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『光る君へ』感想あらすじレビュー第23回「雪の舞うころ」

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意外性のある女、まひろに会いたかった宣孝

「越前はどうか?」

藤原宣孝がまひろに尋ねると、楽かと思えばとんだ見込み違いで、必死で父を助けている!と答えるまひろ。

それで宋語を学んでいるのかと一安心の宣孝です。

やはり周明との仲が気になっているようですが、まひろは気付いてないようで、羊も食べたけど美味しくなかったと無邪気に話しています。

「まひろは何を考えているのかわからない」と、宣孝は嬉しそうです。

不在の藤原為時に代わるようにして、事前に文が送られてきたら……とまひろが話しますが、「送った」と宣孝。

父も私も来ないと思っていたと、まひろは素直に打ち明けます。ただし「いい加減な性格だから」と理由までは言わず、「都での役目があるから」と言い方を変えてはいました。

しかし聞けば宣孝は「物詣」と偽り、越前までやってきたとか。

なんでも越前のことは内裏でも取り沙汰されているとかで、まひろはそう聞かされると、内裏での父の評判を気にしています。

宣孝は長居はしないと言い、そのツンとした顔が見たかったと言います。

土産も持参してきて抜け目のない宣孝は、都で流行っているという肌油をまひろに渡してきます。ツンとした顔がいきるとのことで。

さらに都で流行している怪奇小説『玄怪録』も渡しました。すかさず鼻を当て「都の香りがする」とはしゃいでいるまひろ。

ここが運命の分かれ道かもしれません。

周明は、客館にある書物はわからないと返した。宣孝はまひろが好きそうな書物を渡せるのです。

ちなみに中国の小説を取り入れてさらに高みをめざす技法は、日本文人の定番です。来年の大河では曲亭馬琴ら江戸後期文人がそうする様子が見られるのかもしれません。

まひろは宣孝に越前ウニを振る舞っています。

都の塩ウニとは違うと満足げな宣孝。慣れた手つきでウニを割るまひろにも嬉しそうです。

磯の香りがする、帝もご存じない味だとほめ、さらにはまひろも褒め出す宣孝。

宣孝には三人の妻に四人の子がいる。

もう落ち着いたと思っていたのに、まひろと会うと違う世界が垣間見える、新たな望みが見える、未来が見える、まだまだ生きていたいと思ってしまう。

そう口説き始めました。

まひろは笑いつつ、父とて国司を力の限り務めているのに、宣孝様の人生が落ち着くなどあり得ないと答えます。

このあとまひろは琵琶を奏で、それを聞く宣孝。

この二人の結婚は歳の差もあり、未婚の彼女を見かねた宣孝が拾ったような解釈もされます。

そうではなく、恋をして、口説いたと描く本作。しかも美貌ではなく、変わっていて突拍子もない性格に惹かれたとしています。

大石静さんの本領発揮でしょう。

 

朱仁聡と周明のたくらみ、宣孝の求婚

そのころ周明は“国司の娘”について朱仁聡に報告していました。

左大臣と知り合いである。彼女を取り込んで左大臣に文を書かせ、朱様の力になれるようにする、と。

しかし朱仁聡の側近は、日本人であることを隠していた周明に不信感があるようです。

ルーツ云々よりも、日本語をわからぬふりをしていたところが怪しいと感じるのでしょう。無理もないところです。

しかし朱仁聡は、周明を信じるという。やってみて、皆の信用を勝ち取れと命じます。

ことが成就したならば、宰相殿の侍医になりたいと周明が言い、周明の働きでそうなるならば望みを叶えると答える朱仁聡。

このやりとりで、朱仁聡は嘘をついているのでは?と思えました。

国と国の話ならば、国書くらい持参していてもおかしくない。

あまりにも皇帝の意思を軽んじています。

当時、即位して間もない第3代皇帝の真宗(しんそう)は多忙で、こんな日本との交易など後回しのはず。

宰相の名前が出てきましたので、宰相当人か、その周辺が勝手に言い出したか、それともはなから朱仁聡の出まかせか、とにかく誰かが嘘をついていると思えます。

朱仁聡が何らかの問題を起こしたことはあったようなので、そのあたりを拡大解釈しているのでしょう。歴史劇ではよくある手法といえます。

宣孝は、あっという間の二日間であったと振り返ります。

父がいたら喜んだだろうと言いながら、まひろは道中の糧としてウニを渡します。

もっと食べたいと宣孝が言うと「過ぎたるは猶及ばざるが如し」と『論語』を引用しつつまひろは嗜めます。

「まひろ、あの宋人が好きなのか? あいつと宋の国へ行くなよ」

そう言われて驚くまひろ。

昔、宋の国に行きたいと言っていたと宣孝が付け加えます。そんなことを言ったと認めるまひろ。

さらに宣孝はこう言います。

「都に戻ってこい。わしの妻になれ」

ついに直接きました。

 

MVP:朱仁聡

国際的な詐欺をやらかし始めたように思える朱仁聡。

とはいえドラマでも描かれた通り、この時期の日本は法がゆるいため、甘い処置になるのだろうと思います。

もしも三国若麻呂事件に関わった源光雅らが死刑にでもなれば嫌な予感がしたものの、そこまで苛烈な処置にはならないでしょう。

なお、日本からも留学僧が宋にわたり、受け入れられています。

そういうゆるい民間交流で十分間に合っていたのがこの時代です。

朱仁聡の言うことは当時の宋を踏まえれば無理があります。

時代がくだり南宋になると、日本からの砂金の重要性はあがります。マルコ・ポーロが日本を「黄金の国」と記した元代も、砂金の魅力的な供給地であったことでしょう。

明代は銀が大量に採掘され、これまた魅力的です。

しかし今回のドラマではそうなる以前の話なので、日本貿易は宋の朝廷にとってそこまで重要でもない。

時代を先取りしているか、あるいは嘘をついているか。どちらかでしょう。

それでも周明が騙されてしまうのは、為時が語るように、朱仁聡には風格があるからなのか、はたまた周明が信じきっているからなのか。

このなかなか強引なプロットに説得力を与える、「大人」(たいじん)の風格がある、そんな浩歌さんがお見事です。

「矢野浩二(中国ではまだ旧芸名が有名)の中国語は文句のつけようがないな」

現地からもそう信頼をされている、彼だからこそできる風格があります。

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演じる側だけではなく、支えるスタッフの皆さんも頑張っています。

今年の衣装は『清明上河図』を参照しているそうです。

去年は横光三国志を参照したような衣装でしたから、その進歩は素晴らしいものがあります。

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中国時代劇とも比較しました。

中国時代劇で宋代の見習い医者といえば、『白蛇伝』の許宣が有名です。

しかしこの許宣はラブストーリーの主役であるせいか、考証よりもビジュアル重視にされがちです。

むしろ周明の方が真面目な造形に思えました。

中国時代劇でも「ラブ史劇」というよくわからないフレーズがつき、やたらとピンクが強い宣伝材料のものは、考証がゆるいことは往々にしてあります。

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泣いて馬謖を斬るーー目的が大事

まひろも大好きな故事成語には、酷い行為でも称揚するものもあります。

その一つが「泣いて馬謖を斬る」です。

諸葛亮は馬謖に目をかけ、とても可愛がっていた。それなのに過ちを犯し敵に大敗し、作戦を頓挫させてしまいます。諸葛亮は軍律を守るために殺しました。それが由来とされます。

なんて素晴らしいのでしょう。感動的だ。そういう意味で使っています。

これがもし、諸葛亮がむしゃくしゃして馬謖を斬ったのであれば、全く褒められません。

曹操は時折そういうことをやらかすから、最低の人間性だと罵倒されていますね。孫権も酔いに任せて部下を殺そうとして止められております。

あくまで規律を守るための処断だからこそ、美談とされるのです。

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また長々と『三国志』の話をして……と思われるかもしれませんが、もちろん理由があります。

大河ドラマはじめエンタメでも、考証の範囲から逸脱をすることはあります。

それも動機次第で判断すべきではないか?と言いたいのです。

中国の大河ファンの感想に「周明が浜辺を歩くシーンで涙が出てきた」とありました。

どうしてそうなるのか?

周明は今まで消えてしまった、見えてこなかった人の姿を可視化したといえます。

四方を海で囲まれた日本には、どの時代にも遠い場所からやって来た人がいました。

彼らはドラマの中で描かれてきたか? というと、消されてきたと思えます。

戦国時代を扱うドラマでも倭寇はまず出てこない。大河ではなく朝ドラでも、いたはずの海外から来た人がいません。

朝ドラでも『まんぷく』では、ヒロインの夫が台湾出身華僑であるルーツを改変し、日本人という設定にしました。

台湾由来の食品であるチキンラーメンを日本人夫妻が開発したものと歴史修正までして、ひどいものでした。

ああすることで今、日本にいる華僑の方がどれだけ傷つくか、作る側は想定できなかったのか。そう呆れ果てたものです。

それが今年の朝ドラ『虎に翼』では、朝鮮出身の留学生である崔香淑を出してきました。

画期的です。朱仁聡や周明は、この大河版だと思えます。

周明が浜辺を歩くことで、消えてしまった人々の姿を見る側が思い出し、感動するのだとすれば、目的として実に素晴らしいではないですか。

大石静さんは「貴族の話だけではバランスが悪い、庶民の視点も出さなければと思っている」と語っています。

直秀に続くその枠が周明ですね。

疫病で亡くなった少女・たねもこの枠に入るのでしょう。

大河ドラマにはこうした庶民の登場人物は定番の存在です。

『麒麟がくる』のしつこい駒叩きに、私は辟易としていました。

歴史を語る上で政治史偏重、庶民軽視をするのはあまりに時代錯誤で、これからのグローバル・ヒストリー時代にこれはあまりにおかしい。

大河ファンを自認する歴史好きが、「駒は実在しない(=史書に記述がない)からファンタジーだ!」と盛り上がる様は、根本的に感覚がどこかの時点で止まっていると思えました。

民衆史について語る相手に「豚に歴史はありますか?」と畳み掛けたある有名学者がいました。そんな大昔のままではないですか。

大河ファンがそうだと、一般向けメディアも便乗してそういうアンチ記事を出します。その象徴的な動きが駒叩きであり、あの過熱ぶりの異常性はどうしたものかと危惧していました。

こういうことを指摘すると「ポリコレガー」だのなんだの言われるでしょうが、一方で国際問題に発展しかねません。

佐渡金山の世界遺産登録がもめている背景にも、さまざまな背景を持つ鉱山労働者の背景を軽んじているのではないかという懸念があるともされます。

政治史に名を刻む人のことだけを考えることは、今はもうリスクとなりました。

民衆の労働なり、ケアワーカーとしての女性なり、そういう人々があったからこそ歴史は紡がれてゆきます。

そんな歴史観をアップデートさせる役割を担うために、敢えて人物を出してくる。

そういう目的ならばよいでしょう。

では「どういう目的ならまずいのか」と最後に指摘しておきますと。

私は再三『いだてん』を批判してきました。

あれは目的が駄目だから、細部がよかろうと肯定できないギルティプレジャー枠といえます。

まーちゃんがキュウリを持ってプールサイドでかじる場面がどれだけ愉快であろうが、あれだけ疑惑の詰まった東京オリンピック礼賛目的ならば、作品として論外です。

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『青天を衝け』は、紙幣の顔にするにはあまりにも問題が多い渋沢栄一を、ロンダリングしたかったように見えます。

脚本家が同じ『あさが来た』の時点で歴史修正が目立ったNHK。

2010年代半ば以降のNHKドラマはどうにもおかしなことが多々ありました。

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瀬名の悪女説は江戸時代以降の創作だのなんだの、プロデューサーも脚本家も、口裏を合わせたように同じ動機を語っていてむしろ不信感が募りました。

何を雄弁に語るかよりも、何を語っていないのか、そこを探ることが重要なときもあり、結局、文春砲がその真の目的を明かしていたのではないでしょうか。

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家康役が瀬名役と距離を縮めたかったのだ……と、もしもこんなことが罷り通っていたら恐るべきことです。

昨年の大河については、いまだに大河主演をキャリアアップに使ったという趣旨の記事が出てきます。

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公私混同に慣れきっていると、感覚が麻痺するのでしょうか。

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文:武者震之助note

【参考】
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