば彰子の力は強くなる。

道長の体調も回復する。

そう言い切る晴明。そううまくいくかと立ち止まれないのが道長です。流されやすい性格でその道へ進むのでしょう。

その頃まひろは、無事に娘を出産しておりました。

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MVP:藤原宣孝

ここまで評価が乱高下する人物がいたでしょうか。

はじめはまひろにとっては親戚のおじさん。

そんなおじさんからアプローチされてもどうかと思っていたら、セクシーな求婚者に変身。

お熱い夫婦愛を見せつける一方で、人を人とも思わない発言や女遊びという無神経さで視聴者をイラつかせる。

そして今や、大河史上に残るほど寛大な夫へ。

睡眠時無呼吸症候群が生じていて、もうすぐ退場する未来も見えてきました。

そうはいっても、彼自身はそこまで変わっておらず、飄々としていて空気が読める人物に思えます。藤原斉信に近い性質なのでしょう。

藤原実資のようにガチガチのこだわりもないし、藤原公任のようなプライドもない。

流されるまま自由に生きて、目の前の美味しいものを食べて、可愛い女の子に戯れればいい――そんな気軽で良いという生き方の体現者にも思えます。

こうも寛大だからこそ堅苦しい為時とまひろ親子につきあっていられるともいえる。

あれだけ頑固な人は普通相手にしにくいものです。この二人は劇中でも友達が多いタイプに見えません。

結局、宣孝はむしろ、全くブレていなかったんですよね。

このドラマの男性は、家族の女性を出世の駒に使っています。

妻を出世のために使うか。娘を使うか。

そう割り切ってしまえば、そうそう悪くないのではないか?

そう思わせる説得力があります。

佐々木蔵之介さんを知り尽くした大石静さんだからこそできた役に思えます。

藤原宣孝
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大河ヒロインが不義の子を産む時代へ

まひろが不義の子を孕み、悩む――。

不義がプロットの根幹にある『源氏物語』をふまえていると思えば、ギリギリの「あり」にも思えます。私としてはどうにも言えません。

しかし、果たしてそれだけなのでしょうか?

アメリカHBOのドラマシリーズ『トゥルー・ブラッド』で、ヒロインがこんなことを言い放ちました。

「男が女をとっかえひっかえ遊べば自慢できるけど、逆だったらビッチじゃない? おかしくない?」

価値観をひっくり返して私がかっこいい女になってやらぁ!

そう皮肉っているような場面でした。

あのドラマは2008年から2014年にかけて放映されました。10年以上前にこの場面が流れたことがわかります。

それから時を経て、まさか日本の大河ドラマでやることになるとは、思いもよらぬことでした。

しかも『源氏物語』のヒロインとは違って、まひろも宣孝もさして気に病んでいない。

まひろは当初気が重かったものの、宣孝は怒るどころか認めてしまいます。

不義の子の出産を、こうもあっけらかんと、痛快な仕上がりにまでするとは、何が起きているのか???と驚かされるばかりです。

さらに、詮子の絶望も生々しいものがあり、連続テレビ小説『虎に翼』を連想させました。

あの作品には梅子という女性が出てきます。

弁護士である夫に嫁ぎ、三人の男子を産む。

当時の良妻賢母そのものの生き方であったのに、夫も、息子たちも、彼女を裏切ります。

あれほど愛し、尽くした男の冷たさ、情けなさに、梅子はもう耐えきれない。

高笑いを共に絶縁を宣言し、己の道へと邁進してゆくのです。

詮子も、梅子も、時代は異なるものの、周りが敷いた女として最前最良の道を歩んできたように思えます。

けれどもその道の先は崖っぷちだった! もうこんなの笑うしかないでしょ!

詮子はそこまで到達できていないものの、梅子はそう笑いました。

NHKの看板ドラマが、女性の生き方に対し、別の道を示しているように思えます。

こんな過激なことをしてしまって、大丈夫なのか。そう心配になってくるほどです。

大河も朝ドラも、女性のロールモデルを作り上げる役目がありました。

それは偏見を推し進める役目を担いかねないことでもあります。

そのことを真摯に踏まえ、反省し、変わりたいのだとすれば、その志にケチをつけるつもりはありません。

描写の好みはあるだろうし、歴史劇として見た場合、紛糾することはわかりきっています。色々不安にはなるし、暴虎馮河かもしれません。

しかし、志があるのであれば話は別だ。それだけでも値千金です。

私の受信料はその志に使って欲しいものであり、理想的と言わざるを得ません。

大河ドラマを見ていると、どうしたってミソジニー傾向は感じています。

歴史に興味関心を持つ絶対数は、そこまで男女差があらわれません。自治体の歴史講座でも受講してみればわかるかと思います。

それなのに、どういうわけか日本では歴史は男のものとされ、女性を揶揄し、おちょくり、小馬鹿にするような言動が拡散しやすいとも感じているところです。

昔はやった「歴女」なんて言葉もその象徴でしょう。

そんな中で、敢えて挑む女性脚本家、ヒロイン、役者がいたら、ひとまず大丈夫かと気遣ってしまいます。

どうか、ご無理なさらず。

作品作りには気を抜けないにせよ、そうでないところでは、適宜休み、ご無理なさらないでいただければと思います。

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文:武者震之助note

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