ついに再会を果たせた、まひろと“三郎”。
正体を伏せたままの二人であったが、互いの素性を明かすことはできるのか?
偽りに偽りを重ねる女
永観2年(984年)、散楽でアキに扮する直秀に対し、まひろは謝るように迫ります。
誤認されて“三郎”は獄に入れられた。謝るべきであろう。
というわけですが、直秀は「悪いことはしていない、放免に追われるものは皆悪い奴なのか」と開き直ります。
”三郎“にせよ、すぐに出てこられたのだからよいと、その場を執り成す。また観に来るようにとだけ告げ、直秀その場を去っていくのでした。
まひろは納得できません。
なぜ、”三郎“が許されたことを知っているのか。なぜそれを直秀は知らせに来たのか。
いったい何のことか?と尋ねる”三郎“に対し、「屋根の上にあらわれて、無事を告げて消えていった」とまひろが説明します。
親切な人かと思っていたのに、”三郎“に謝らないのは腹が立つとイライラ。
「すぐ怒るんだな」
”三郎“は面白そうに話しています。彼の周りの人々は、貴公子に対して怒りすら見せないようにしているのでしょう。
「代筆は嘘だったのか?」
”三郎“がそう問いかけながら、絵師の家に行ったら、そんな者はいないと追い返されてしまったことを説明しています。
偽りだったのか?と問われ、謝るまひろ。また作り話をしてしまった。あそこの代筆は男がしていたのだと。
”三郎“は再び笑顔で、よく装い、よく偽るおなごだなと言いながら、彼女の嘘を見抜きます。
あの日、まひろは男の声で男と偽る仕事をしていたと。代筆仕事はまひろだと見抜いていて、さわやかに笑い飛ばす”三郎“です。
「偽りに偽りを重ねておる!」
まひろも、”三郎“だって偽りを言うと拗ねています。
何度でも行く、会えるまで行くと言っていたのに、そうしなかったじゃないか。しかし、なぜそれを知っているのかと逆に問われ、答えに詰まるまひろ。
俺はまひろのように怒らんと”三郎“は笑いとばし、からかうように「帝の落とし胤(だね)だという話はまことなのか」と問いかける。
と、まひろはようやく身分を明かします。六位で何年も官職につけていない、藤原為時の娘。藤原でもずーっと格下だから気にしないでと言うのです。
次に会ったとき正体を明かすと言ったことを覚えているか?と“三郎”がまひろに問いかけます。
彼女は覚えていました。
「俺は……」
そう口に出しかけたとき、藤原宣孝が二人を見つけました。
あの娘を弄ぶな
外出禁止されているまひろに対し、随分と大胆なことをしていると言う藤原宣孝。
「お前は誰だ?」
“三郎”を問い詰めようとする宣孝に、すかさず飛ばした履き物を拾ってくれたとまひろが割って入ります。
彼女に被衣をかぶせ、馬の後ろに乗せ、送っていく宣孝。まひろはその後ろで「次の散楽も見たい!」とわざとらしく、“三郎”に聞こえるように言う。
そんな大きな声で言わんでも聞こえると宣孝は呆れています。
この去っていく宣孝は、佐々木蔵之介さんの魅力と説得力が引き出されたシーンではないでしょうか。
野暮なおじさんになりそうなところを、軽妙で魅力的な男性を演じている。しかも、まひろとの年齢差もわかる。
彼以外になかなかできないと思えるほどのはまり役です。
“三郎”もとい道長が帰ろうとすると、屋根の上にいる直秀がこう告げる。
「もう散楽には来るな」
先ほどまた来いと言ったのはお前だろうと返されると、こうきました。
「気が変わった。娘の心を弄ぶのはよせ」
「娘とは誰だ?」
「とぼけるな。藤原為時の娘だ。手を引け。右大臣家の横暴は内裏の中だけにしろ」
「そういうことは散楽の中だけで言え」
道長も負けずに反論すると、隣で百舌彦が同意。
さらには、あんなところに座っておったら尻が痛かろうにと面白がっている道長です。
直秀の裏の顔が見えてきました。
屋根にホイホイ登れる。右大臣家の横暴に憤っている。道長のことを知っている。放免に追われている。
義賊の類でしょう。
社会格差を犯罪で埋めようとしていて、それに自分なりの正義感を覚えている。だから悪いことをしていないと開き直っているのです。
そうでもしなけりゃ、世直しができない――そんな社会の閉塞感も浮かび上がってきますね。
身分とは兎角難しいもの
宣孝がまひろを自邸へ送り届けると、使用人のいとが少し慌てた様子で出迎えました。
帰りが遅いので気にしていたとか。引き留めたんはわしじゃと、宣孝が咄嗟に嘘をついて誤魔化します。
その上で、父上に言わぬからあの男には近づくなと釘を刺す。
まひろは悩んでいます。
「身分とは兎角難しいものにございますね。貴族と民という身分があり。貴族の中にも差がある」
宣孝はそんな嘆きに、その効能を解きます。
身分があるから、諍いも争いもない。もしもそれがなくなれば、万民が争い、世が乱れるのだと。
身分秩序が壊れた結果、争いが起き、血が流れる様は『鎌倉殿の13人』で描かれてましたね。
これぞ日本史の宿命かもしれない。
隣の中国では、魏晋南北朝は貴族の時代。魏以来の「九品官人法」により、こんな状態が訪れます。
上品に寒門無く、下品に勢族なし。
上流貴族には貧しい家はなく、下級貴族には勢いのある家はない。
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生まれつきの血統だけで決まるなんて……そう嘆かれるような状態でした。
そのせいかルッキズム全盛期になり、アホなボンボンはコスメとファッションに夢中で、ろくに仕事もしない。
それではいかんと採用されたのが【科挙】です。
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日本でも導入されながら定着はせず、試験ではなく血統で地位が決まるやり方は幕末まで連綿と続き、福沢諭吉をして「門閥制度は親の敵(かたき)」とまで言わせることとなります。
で、現代の日本はどうか?
世襲がこうもアピールされる国って、日本以外はそうそうありません。
まひろの投げた問いかけを、見る側も考えねばならない。面倒で興味深いドラマですね。
宣孝は悩みを聞くモテ男
東宮が帝になれば父親にも光が差すのだから、迷惑をかけるなと藤原宣孝が言います。
「私は迷惑な娘ですか?」
咎人を捕らえず、娘を間者にする父こそおかしい! 驚く宣孝に対して、まひろが続けます。
左大臣家の源倫子が入内するか探って来いと言われた。
学問とはいったい何のために……『論語』も、『荀子』も、『墨子』も、皆人の道を説いているのに、父は誰よりも学があるのに、なぜなのかと訴えかけます。
渋いですね。
まひろは思想をきっちり学んでいます。荀子は前回出てきた孟子の「性善説」と比較される「性悪説」で有名です。
『墨子』は相当上級者、なかなかマニアックですね! 墨子は教えが厳しすぎたのか、弟子が少ない。弟子が少ないとなかなか伝播されず、マイナーな部類に入ります。
宣孝は「父上も人だから」と返すしかない。そのうえで、間者は断ったのだろう?とまひろに問いかけます。
「いいえ」
そうなんです。まひろはおかしい。これだけ父に怒りつつも、間者として従っているのです。
父には震えるほどに腹が立つのに、左大臣家には興味があるのだとか。まひろは善悪混淆型の珍しいヒロインですね。
それでも彼女が困っているのは間違いなく、父と私はこれからどうなるのか?と思うと、時折胸が苦しくなるとのこと。わかることも許すこともできない。
性格的に似た者同士の父と娘に思えます。そして、それが事態ややこしくさせる。
と、宣孝は、モテそうなことを言い出します。
思いを吐き出してみろと。よい策は見つからずとも、心を軽くすることはできると。
そうそう、ここでマウンティングしながら「俺はさァ、こうだと思うよ!」と言っちゃうタイプの男はモテませんよね。
マンスプレイニング(Mansplaining)、略して「マンスプ男」としてむしろ嫌われる。
宣孝が魅力的なのは、イケメンだからだけではなく、振る舞い方が素晴らしいからに尽きるでしょう。
だいたい、墨子まで読みこなしちゃう相手に理詰めで勝てるのか、って話です。理がダメなら、情に訴える。
◆ 男たちはなぜ「上から目線の説教癖」を指摘されるとうろたえるのか(→link)
思えば2023年の大河は「イケメンが言えばええ」とばかりに、かっこつけた演出で中身のないセリフを戦国武将が喋り散らすドラマでした。
マンスプ男の妄想ストーリーなど早く忘れたいものです。
円融天皇、譲位す
一方で藤原道長は「弄ぶ」という直秀の言葉が忘れられません。
そこへウキウキした様子の姉・藤原詮子がやってきて、「考え事をしているのは下々の女と縁を切ったからなのか?」と聞いてきます。
かわいい弟と話せて嬉しい姉上よ。いきなりキツい言葉を繰り出してきますね。道長は「そういうものはいない」とぶっきらぼうに返すしかありません。
道長もモテる男らしさがありますね。こんなに口の悪い姉だろうが会話をきっちりこなす。めんどくさそうなあしらいをしたら魅力が出ません。
詮子は円融天皇の譲位がいつなのか教えて欲しいのだとか。決まったら内裏に挨拶に行くそうです。
「どう思う?」
詮子がそう何度も聞くと、それはやめて欲しいと道長。
すでに心はお決まりだろうというと、詮子はふくれて「意地悪! もうよい!」と返してしまいます。こういう甘えを引き出せるのだから道長はすごい。
では譲位と即位の日程はどう決めるのか?
安倍晴明が夜通し占いを行い、次の東宮は懐仁と決まりました。
サラリと説明されますが、日本史の特異を目の当たりにしたと思えます。
そもそも君主が、まだ若いのに譲位するというのがおかしい。占いで決めるのは中世ですし、まだ“あり”としましょう。でも、この安倍晴明は買収される人物でもある。
日本史とは何か?という本質を改めて突きつけてくるような作品で凄いですね。
東宮が決まると、女房たちのヒソヒソ話が始まります。
この“ヒソヒソ”で空気を描くというスキルを本作は実装しました。
大嫌いな詮子との間にできた子とはいえ、唯一の皇子だから順当ではある。そんな風にゴシップを繰り広げつつ、忙しくなると慌てています。
国の頂点に立ちながら、最愛の存在との間には子ができない。思えば円融天皇も大変なものです。
そして、そこまで嫌われる詮子も、虚しいものがある。
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実資、断固断る
即位が決まった師貞は、蔵人頭に藤原実資を任じようとします。
すると、きっぱりこうきた。
「畏れながら、それはお許しください」
「あァ?」
露骨なまでに不満を表す師貞。ここまで人間みのある皇族はなかなか大河でお目にかかれない。
実資としては、御世が変われば蔵人頭も変わることが内裏のならわしだと主張します。
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しかし、師貞はそれを破りたい。煩わしいのがいやで、一新したいのです。叔父の藤原義懐(よしちか)、藤原惟成(これしげ/これなり)、藤原為時、そして実資により新体制を固めたい。
「辞退いたします!」
再び実資に強く断られ、師貞は暴れ出します。
実資のきっぱりした断り方が素晴らしいですね。もう、毎回見たい、やみつきになりそうだ。
「うー、なぜじゃ、なぜじゃ、なぜじゃ、なぜじゃ!」
と暴れながら「おじうえー!」と義懐に泣きつく師貞。しまいには被り物をとってしまいます。
すると、すかさずご丁寧にナレーションがはいる。
「当時の被り物をとられることは下着を脱がされる感覚」
【露頂】(ろちょう)と言いますね。
パンツを脱がせてくる上司なんて、そりゃ実資は嫌でしょう。
『鎌倉殿の13人』でも、【亀の前騒動】で牧宗親が被り物を脱がされ、悲痛な声をあげておりました。
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しかし、人事刷新そのものは悪くない。
例えば徳川吉宗は将軍になると、間部詮房ら先代からの【側用人】を罷免しました。
側近政治が嫌だったのか?というとそうでもなく、紀州時代からの気心知れた加納久通と有馬氏倫を【御側御用取次】に任じています。
成功すれば果断となる、なかなかシャープなことをしているのです。こうした改革は、既存勢力介入を防がねばどうにもなりません。
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右大臣・藤原兼家が参内します。
藤原文範はじめ、群臣が丁寧に挨拶していて、源雅信が「賑わっておるのう……」といささか羨ましそうでもある。東宮の孫となる兼家は、また頂点に近づいたのでした。
花山天皇に入内したくない倫子
左大臣の家では、源雅信が娘の倫子に向かって「次の帝に入内する気はないか」と尋ねています。
右大臣・兼家が外戚として力を増す中で、隅に追いやられないためには倫子入内が一番。
すると、妻の穆子が呆れたように止めています。倫子を出世の道具にしない、入内させないと仰せになったではないか。
倫子も、次の帝は女好きで名高いと懸念している。果たして入内して幸せになれるのかしら。帝の心が遠ざかって、東三条殿に下がった詮子様のようにはなりたくないのだとか。
即位すれば人が変わるかもしれないと雅信はいうものの、こう否定します。
「ないかな……ないな」
今のは父の独り言だから忘れてくれとあっさり引きます。雅信はうっかり、花山天皇が即位式で女官を引き摺り込んでコトに至っていたことまで話しかけていたのでした……。
なんと娘に甘い父でしょう。
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かわいらしくて仕方ないんですね。目の中に入れても痛くないとはこのこと。実際、倫子はかわいいから、それもそうなります。
そんな倫子が抱いているのが、これまたかわいらしい猫。
日本最古の猫というと、諸説あって特定は難しいものですが、この時代「唐猫」(からねこ)というペットが愛好されていたことは確実です。
中国との貿易船に載せられたもので、大変珍しく、セレブの証でした。逃げたら困るため、紐で繋がれたほどです。
『源氏物語』では、この紐で繋げた猫が御簾をまくりあげ、そのせいで女三宮の姿が柏木に見えてしまう場面が登場します。
このため、日本では画題として御簾の側に立つ美女と猫が定番となりました。
さて、その晩、散楽一座は盗賊となって左大臣家に忍び込み、家財道具を盗んでゆく。鮮やかな手並みでした。
姫君サロンで盗賊トーク
倫子サロンでは、自然、盗賊についての話題で盛り上がります。
「えー怖いわ!」
そう話す姫様たちは能天気と言いましょうか。警護がいたのに、見事なまでに盗まれたそうです。
赤染衛門は、盗賊の話などけがらわしい、みだりに口にしてはならないと戒めると、まひろが黙っていればいいのに「盗んで人に分け与える盗賊もいる」などと言い出します。
なぜそんなことを知っているのか?そう問われたまひろは辻で聞いたと返し、馬にも乗ると続ける。
「馬にも乗る! 盗賊みたーい!」
再び、はしゃぎ始める姫様たち。
実は平安時代末期から、「女騎」という言葉もありました。
文字通り馬に乗る女であり、平安京から外にでて、山に入っていくとその手の女盗賊もいたのです。
そういう存在があってこそ、巴御前もいる。
彼女は、女騎の中でも最上位ということです。
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ヒロインと乗馬というのも、なかなか興味深いですね。
馬や乗り物に乗れば、ヒロインの行動範囲は必然的に広がる。その時点で、自立精神旺盛な性格だと示す設定にもなります。
ジェーン・オースティン『高慢と偏見』のヒロインは、馬に乗ります。この時点で彼女は一風変わっていると読者に伝わります。
時代がくだると自転車になる。
ホームズシリーズには『孤独な自転車乗り』という作品があり、あの短編に出てくる女性は自転車に乗っていました。彼女にも独立精神があるとわかった。
そして盗賊話を止めた赤染衛門は、『竹取物語』について語ることとします。
かぐや姫はなぜ、五人の公達に無理難題を突きつけたのか?
「好きではなかったから」といった答えが主流の中で、まひろだけが、ぶっ飛んだことを言い出します。
やんごとない人々に対し、怒りや蔑みがあった。
身分が高いだけで威張るものが嫌だから、帝でさえ翻弄するのだろう。
すると倫子は「おそれ多い」と呟きます。「空気読め」という意味かもしれない。
それでもまひろは、身分が高い相手を突っぱねる姫は颯爽としていると熱く語ります。
すると倫子が、私の父が左大臣で、身分が高いことを忘れていないかとチクリ。
空気が凍りつきます。
倫子が、ほんの戯言だからそんな風にに黙らないでくださいと微笑むと、
「申し訳ございませんでした!」
まひろはようやく空気を読んで謝るのでした。
右大臣兼家の野望と結束
さて、ここで身分が高い右大臣一家が出てきます。
父の藤原道兼を前にして、長男の藤原道隆は「家の運が開けてきた」と満足げです。次男の藤原道兼もめでたいと続く。
兼家は満足していません。
まだ若い天皇が長々と即位していたら困る。先に自分の寿命が尽きてしまうからです。
そこで、次の天皇をどう退位させるか?知恵を絞れと息子たちに答えさせる。
返事だけでなく、具体案を引き出そうとする兼家。
果たして答えは?
・道隆の策「流言飛語。無類の女好きで国は滅びるという噂を流す。すでに準備は整えた」
兼家は「それだけか?」と不満げです。
速効性のある策が欲しいとかで、次の道兼は?
・道兼の策「蔵人に採用され、気持ちを取り込み、力不足だと思い込んで譲位するように仕向ける」
兼家は満足し、再度、蔵人になれるようはかると言います。
道長は、聞かれないまま、「三人揃うのは珍しい、宴にするぞ」と兼家。
いかがでしょう。まひろや義賊散楽一味がみたら「やっぱりこいつら悪どい、盗んじまえよ!」と言いたくなりそうです。
その頃まひろは散楽を見ながら、道長が来ないことを気にかけています。
なぜ来ないのか悩みつつ、身分なんてなければいいと考えている。
道長は気もそぞろで、散楽に行きたい。
しかし、兄の道隆がそんな弟を制し、今宵は残って一家の結束を固めるようにと言います。
重なるようで離れていく――そんな運命が見えてくるこの回。
互いが思い合おうと、身分が引き裂いてしまいます。
直秀はそんなまひろに、あいつが来なかったといい、散楽仲間との飲み会に誘います。乗り気のまひろですが、乙丸がなんとか止めました。
詮子が鬼になるとき
藤原詮子がしずしずと内裏に向かい、円融天皇の元へ向かいます。
ここへ来る前、彼女は鏡を覗いていました。帝に寵愛されたころの私はいるのか?と確認するようでしたが……。
「何事じゃ」
と、そっけない円融天皇。
詮子が、いかに素晴らしい治世であったか、長々と褒めたたえ、お上と過ごした内裏での日々の思い出を語ります。
「黙れ! 朕に毒を盛ったのはおまえと右大臣の謀(はかりごと)か? 何もかもお前の思う通りになった!」
そう吐き捨て、懐仁が東宮になることは許しても、詮子のことは生涯許さないと言い切ります。
「二度と顔を見せるな!」
「お上、何を仰せなのかわかりませぬ!」
そうすがりつくように言う詮子を無視し、去れと叫び、扇を投げつける円融天皇。
詮子に当たり、白い頬に血が一筋流れます。
「人の如き血など流すでない、鬼めが!」
そう言われてしまう詮子でした。
詮子は怒りに満ちた形相で、東三条殿に戻ります。
般若というのはこのことかと思うほど、凄絶な美しさを吉田羊さんが体現。初登場時は無理があるという声すらあった彼女ですが、こうなればもうこれ以上の適役はないと思えてきます。
「父上!」
「おお、詮子様」
父も兄も、丁寧に彼女のことを呼びますが、怒り心頭で、帝に毒を盛ったのかと追及。
政治に利用されていることはわかっているけれども、御命までさらすとはどういうことか!と怒りの形相です。
さらりとシラを切り、誰の御命か?と問い返す兼家。
道兼は詮子を宥めようとしますが「はなせ!」と拒まれます。
「懐仁のことも、もう父上に任せませぬ! 私は懐仁を守ります。そうでなければ懐仁とはいえ、いつ命を狙われるか!」
道隆が宥めようとしますが、詮子は止まりません。
兄上は嫡男のくせにご存じないのかと怒りをますます高め、道兼が医師を呼ぼうとすると、詮子はこう言います。
「薬など、生涯飲まぬ!」
何を入れられるかわかりませんからね。
見事な場面です。女性の怒りをこうも鮮やかに見せてくるとは。
そしてこうも父に怒る女性は、詮子だけではありません。後にまた別の女性も怒ります。
父に対し、娘がこうも激怒する大河が見られるとは。感慨深いものがあります。
兼家は、詮子が去ると、ゲスなゴシップ誌かネットニュース、掲示板じみたことを言い出します。
長い間、独り身だからいたましいことだ。これからは楽しい催しなどして、気晴らししてやろう、と。そのうえで飲み直そうときた。
なんてクズ男の解像度が高いドラマなんだ……家族や女性部下が怒っていたら「高めのプリンでもコンビニで買って冷蔵庫に入れて置こうか♪」と言い出す、そんなムカつくおっさんみたいな兼家だな!
道隆は、知らなかったけれども理解したと父に阿りながら、詮子様にはお礼を言わねばならないとのことです。
何か?と言えば、これで父上と三兄弟の結束が高まった、何があろうと父上を支えると思えるからですと。
道兼も素直に頭を下げています。
井浦新さんの気品と、この言葉の下劣さの格差がえげつない。もう、一体、どうしたらいいんですか?
悪事で結束する右大臣家って……どこのヤクザですか?
道長だけが賛同するようで、呆れ切った顔をしています。
しかし、これは『鎌倉殿の13人』序盤で、義時が上総広常を見て笑っていたようなものかもしれない。
娘がどれほど怒り、絶望しようが、父は権力のために強引な手段を押し通す――後半、きっと私たちはまた絶望するのでしょう。
まひろはそのころ、月を見ながら物思いにふけっていました。
花山天皇の即位と、為時の任官
8月、師貞が即位して花山天皇となりました。
そして藤原忯子(よしこ)が入内します。はんにゃ金田さん演じる藤原斉信の妹です。
見つめ合い、長い黒髪のようにも見える布で互いの手を縛る二人。
深い愛がそこにはありました。
バイオリンの音色が、激しい愛を伝えてきますが、このドラマは日曜夜8時台ですから、ドラマ10『大奥』級の過激描写はありません。
ただし、ギリギリのエロスは読み解き方で出てきます。
女性の黒髪は情欲の象徴です。この場面はBGMといい、照明といい、見つめ合う二人の美しさといい、縛る手といい、十分艶かしい。
花山天皇の何かをじっとこらえて、溢れ出すような目線だけでも攻めてきたと思えます。
これこそが日本の伝統でしょう。
花山天皇の即位により、藤原為時は12年ぶりに官職を得て、祝いの宴をしております。
藤原宣孝には世話になったとしみじみと語る為時。
何もしておらぬ、陰陽師のように予言しただけだと答える宣孝。
師貞親王即位で日が当たると言っただけだと説明すると、そうであったと納得する為時に、宣孝は右大臣家にもお礼を言えと助言します。
酔っ払ったと廁へ向かう為時は、使用人の“いと”によろめいたところを支えられます。
「お前にも世話になった」
そう言われ、ドギマギする、いと。このドラマって、こういう距離が近づく二人をうまく描きますよね。まぁ、為時は廁に向かいますけどね。
元服した弟の藤原惟規は、また三郎のことを考えているのか?と姉に問いかけます。
「今は父上のことを考えていたの」
今宵の父上はご機嫌だったと惟規も同意。
あんな嬉しそうな顔は久々に見たとまひろは昔を思い出します。小さい頃は父上が大好きだった、よく遊んでくれた。なつかしい。
惟規がからかうように大丈夫か?と言うと……。
「人だからそういうこともあるのよ。明日になればまた父上に腹が立つわ、きっと」
父を憎むことが常態というのは、なかなか辛いものがあります。
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花山天皇の政治改革
内裏では、花山天皇が政治を行なっています。
銅銭の価値変動が激しいのは、関白のせいではないか?と言い出す。
藤原惟成が語るには、なんでも日照りのせいで物の値上がりが続いているんだとか。
すると花山天皇が自ら物価を決めると言い出します。それならば朕を尊ぶだろうと思い込んでいる。
しかし、物価は自ずと決まるものであり、決めることはいかがなものかと兼家が詰め寄ります。
関白の藤原頼忠もこれには困惑するばかり。
一方で、天皇側近の藤原義懐は「帝の仰せの通りにせよ」とせっつく。
聞けば、帝自ら粗食と粗衣を実行していて、模範を示すとのことで、万民に申し伝えよと上から目線で注文を出してきます。
義懐ごときが大きな顔をするな、と不満気な公卿たち。
政治分裂の構図です。
この短い場面はおもしろい。
本作の時代考証の倉本一宏先生は、ドラマによって花山天皇の奔放さばかりが広まることを懸念しています。
この花山は、聡明だし有効性のありそうな政策を考えている。
人気取りのようで、民の暮らしも考えています。円融天皇と比較しても、側近たちに操られるだけではない気の強さがあります。バランスの取れた描き方ですね。
こうした帝の思考は、どこに由来するか?というと、藤原為時に淵源を求めることもできるでしょう。
あのぶっとんだ帝が、万民に模範を示すことを考えるようになるとすれば、何に由来するのか?
為時が読み聞かせてきた漢籍、『墨子』ではないのか? とも思えてきます。
そんな革新的な考え方だからこそ、守旧派には疎まれることも伝わってきて、右大臣兼家は焦っているとも示されました。
平安のF4たちは今日も勤務中に話しています。
藤原公任は、妹が寵愛を受けている藤原斉信にチャンスが巡ってきたと言います。
彼は円融天皇が退位したことで、中宮となった姉・藤原遵子の力を失っています。
「まあね」
余裕の受け答えをする斉信に、公任はさらに続けます。おつきの女官も顔を赤くするほどの激しい寵愛ぶりだとか。
斉信は肯定し、帝の女好きはもはや病と言っていいとまで語る。
にしても、そこまで言っていいんですか?
これは寵愛が別の女に移るまでの好機と冷静に見ているようにも思えます。
今のうちに偉くなっておかねばならないと語る貴公子からは、なんだかゲスな臭いもしますね。
道長は、筆を雑に扱っていて、そういうことだからあんな筆跡になるのだと苦言を呈したくなってくる。
そういう扱いをすると筆がすぐ駄目になってしまいます、藤原行成を見習いましょう、と思わず言いたくなります。
なんて書に気が利いたドラマなのでしょう。
控えめで字が上手な行成は、早く忯子様に皇子を産んでいただかねばと言うと、寵愛が深いからできると道長が続ける。
そこで公任が、そんな呑気なことでいいのかとチクリ。そうなれば道長の甥が東宮でいられなくなると釘を刺します。
「毒を盛られるとか?」
そう口にすると、場が一気にしらけてしまい、
「ごめん」
と謝るしかない道長。彼なりにストレスが溜まっているのでしょうか。
五節の舞姫身代わり計画
源雅信が渋い顔で帰宅します。
穆子と倫子が父を出迎えると、「五節の舞姫」を家から出せと言われたとのことです。
収穫を祝う祭りのあと、未婚の舞姫が踊る。そのための姫で、他の貴族も指名されましたが、倫子は「嫌です!」とキッパリ。
帝は弘徽殿(忯子)に夢中とはいえ、ともかく女好きですから、目に留まったら危険であると雅信もわかっています。
すると、「身代わりがおりますわよ」と、穆子が言い切ります。
身代わりとは、まひろのことでした。
倫子は、まひろに身代わりを頼んでしまうことを、「ごめんなさいね」と謝ります。
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まひろは飄々と、自分は高貴な方の目に留まらない、殿方から文は来ないと、謎の自信を見せます。なんなんですか、この人は。
「ありがとう、まひろさん、一生恩に着るわ」
「そんな、大袈裟です」
シスターフッドを発揮し笑い合う二人。まひろがどこかズレていて変人だから成立する関係かもしれない。
万が一、帝の目に留まったらどうするのか。ドキドキときめくのか、それとも嫌なのか。
しかし、まひろは「絶ッ対、留まらない!」という謎の自信があるため、なんとかなっております。
いるんですよね、こういうモテにさして価値を見出さない剛の女が。認めたくない人は、認めないんでしょうけど。
かわいげのない女と思われても、まひろは動じない。
宣孝にだって「あなたにかわいいと思われなくてもいいし」と言い切っていました。
モテが心底どうでもいい! 清々しいまでに嫌われる勇気を発揮し続け、毎週上書きしてゆく。そんなメンタル剛強ヒロインが育ってゆきます。
ただし、気楽に引き受けたまひろでも、重い役目ではありました。
舞を覚えるのが大変。
何度指導を受けても、不器用なのか逆に回ってしまい、叱られてしまいます。
絵も下手だし、体を動かすことも苦手なのかもしれない。ともかく何かがズレている、ヒロインらしさが常に落第気味で斬新です。
息を呑む、乙女の舞姿
舞姫は三日前に宮中へ入り、身を清め、本番に挑みます。
そして迎えた本番、序盤でも屈指の名場面でしょう。
日本史で再現されて嬉しい場面とは、何も武将が戦う場面だけではありません。五節の舞姫は見てみたいものでした。
『百人一首』十二番、僧正遍照の歌にあります。
天つ風 雲の通ひ路 吹きとぢよ をとめの姿 しばしとどめむ
天を吹く風よ、天地を結ぶ雲の道をしばしば吹き止めてくれないか。美しく舞う天女たちの姿を、もう少しだけ見ていたい。
どれほど美しい舞姫の姿なのか。それを再現すべく、大河ドラマが挑みます。
相当お金がかかっていると伝わってきます。
カメラワークが万全で、真上から見下ろす。照明効果も美しく、篝火が燃え盛っている様が幻想的です。
笏拍子に雅楽の荘厳な響き。これが天女の舞かと思えます。
東洋代表として、舞姿は映像として出しておくべきでもあります。
華流にせよ、韓流にせよ、舞姫が歌い踊る場面は定番。
この国にはこんな歌や踊りがあるのかと見ることも、大きな楽しみのひとつなんですね。『鎌倉殿の13人』の静御前に続く、日本代表の登場です。
日本の場合、衣装の重みもあるのか動きが落ち着いております。
唐の場合、軽やかに長い袖をクルクル回し、かつ様々な文化の影響を受け、激しい動きもあります。比較するとますます楽しい。
そんな眼福の場面に、さらなる要素を加える本作。
まひろは居並ぶ貴公子の中に、居眠りをする“三郎”を見つけます。その彼を、隣に座る“ミチカネ”が小突いて起こそうとしている。
“ミチカネ”という人殺しの隣に、“三郎”がいる。
なぜ?
なぜなの?
そう戸惑うまひろ。
出番を終えて退出すると、他の舞姫は「藤原家の三兄弟が魅力的だった」と話している。
道隆様の美しさがいい。道兼様も思いの外いい。三郎君の道長様はずっと居眠りしていたとはしゃいで語っているのです。
まひろはようやく、あの三兄弟とは右大臣家の、道隆・道兼・道長だと知りました。
気が遠くなり、思わず倒れてしまうまひろです。
MVP:花山天皇
今回は社会のルールからはみ出す者たちが目立ちました。
散楽は義賊を気取っているけれども、こうも硬直した社会ならそうするしかないのかとも思える。
まひろはなかなか過激で、身分なんかなくていいと言い出す。
花山天皇も、君主自ら質素な生活をして規範を示すと言い出す。
どれもこれも、身分秩序をぶち壊し、自ら動いて社会を良くしたいと願う、墨子のような思想があると思えます。
散楽集団が墨子を学んでいるとはあまり思えませんが……彼らなりの実感であり、墨子はそんな実感を思想に反映させたのでしょう。
放埒なようで、芯のある人物である花山天皇。
はみ出したものだけが持ち得る輝きが、あのいたずらっ子のような瞳に宿っています。
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五節の舞姫はありなのか?
五節の舞姫の場面は美しく、番宣でも使われていた自信ある映像です。
しかし、そのせいでツッコミも入りました。貧しい家出身の紫式部が選ばれることはありえない、と。
衣装にともかく金がかかることが悩みの種です。
源雅信は資産があるだけに、その心配はしていません。
しかし、懐に余裕がないのに選ばれると、蓄財機会のある受領に無心して仕立てるようなこともあったとか。
それを身代わりということで、衣装予算の問題はクリアしています。
なぜ身代わりにするのか?
花山天皇から倫子を逃すためならば、設定としてありではないでしょうか。
このドラマは、かなりギリギリの設定を攻めてきて、それがよい。
舞姫に目をつける花山天皇と、それに恐れ慄く設定も説得力は感じられます。
そうそう、東洋の国家だって当然のことながら、過度な好色は軽蔑されます。
『青天を衝け』の際、渋沢栄一後妻である兼子に由来する、こんなことが語られていてうんざりしました。
「あの人も『論語』とは上手いものを見つけなさったよ。あれが『聖書』だったら、てんで守れっこないものね」
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「儒教に性的規範はない」
他国由来の思想に、なんて迷惑なイメージを植え付けるのか。そんなことはありえません。
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確かに天皇は皇子を残すことが責務であり、多くの妻を持ちます。
そうは言っても、ルール違反をすれば嫌われるでしょうよ。
確かに日本史には、何かの折、目の前に好みの女がいると、手をつける恐怖の権力者は実在しました。
『青天を衝け』に出てきた徳川斉昭です。
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梅見の席で好みの女中がいると即座に手を出し、手出しされた女にとっては名誉だろうとうそぶいておりました。
あのドラマよりも、ドラマ10『大奥』の徳川斉昭の方が史実に近いので、適宜みなさまご修正ください。
ドラマではカットされておりますが、原作では言うことを聞かない阿部正弘を手込めにしてやると脅しております。
そのせいて斉昭は嫌われ、彼の周囲に迷惑をかけております。
人の性は悪なり
人の性は悪なり。其の善なるは偽なり。
人間の本質は悪だ。善であるとすれば、偽なのだ。『荀子』
前回は孟子の性善説でした。
今回は漢籍引用はないものの、まひろの挙げたものから荀子を選びました。
これをそのまま「人間なんてみんな悪なんだ!」と読むと、そんなこと言わんでもいいと思ってしまうかもしれません。
何かあれば人を殺傷して奪い取る、そういう世紀末世界になると言いたいわけでもありません。
人間は何かあると堕落してしまうから、ルールで縛ることも大切だと考えるべきですね。
空気を読めないまひろも、だんだんと大人になりつつあります。人間の本質はゆらぐものだと学んでいく。倫子と接することで、空気を読むことも理解してゆく。
その結果、鮮烈な個性は失われてしまうかもしれないけれど、本質は残ってゆく。そんな描き方かもしれません。
断っておきますが、まひろは決して現代人思想に被れたトンデモヒロインではありません。
『麒麟がくる』の駒についても、「現代の平和思想を語る女w」と嘲る意見をよく見かけましたが、彼女たちは中国思想由来の意見を述べております。
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『麒麟がくる』以来、私はひとつの仮説をたて、証明するデータを自分なりに集めてきました。結論は出つつあります。
その仮説とは、日本史愛好者でも、漢籍読解や東洋思想知識が減衰傾向にあるのではないか?ということ。
実は、明治以来指摘されてきたことで、いまさらではあります。
そこが弱いから「麒麟」の理解が不十分で曲解意見が出てきたのではないかと考えています。
『麒麟がくる』ではなく、『光る君へ』で、この仮説は決着がついてきたと思います。
たとえば『孟子』を「漢詩」とする感想が出てきたりしますが、これを例えるなら、
「『源氏物語』という俳句を読みました」
という類のものとなります。
もしもアメリカのドラマでそんな風に語られていたら、「気持ちはわかるが、そうじゃないんだ」となりませんか? そう言う類のミスなのです。
漢詩はあくまで「漢詩」であり、『孟子』は思想を説く「四書」に分類されます。
些細なことではあるのですが、重要なことでしょう。
このドラマに関する各メディアの記事で、紫式部が世界的に唯一突出した女性文人という趣旨の記述を時折見かけます。
これについては、むしろ本人が以下のように嫌がりそうです。
「やめてください、優れた女性文人は私の前にだっています。本朝もおりますし、何より唐。卓文君、班昭、蔡琰、謝道韞、魚玄機、薛濤……漢籍を読めば出てくるでしょう。なんで知らないんですか?」
ことさら紫式部を「日本スゴイ!」とか、「アジアでスゴイのは日本だけ!」といった言説に結びつけるのは、彼女が望むことでもないでしょう。
キャッチーだからって大仰なコピーを使うことは非常に危うい。
そして次の仮説です。
ネットニュース等のドラマ評価は、視聴者の理解度によるのではないか?
この仮説は、プロットのわかりやすさはドラマを左右するものであり、当然のことと思われるでしょう。
しかし、題材の知名度や認知度に左右されるとすればどうか。
『ちむどんどん』という朝ドラがありました。
このドラマは「医食同源」が根底にあり、琉球の伝統食文化や、沖縄ならではの事情がプロットに盛り込まれていた。
それが理解できなかったのでしょう、琉球差別としか言いようのないアンチコメントが多く見られたものです。
しかも、それを集めてニュースにすることでPVを稼ぐメディアもあり、ドラマの感想で琉球差別の助長をするなんて何たることか、と頭を抱えたくなりました。
人の性は悪なり――このことはネットが可視化している側面もあります。
PVを稼ぎ、バズるためなら悪口やデマ、差別でも語るようになるのかもしれない。
自戒もこめて、それよりも大事なことはある、ルールは守ろうと思う次第です。
◆ 仁藤氏巡る記事、22万円賠償命令 デイリースポーツ社に(→link)
現実社会の病理や問題まで考えさせる思想。
そしてそれを含むドラマって、やはり秀逸ですね。
『光る君へ』にはそんな力があります。
💟 『光る君へ』総合ガイド|紫式部の生涯・宮中・平安文化を網羅
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【参考】
光る君へ/公式サイト





















