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【『光る君へ』感想あらすじレビュー第12回「思いの果て」】
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MVP:惟規とさわ
家で待っている二人がどれだけ温かいことか。
さわは、父・為時の愛情が引き合わせた存在でもあります。
為時がなつめを放置したら。願いを聞いてやらなかったら。このかわいらしい女性は、まひろと出会うことはありませんでした。
為時とまひろの仲はギクシャクしていました。
それが不思議なことに、妾(しょう)のなつめによって、愛が増幅され広がってゆく現象が起きています。
惟規はさわの家に婿入りすることもあり得るかもしれませんよね。
当人たちは反発しても、その子の世代となるとよい関係が生まれる――これは道長と道綱にも見てとれます。
二人の母は、それぞれ妾と嫡妻としてライバルにあったけど、子同士は仲が良い。
そういうプラスの関係の中で、マイナスの関係も見えてきているところが面白い。
今週、存在感を見せた倫子と明子です。
二人とも道長の妻となるのに、厳然たる差がついてしまい、それが互いの子にも響いてきます。
このドラマは尺をたっぷり使って、当時の制度や結婚観を描いてきます。
そうした理解し難いところを丁寧に描きつつ、普遍的な感情で引き寄せる。
『源氏物語』にある魅力を再解釈して届けてくれるところが、とても素晴らしいと思います。
シスターフッドを描く意義
ゲンダイさんがこのドラマに対してチクリと嫌味を書いています。
◆NHK大河ドラマ「光る君へ」で“貴族女子会”シーンがやたら多い今どきの事情(→link)
この記事は平安時代の曖昧な先入観で書かれています。
姫君の遊ぶゲームは囲碁や貝合わせではなく「偏つぎ」でした。
ただし、この記事にある通り『50:50THE Equality Project』に NHKが参加していることは確かです。
これも別に女に下駄を履かせようというものでもなく、歴史学の観点から見ても重要です。
女性が歴史に参加しなかったわけではなく、後世のバイアスによって活躍が「無かったこと」にされてこなかったか?
これが今注目されているジェンダー史です。
日本のこの時代に、なぜ女性が長編物語を記したのか?
このテーマはとても興味深いものなので、むしろどうして今まで取り上げてこなかったのかと言われてもおかしくないほど重要なのです。
平安時代は女性の発言権もあります。
歴史的な意義も踏まえてのことなのに、バイアスがかかっているとおかしな見方をしてしまうのでしょう。
ゲンダイさんは打毱も、お色気サービスとして見なしていました。
そんな歴史学としての意味だけでなく、今回はシスターフッドの尊さも極まっておりました。
「妾(しょう)でもいい」と思いながら駆けて行ったまひろなのに、相手が倫子ならば引いてしまう。そこには友情を感じます。さわとのやりとりもまぶしい。
女性が愛情よりも友情を選ぶことは十分成立する――そんなことは当たり前でしょう!
そう力強く突きつけてきたように思えます。
とはいえ、それこそゲンダイさんの目線ならば「女同士はドロドロしているもの」と言いたくなることでしょう。あるいは女の友情は薄っぺらいとか。
それに迎合した大河ドラマはあります。
『西郷どん』では篤姫と本寿院の対立という、心の底からどうでもいい要素で盛り上げようとしていました。
◆泉ピン子32年ぶり大河 「西郷どん」で“江戸城のドン”に(→link)
こういうのって、要するに男性目線のファンタジーです。
女同士が連帯して刃向かってきたら厄介だ。女同士の方が仲が良いのもつまらない。どうせ女なんて薄っぺらいんだから、男の愛を競ってドロドロしていた方がいいんだよ!
そんな気持ちがどうしても心の奥底にあるから、足を引っ張りあって欲しいのでしょう。
さらに大奥のような構造だと、どうしても権力は男性側が主導で持ちます。それをめぐれば争いになります。
といっても幕閣の男性同士だって十分ドロドロしておりました。
呪詛の話をしよう
最近見かけない安倍晴明。
兼家が死にそうになったら、あるいは源明子の呪詛が発動してきたら、再登場するのでしょうか。
私は陰陽道の知識はありません。しかし、呪詛はできるような気がしてきます。
結局のところ、人間の心理により形成される。穢れがあると大勢が認識すれば、結果はあとでついてくるとみた。
というわけで、穢れを探ってみたところ、こんな記事が。
◆「光る君へ」業界のプロから「ながら視聴に向いている」と言われるワケ(→link)
昨年は、大河記事への信憑性が落ちたターニングポイントだと思っております。
こちらの記事の何が問題か?箇条書きにしますと……。
・「業界のプロ」はおそらく存在しない
・「業界のプロ」が実在したとしても、昨年の大河も、今年の大河も見ていない
この時点でまずおかしい。
去年を見ていないとわかる箇所はどこか。
昨年の大河『どうする家康』の北川景子や有村架純ではこうはいきません。松嶋菜々子まで絡んできて、視聴者は正座してテレビ画面と対峙する覚悟が必要でした。男性のキャストも、岡田准一が演じる狂気の信長はじめ、阿部寛、松山ケンイチ、大森南朋、ムロツヨシと主役級が並び、豪華すぎて気を抜くことができませんでした。おまけにCGで馬が駆け回り、派手な戦闘シーンは見ていて疲れました。
役者が豪華でも、それを台無しにしたのが昨年でしょう。豪華な食材をミキサーにかけてぐちゃぐちゃにしたものを皿に盛り付けていたような無神経さです。
信長の狂気って何なのか? 耳かじりBLでしょうか?
CGで馬が駆け回ったことは確かです。しかし評判は非常に悪かった。
派手な戦闘シーンとやらも、火縄銃を連射したり、レーザー砲じみたSF砲撃が大坂城を吹き飛ばしていたことなんですかね。そういう雑なプレステ3程度のVFXは失笑されておりました。
真田信繁が徒歩で家康の陣に向かう間抜けな戦闘シーンは、確かに見ていて疲れましたが、それは呆れたからです。
この手の「昨年大河はすごかった!」と言い張る層に、私なりにまとめた「すごいリスト」を作りました。
・子役なしで人形遊びをする家康
・今川義元の兜首を投擲する信長
・CG馬でメリーゴーランド
・えびすくい♪
・於大「がおー」
・連射できる火縄銃
・紫禁城もどきの清洲城、本證寺はRPGの砦
・家康「王道だ覇王だー」
・本田忠真「酔いどれ侍」
・家康が三方原で死んだ死んだ詐欺
・信長による幼児家康虐待相撲
・今川氏真と家康がタイマン勝負で決着だ!
・片手で茶碗を持ちズべべべと汚らしく茶を飲む信玄
・サンタクロースみたいな衣装の信玄
・信玄、山中死
・グラドルも来る! 側室オーディション
・蒸し風呂でムフフ
・慈愛の国構想
・瀬名が自害する前でバチャバチャする家康
・消えた伊賀者五百人
・ニコライ・バーグマンの花
・お市「私が総大将です」
・茶々「バーン」
・消えた干し柿
・太閤、くたばる
・レーシックお愛
・耳かじりBL
・本能寺で「のぶながぁー」「いえやすぅー」
・明智光秀「くそたわけがー」
・石川数正は食レポしていればええのに
・城に垂れ下がる謎の真田布
・千代は一体何歳なんだ?
・関ヶ原ランウェイ
・オイラは井伊直政、ダリ髭が特徴だ!
・兜に映り込む照明
・自称男勝りの阿茶
・崩字でなくはっきりと「お千」と書く
・伊達政宗出る出る詐欺
・黒田官兵衛出る出る詐欺
・『鎌倉殿の13人』キャストの無駄遣い
・九度山で全力軍事訓練する真田信繁
・文春砲
・最終回翌日に発表される有村架純さんの交際報道
・年を超えても報道される文春砲「阿茶は井上真央さんで」
思い出したくない――そんな感想をお持ちの読者の皆様、申し訳ありません。
とりあえず「消えた伊賀者五百人」「ニコライ・バーグマン」「消えた干し柿」だけでも相当な穢れですかね。
『どうする家康』感想レビュー総論・前編1~25話 悪夢の一年間を総括
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『どうする家康』感想レビュー総論・後編26~48話 悪夢の一年間を総括
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そして先の記事が、今年の大河も見ていないことは、以下の記述からわかります。
対して、『光る君へ』は歌に蹴鞠と平和な画面が続きます。シチュエーションもコロコロ変わらないので夕食を食べながらでも、食事後なら明日の支度をしたり雑誌や新聞に目を通したりしても、ストーリーについて行けるのです
実資顔で「ふざけるな!」と言いたくなるこの部分。
歌と蹴鞠と言いますけど、そもそも蹴鞠はほとんど出てきていませんよね。
鳥辺野や、高御座の生首など、刺激が強い場面も多く、どこが平和なのか。
そして和歌にせよ、漢詩文にせよ、かなり大変ですよ。まひろの『帰去来辞』解釈なんて本当に大変でした。
この記事の問題点は、穢れである昨年を持ち上げようとした結果、祟りに当たった。そうオカルトとして片付けても良いのですが、奥底にある心理を探ると、ある結論に達します。
ゲンダイさんと同じく、読者のおじさんのミソジニーに迎合したいのですね。
ドラマの内容について見ていないとわかる出鱈目が並んでいても、大河ドラマをダシにして女を叩いてスッキリする。
女が好きそうなドラマは難易度も低くてくだらないから、本を読みながらでも鑑賞できると見下したい。
実際は、漢籍引用がちんぷんかんぷんだっただけでは? 藤原だらけといういつもの遁辞を使いたいだけかもしれないけれども、ともかく女脚本家、女主演だから貶したいという欲求が先に出ているのでしょう。
こうしたメディアはやたらと『光る君へ』にエロ描写を期待します。
それはただのスケベ心だけでもなく、女の価値は性にしかないという深層心理の発露でしょう。
女の考えること。女の歴史。女の作った物語。女が喜ぶもの。そんなものには何の価値もないと小馬鹿にしたい。タピオカをやたらと叩くおじさんと同じ心理ですね。
それにしても、長年、大河ドラマを視聴し、「歴史」を学んだ結果が、こうした偏見だとすればどうしたものでしょうか。
男は『源氏物語』に興味なんかないと言いたいようですが、戦国武将も和を学ぶ教養として愛読していました。
和がダメならば、漢はどうか? というと、言及なし。
書はどうか? というと、藤原行成の再現に挑むことへの言及なし。
果たして日本の歴史とは何なのか?
斬り合って殺し合うことだけが歴史でしょうか?
江戸時代まで、日本の教養ある文人は、歴史とは『史記』や『春秋左氏伝』といった漢籍の史書を読んでいました。
ここであげられているような源平合戦にせよ、戦国合戦にせよ、キャラクターカードを集めてどれが強いかはしゃいでいるようなものは、大衆向けエンタメで正式な「歴史」の学問とはちょっと違うとみなされたのです。
そういう日本の伝統を踏まえれば、大河といえば戦国幕末と壮年男性が文句をつけているという状況は、末期的に見える。本朝から教養は消えたと嘆くことでしょう。
果たしてそれでよいのか、大いに疑問です。
それでも女叩きができるならば、大手メディアでも、平気でコタツ記事を載せてしまう。
もっと危機感を抱くべきではないでしょうか。
昨年の穢れに触れて、大河記事の信憑性は落ちるばかりだと感じます。
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